突然の来訪者
さて、先日の壮絶なる戦いの話をしよう。
その日、私は普段よりも二割り増しの睡眠を堪能していた。かの、のび太くんも遺している名言の通りである。「あたたかい布団でぐっすり寝る。こんな楽しいことがあるか!」…まさに、彼の遺す名言は真理である。万人の師たる孔子ですら、若干十歳で、この真理に辿り着いていただろうか…。
さてさて、そんな至福の朝、陽の光を優雅に浴びながら、前日の晩にセットしておいた洗濯物を、華麗に取り込もうとした。
そう。女王との出会いは、まさに、その時である。
女王「Hello!」
ワイ「お。。。。おぅ。。。。。は。。。へぁ。。。ろウ⤴。。。」
私は静かに、そして可及的速やかに、網戸の端に手をやり、スライドさせた。
ワイ「ごごごごごごごご、ごわがっだぁぁぁぁ((((;゜Д゜)))))))ちょ、まぢ、全然意味わからんし((((;゜Д゜)))))))なんでこんなでっかいのんがウチのベランダにおんねん((((;゜Д゜)))))))ほんま、有り得へんやろう((((;゜Д゜)))))))はぁ、はぁ、はぁ…だがしかぁしっっっ(‾^‾) これで中には入れまい!どれ見たことか!さぁ、ここはチミの居場所ではない!さっさとここから立ち去るが良いわ(‾^‾)」
私は、網戸越しに洗濯物を揺らしてみながら、女王にストレスを与えることによって、速やかなお引っ越しを促した。
動かない女王。それもそのはず。私のインナーTシャツは、どれもユニクロで購入した通気性抜群の真っ黒なアレなのだ。そう。女王にとって特別な意味を持つ「黒色」の楽園であった。
私は、ここで焦っても意味がないと思い、しばし休息といくことにした。考えてみれば、まだ朝食も食べていない。私は、最近お気に入りのハチミツヨーグルトに舌鼓を打ち、最近日課になりつつある、モノ書きを始めた。
作業が一段落し、そう言えばと思い、窓越しに女王の様子を伺うことにした。
…いない。
ようやく去ったか。
私は、服の中に女王が潜んでいないかどうかを注意深く観察しながら、洗濯物を一つ一つ丁寧に取り込んだ。
ワイ「いやー、スズメバチなんぞ、生まれて初めてお目にかかったわい。いなくなると、もうちょっと会話を交わしておきたかったというものであるなあ。」
そんなことを考えながら、インナーの黒いTシャツに着替えようとしたまさにその時!!
ちくっ…
ワイ「え?」
女王「イテテテテ…」
三秒ほど、世界が凍りついた後、雄叫びを上げたのは私であった。否。雄叫びなんぞではない。単なる悲鳴である。
ワイ「ひぇぁごぎやぁぁぁぁぁぁ」
すぐさま私は、目の前にあったカバンで、女王を叩き潰した。緊急事態である。殺らねば殺られる。生命の危機…
女王をカバンの下敷きにした私は、ふと我に返った。何が「命を大事に」だ。殺るか殺られるかの一大事に、博愛も何もあったモンじゃない。これが大自然の掟。生き物の関係は、何も、喰う喰われるだけではないのだ。
しかしながら、五センチ近くもある大きな命、私は、丁重に、庭に埋めて弔おうと思い、女王の姿を見た。その時だった…
女王「Hello!!」
再びカバンが女王を覆うのに、寸分の暇もかからなかった。
ワイ「お、おっふ。。。これは、いよいよヤヴァい。。。弔うとか、そんな場合とちゃうし。。。殺らな殺られる。。。」
かの黒いヤツのために用意しておいた、まだ一度も火を噴いていない、殺虫剤的なアレを、私はおもむろに手に取り、カバンの僅かな隙間に向けて照射した!!
ワイ「はぁ、、、はぁ、、、はぁ、、、これで、どないだ。。。。」
恐る恐る、隙間から飛び出さないよう、注意深く中を覗く私。そこに、女王の勇姿はあった。
女王「は、は、はぁ、はぁ、ろう。。。」
まだ命は続いている。
もうこの手で握り潰すしかないと思った私は、福島で瓦礫を駆除した際に使った金属片を掴むための手袋を探すも、そんなに都合よく見つかるわけがない。
ここで私は覚悟を決める。
仮に二回刺されても、最悪救急車に運んでもらえばええ、と腹を括り、ティッシュペーパーを何重にも重ねた。そして、目にも留まらぬ早業で、地面に伏せたカバンを、一瞬…そう、ビッグバンから宇宙が誕生する刹那にも劣らぬくらいの限りなくゼロに近い時間…カバンを横に避け、女王の姿を拝んだ。
何重にも重ねられたティッシュペーパーは、目にも留まらぬ早業で、女王の姿を覆うことに成功したのである。そして、握り潰すのもアレだと思い、そのままビニール袋に放り込み、厳重に封をした。
女王との壮絶なる戦いにおけるこちらの損害は、出会い頭の一発という被害のみで、無事集結した。。。
十月、彼らは非常に活発だと言う。皆さんも、見かけたらお気をつけください。
※この後、物凄い勢いで病院に行きました。
(2016年10月30日 facebook投稿記事より)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?