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前十字靭帯損傷〜受傷機転について②〜

前十字靭帯損傷の受傷機転についての記事 第2弾です.

以下の写真は,前十字靱帯損傷の瞬間を捉えたカメラの写真です.
(model-based image-matchingという機械を使用)

Hideyuki Koga et al:Mechanism for Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injuries:2010;The American Journal of Sports Medicine,Vol.38,No.11より引用

前回の記事では,56%の症例においてcontact損傷が多いと記載しました.
他の論文では,非接触型損傷が70%を占めるとされています.
(Hideyuki Koga et al:Mechanism for Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injuries:2010;The American Journal of  Sports Medicine.Vol.38,No.11)

上記の論文によると,
ハンドボールにおけるnoncontact損傷では,Cutting動作での受傷が多いと報告されています.
また,受傷時の関節肢位は,
膝関節屈曲角度が初期接地時に約23°,その後40ミリセカンド以内に24°角度が増加した.前額面上では,初期接地時に約5°外旋,その後40ミリセカンド以内に8°内旋,その後17°外旋が生じたと報告されています.

我が国においては,いわゆる”Knee-in Toe out”の肢位がビデオ解析の結果からACL損傷のメカニズムと考えられていました.
(古賀 英之 ほか:膝前十字靭帯損傷の受傷メカニズム.関節外科:2015. Vol34 No.3)
その一方で,純粋な膝関節の外反のみでは内側側副靱帯を損傷しない限りACL損傷は生じないとも報告されています.
(Shin CS et al:The effect of isolated valgus moments on ACL strain during single-leg landing:a simulation study.J Biotech 2009;42:280-5)

主な受傷機転
膝関節外反により,MCLの緊張と外側コンパートメントに圧迫力が加わる.
②この圧迫力により,大腿骨外顆が後方に偏位,脛骨前方移動と内旋が生じ,ACLが損傷する.
ACLが断裂することにより,脛骨前方引き出し力に対するstabilizerが失われ,大腿骨内顆も後方偏位し,ACL断裂後に脛骨外旋が生じる.
(古賀 英之 ほか:膝前十字靭帯損傷の受傷メカニズム.関節外科:2015. Vol34 No.3)

以上がACL損傷のメカニズムになります.膝関節に外反のみならず,回旋のストレスが加わって初めて損傷が生じることが示唆されます.
膝関節は本来蝶番関節であり,屈曲・伸展の1軸性の運動が可能になります.
すなわち,回旋の可動域は有さないので,回旋強制が一定以上の外力で加わることで靱帯損傷のRisk factorになると示唆されます,

以上になります.最後までご覧いただきありがとうございました.
※論文を読んだ上での個人的な見解が多分に含まれています.ご興味のある方は
是非論文をお読みになっていただき,理解を深めて頂ければと思います.

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