【書評】簡潔に伝える技術について
はじめに
最近は、文字ベースでのコミュニケーションをすることが多い。
改めて自分の文章を見直したとき、結構長いな、論点が分かりづらいな、と思うことがある。
簡潔に、分かりやすく伝えられるようになりたかったため、以下の2冊を読んだ。
本1:超・箇条書き
https://www.amazon.co.jp/dp/B01H1452AK
本2:1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術
https://www.amazon.co.jp/dp/B07BFNPD6Q
本1の概要
この本では、「超・箇条書き」を、「短く、魅力的に伝える箇条書き。そして人を動かす箇条書き」と定義している。
そして、大きく分けて以下の3つのテクニックについて章毎に解説されている。
・構造化
・物語化
・メッセージ化
各章では、どのようにして良い箇条書きを作っていくのかについて、例を出しながら、具体的に段階を追って説明がされていく。
例えば、構造化の章では、以下のような例が出て来る。
ダメな箇条書きの例
・営業の人員が足りていない
・手強い競合商品があるため苦戦している
・コールセンターでの問い合わせ対応のトレーニングが間に合わない
・営業部で期間限定のスタッフが増える
・それ以外のことは、営業部が経営会議に報告して打ち手を仰ぐ
この箇条書きを複数のテクニックを各々適用していきながら、理由付きで説明が展開されていく。最終的に得られた箇条書きが以下である。
最終的な良い箇条書きの例
・3つの問題点が議論された
・営業の人員が足りていない
・手強い競合商品があるため苦戦している
・コールセンターでの問い合わせ対応のトレーニングが間に合わない
・2つの対応が決まった
・マーケティング部が営業部に期間限定でスタッフを貸し出す
・それ以外のことは、営業部が経営会議に報告して打ち手を仰ぐ
上記の例では、以下のテクニックが使用されている。
・レベルを揃える
・大項目と詳細に分割されている
・グループ化
・議論内容と対応内容でグループ化されている
・ガバニング
・3つ、2つなど予め宣言している
多くの方は、箇条書きをするとき、上記の例、すなわち、構造化まで実施していることが多いと思う。本の内容としてここまでで終わってしまうと、肩透かしをくらった気分になりそうだが、本書はこれ以降の物語化、メッセージ化が本題と感じた。
物語化では、相手が期待していることを伝えることを重要視する。となると、相手や相手が置かれているコンテキスト次第で変わる。すなわち、状況に応じて良い箇条書きの形は変わることになる。
この本では、仮想的な相手を定義し(話す相手はこういう考えを持っている人なので、というような前提を置いて)、説明がされていく。
ダメな箇条書きの例
・4つの改善策をとる
・大口の顧客には、先輩社員に協力してもらって価格交渉し、販売単価を上げる
・中堅の顧客には、関連商品も併せて提案し、販売数を伸ばす
・小口の顧客には、今までどおりにコンタクトをとり、販売を推進する
・大口の顧客にも、今までどおりにコンタクトをとり、販売を推進する
・結果として、目標とする営業成績は売上3億円である
この箇条書きがいくつか形を変えながら最終的には以下のような形になった。
最終的な箇条書きの一例
・目標とする営業成績は売上3億円である
・このために、2つの改善策に集中する
・大口の顧客には、山田さんに協力してもらって価格交渉し、販売単価を上げる
・中堅の顧客には、「ダイヤモンド・メーカー」も併せて提案し、販売数を伸ばす
この例では、以下のテクニックが使われている。
・フックをつくる
・3億円の目標をまず持ってきている。
・報告相手の上司が、大きな目標を掲げていることを好む、という前提がある。
・MECE(ミーシー: Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive。漏れなくダブりなく)をあえて崩す
・小口と超小口を捨てている
・固有名詞を使う
・先輩社員→山田さん、関連商品→ダイヤモンド・メーカーへの置き換え
そして、最後は、メッセージ化である。
メッセージ化では、自身のスタンスをとる、すなわち自分の立ち位置を明確にすることが重要である。
ダメな箇条書きの例
私の約束:6箇条
・お客様に喜んでいただける新商品をつくります
・差別化された新商品をつくります
・自分の信じる新商品をつくります
・できるかぎり数多くの新商品をつくります
・一生懸命に効率的に業務を実行します
・すべてのことで自分のベストを尽くします
この箇条書きが最終的には以下のような形になった。
良い箇条書きの一例
私の2つの約束
・市場の声に耳を傾けず、自分の信じる新商品をつくります
・3年間で5つ以上の新商品をつくります
メッセージ化で使われているテクニックは以下。
・隠れ重言の排除
・当たり前のことは書かない
・ベストを尽くす
・効率的に業務をする
・否定で退路を断つ
・「市場の声に耳を傾けず」という、必ずしもお客が絶対という考えではないことを記載する
・形容詞や副詞は数字に変える
・「3年間で5つ」という指標を提示する
この本では、その他細かいテクニックなど含めて参考になるものが多かった。
一部を羅列しておく。
・自動詞と他動詞を使い分ける
・体現止めは使わない。
・時間軸を直列、並列で整理する
・アンサーファースト(結果をまず伝える)は常に効果的ではない。
・効果的な場面の例:時間が無い人、自分に興味が無い人に売り込みに行くとき、など
・非効果的な場面の例:背景や経緯を理解していない人、自分に興味をもっている人、など
・ソフトな否定
・AよりもB
・AからBになる
本2の概要
この本は、伝えるというよりは、人を動かすためには何をすべきか、ということが主題になっており、プレゼンに比重が置かれている内容が多い。
プレゼンに特化していない部分を簡単にまとめておく。
・人は80%の話を聞いていない
・右脳と左脳に働きかけることで人は動く。
・正しいこと(左脳)を言うだけでは、人は動かない
・相手の頭の中でイメージをさせる(右脳)
・相手は誰か?
・ゴールは何か?
・理解してもらうのはゴールではない、理解した上で相手を動かすことが重要である。
・ピラミッドストラクチャー
・根拠の上に主張がある
・根拠が複数ある(3つくらい)
・根拠と主張との間には意味が通じている
・根拠に例示を加える(たとえば、○○です)
・例示は1つの根拠に対して1〜2つくらい
・つまり、ピラミッドは、事実(例示)、根拠、主張の3段で作る
・スッキリ(不要な言葉を使わない)・カンタン(分かりやすい言葉を使う)にして集中して聞いてもらう
・「○点あって、1点目は○○、2点目は○○」という話し方をする
その他、プレゼンや会議の場での細かいテクニックや、アフターフォロー、事前の根回しの重要性など、人を動かすための事例が多く記載されている。
さいごに
2つの本で共通しているのは、「伝えるのはゴールではなく、伝えた結果何を自分が期待しているのかを、しっかりと認識するのが重要である」ことだ。
論理的に伝えるのは大前提で当たり前、そこから如何に相手の右脳に働きかけることが出来るか。そのためには、伝える相手を知ること。伝える相手を知ることで、何を伝えないかも決まる。
これらの本を読む前は、簡潔にするためのテクニックを期待していたのだが、これらの本を読んだ後、結局は人間相手のコミュニケーションである以上、相手に応じて対応を考えることが重要であるということを改めて認識することができた。
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