【書評】多動力

下記の本の書評。

多動力
https://www.amazon.co.jp/dp/B072HVZ9RF

この本において、「多動力」とは「いくつもの異なることを同時にこなす力」であると定義されている。そして今後、多動力こそが最も必要な能力になる、ということが説明されている。

なぜか?

その理由は、以下のような主旨で説明されている。

かつては、特定の企業が垂直に業務を統合していた時代だった。そこに、テレビなどの家電も自動車も家など、あらゆるところにインターネットが入りこんだ結果、タテの壁が無くなり全てが同じレイヤーで競争をすることになった。
たとえば、古い時代の象徴であるテレビも、インターネットと繋がることで、スマフォアプリの1つとなり、電話やフェイスブックと同じレイヤーで勝負することになる。タテの壁がなくなる時代には、各業界を軽やかに超える越境者が求められる。
この越境者には、自分が好きなことをハシゴする多動力を持つことが求められる。

特に気になった箇所と感想

あなたが多動になるための最大のハードルは 「他人にどう見られるだろう?」という感情だ。 はっきり言おう。誰もあなたには興味がない。 好きなように生きて、思いっきり恥をかこう。

これに関連するような内容として、以下のような主旨のエピソードの紹介と主張がされている。

・せっかく能力と個性をもった人間が集まっていても、「感情」がジャマをして多くの人は手を挙げない。
・誰よりも早く手を挙げ、「まだ形になっていないプロジェクトを成功させてやる」というリスクを取れる人間こそが貴重。
・小利口な人間が必ず手助けしてくれるので、リーダーはリスクを考えずに手を挙げられるくらいバカでいい。

人は歳を取ると失敗を恐れるようになり行動が制限されやすい。失敗を恐ずにチャレンジしていく気持ちを常に持ち続けることが大事だ。

他に気になった箇所と感想

目的を考えずに「面白い」ことをやる

・おもしろいから、楽しいからが著者の行動の原動力となっている。好きなこと、おもしろいことなので時間を忘れて目の前のことに没頭できる。没頭していくと手元に何かが残る。
・子供は目的なんか考えない。楽しいから遊ぶ、美味しいから食べる、寝たいから寝る。常識や周りの目を気にすることがないから驚くほど成長が速い。

確かに、子供の成長を見ていると、やりたい放題やっているように見える。が、ついこの間まで全く出来なかったことが簡単に出来るようになっており成長の早さに驚くことが多い。

その子供が他人の目や親の目を気にしているか?いや、全く気にしていない。自分がやりたいことを、やりたいタイミングでやりたい放題やっているだけ。そして楽しいからそれをやっている。楽しくないことは一切やらない。子供は飽きっぽいし自分の感情に嘘をつくような行動はしない。急成長の秘訣を知るには、子供が一番の教師になることに気付いた。

肩書をかけ算し、貴重な人材になる

元リクルートの藤原和博さんが唱えている「レアカードになる方法」が紹介されている。

・一つのことに1万時間(1日6時間やったと考えて5年)取り組めば誰でも「100人に1人」の人材にはなれる。
・そして、別の分野に1万時間取り組むことで「100人に1人」×「100人に1人」の掛け算により、「1万人に1人」の人材になれる。

上記のように更に別の分野にも取り組むことでどんどん貴重な人材になる。特定の分野でTOPになることが出来るのは特別な才能があるような限られた人物だけだ。重要なのは、才能が無いことを自覚することだと改めて思った。才能が無いことを嘆くのではなく、どのように戦うことが出来るかを常に考えることが重要である。

損切りの話

1000万円で買った株が200万円になったときに売るべきかどうかの判断が紹介されている。重要なのは800万円損したことを忘れること。800万円損したことは感情の問題であり、現在の株の価値には全く関係のない話だから。

すなわち、今からその株を買うとしたら200万円出すかどうかでのみ判断するべきである、ということだ。確かに800万円の損を忘れるのは難しい。が、それに固執してしまうと正常な判断が出来なくなるというのも分かる。

このときの文脈で、以下のような話も記載されていた。

今、手元に資格や資産(土地や家やキャリアなど)がある人は、むしろそれを生かそうと思うことで足かせになってしまうことがある。手持ちのカードを生かそうと考えるのではなく、何をやりたいかをフラットに考えて、その際に必要なカードを集めればいいのだ。そうすることで、スピードが加速し、いくつものプロジェクトを手掛けることができるようになる。

これには納得。私も昔はやたらモノが多かったが、最近では意識的に不要なモノを減らしている。これにより余計な思考(心配や不安など。所有してしまうと失なうことに対する不安が出てくる)が生まれなくなるのは体感済だ。それでも今の自分が、800万の損を忘れて判断が出来るようになっているとは言えず正常に物事を判断することの難しさを改めて認識した。

おわりに

最近、同著者の本を複数冊読んだが「失敗を恐れず行動し経験を積むべき」という主旨が一貫している。そのため似たような話も出て来るが、それほど、著者として重要であり本質をついているということなのだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?