見出し画像

第11話 眠れない夜は君と夢に落ちる


新宿の1件からずっと眠れない日々が続く。
あの日からずっとAさんのことを考えてしまう。数ヶ月考えないようにしてたことも全部忘れて一分一秒が長く感じるぐらいまでにAさんを考える。
昼間の授業は先生の声が右から左へ流れていった。
お弁当の時間はぼーっとしながら口に食べ物を運ぶ。
放課後になり部活をして疲れきった体で家へ向かう。そのまま少しの癒しが欲しくてベランダに出た。あたりはもう真っ暗になっていた。
夜の静かな時間になるとより考えてしまう。
(あーあ、Aさんのことが好きなんだろうな…)
推しとファンの恋。絶対に叶うはずのない恋。
そして恋してはいけない相手。
そんな言葉がずっと頭をよぎる。
けれどそれと同時にあのイタズラな笑みまでも頭をよぎる。
私の思いはAさんに届いているのだろうか。
夜の静かな星空をベランダから眺めながらそう考える。

冷たい空気が頬を冷やす。
Aさんのことを考えて火照った頬を冷やす優しい風。私は考えるのをやめようとしてベットにダイブする。
「はぁ〜…」
枕に顔を埋めていたら段々と睡魔がやってくる。
そのまま睡魔に負けて夢の中の世界へ入っていった。


その夢の中の世界ではAさんが待っていた。
場所はいつものレッスンの場所。いつもと変わらない話をしていた。ひとつ変わっていることは

Aさんの影と私の影が重なっていること。
Aさんの温もりを感じていること。

私はそこまで来てやっとハグしていることに気がついた。身長が私より20cmぐらい高いAさんの腕の中は上から包まれる感じで居心地が良かった。私はそのまましばらくAさんの中にいた。

ずっとこのままの時間が続けばいいのに。
夢の中の私もそう思っていたんだろうな。


けれどそんな願いは叶わず、Aさんは私から離れ、最後はやっぱり頭を撫でてから部屋を出ていった。まるでこの間の新宿みたい。
Aさんが部屋から出ていく姿を見て夢から覚めた。
その時の私は

泣いていた。

そして心の中で決心する。
(Aさんに早く会いに行かなくちゃ)と感じたのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?