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知らない街の歩きかた

実は12月、1月と、続けて広島へ行ってきました。
個人的に今いちばん注目している都市と言っても過言ではなく、展示の情報などを定期的にチェックしています。
12月と1月もあれこれ見て回ったので、今後も頻繁に広島の話題が出てくると思います。

さて。
広島は扇状地の上に形成された都市で、街なかには何本も川が流れています。
現在閉館中の広島市現代美術館のある比治山のふもとから街なかの方へ京橋川を渡ります。

川を渡った対岸に目的地はありました。
一見何の変哲もない古びたアパートといった感じの建物。

ですが、アーティストがアトリエを構えたり、休館中の現代美術館が分室を作ったりと、現代美術と関わりの深いスポットとなっています。

階段を上って4階へ。

到着!
突き当たりが目的の場所です。

こちらがタメンタイギャラリーの鶴見町ラボです。
ギャラリー内は撮影NGではないものの個人情報を扱う関係で配慮が必要ということで、私は撮影しなかったため、広島在住の作家・祐源紘史さんのツイート&画像を引用させていただきます。

富谷さんにとって広島はこれまで縁のなかった場所。今回展示のオファーがあってはじめて広島に来たのだそう。
まずは広島へ向かうまでの道のりがギャラリーの壁(と奥のガラス戸)に3面に渡って並べられています。自宅のある東京から横須賀へ向かい、フェリーに乗って門司、電車に乗って広島に到着するまで、車窓の風景だったり自分の行動だったりが書き込まれています。
そして広島の街なかを歩いて作られた何枚かの地図。なかには「同じ場所で二度つまずいた」という書き込みがあったりして、自分の身体感覚を尺度として作られた唯一無二の地図で、ガイドブック的なものとは対極に位置するものとなっています。

知らない街を歩くとき、どんなお店があってどう動けば無駄なく回れるか、事前に情報を調べておくという人も多いと思います。私も完全にそうしたタイプの人間で「迷う」ということを恐れているんですね。さっきの富谷さんの言葉を借りれば、つまずくことがないように周到に準備をしているのかもしれません。
だから富谷さんのように、予備知識を持たずに飛び込んで、ゼロから自分の手で地図を作るというのは、贅沢な時間の使い方だと思うし正直羨ましいです。

ここからはちょっと余談です。
オープンの日にはRCCのラジオカーがギャラリーから中継でレポートしたそうです。「ごぜん様さま」ではなく「おひるーな」内での放送だったのですが、ラジオカー中継はよく聞いているのでビックリしました。

裏側をお聞きしたら、地図に書き込まれた言葉が大雨を連想させたり、「ピカピカ」という言葉さえ原爆を想起させるからと、事前に注意が入っていたとのこと。
普段はただ楽しく聞いているだけですが、実際にはかなり細かく神経を払いながら放送されているのだということが知れました。

富谷さんと話していて驚いたのが「神田山荘」という温泉施設のこと。RCCラジオのCMでしか知らなかったので「広島の街が見える温泉」ぐらいの認識しかなかったのですが、元々は「被爆者の方が原爆で受けた障害に温泉療法が効果的だと考えられたことから作られた被爆者保養施設」なのだそう。それは料金設定に今でも反映されていて、その辺りのことを私は全然知らなかったので驚きました。
広島の日赤病院も正確には「日本赤十字・原爆病院」という名前で、広島で暮らす人にしてみれば当たり前で慣れているかもしれませんが、県外の人間からするとふとした拍子に「原爆」の文字が目に飛び込んでくるとついビックリしてしまいます。

この展示は広島に長く住んでいる人のほうが、新しい街への視点を得られて、楽しめるんじゃないかと思いました。
そして自分ももっと自分の足を使って広島の街を知っていきたいと、そんな思いが生まれました。次回はぜひ実践してみてどんな街の姿が見えてくるか、試してみたいです。

☆  ☆  ☆

【今回の展示】
富谷真美「広島遠いなあ、鶴見町どこ」
2021年12月14日〜21日
タメンタイギャラリー 鶴見町ラボ(広島市中区)





【今回の展示】

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