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山口小夜子さんのこと

一昨日、YouTubeを見ていたら、なぜか山口小夜子さん関連の動画があがってきました。言わずと知れた、日本を代表する世界のトップモデルです。

誰にも似ていない、誰も真似することのできない唯一無二の日本的美の象徴でいらっしゃいましたが、2007年に急逝されました。ああ、もう15年も経つの? と驚き、生きていらしたら何歳になっていたのかしらと思わず数えてみました、来月のお誕生日で73歳…。73歳の山口小夜子って想像つかない。まあ、想像する必要もないのですが、だって57歳で止まっているのだから。

私は山口小夜子さんより約ひと回り年下なので、彼女の美に憧れて若い時を過ごしました。特に、資生堂のセルジュルタンスのCMなどは、もう言葉もでない、あの美しさに圧倒されました。母が近所の薬局でお化粧品を買うともらってくる「花椿」誌を見るのが楽しみでした。楽しみなんだけれど、小夜子さんのあまりの美しさと自分を比べてしまって、落ち込んでいたようにも思います、なんか、自分の将来がすでに絶たれているような錯覚に陥っていたのかもしれません(笑)。

小夜子さんがファッション界の一線から離れ活動を広げられていた頃は、何をされているのかよく知りませんでした。自分自身が自分のことで忙しかった時期でもあったので。そして、2003年、NHKの「課外授業ようこそ先輩」で久しぶりにそのお姿を拝見して、またしても衝撃を受けました。だって、資生堂のセルジュルタンスの頃から20年は経つのに、全然変わらないから! 亡くなる4年前なので、すでに50代前半でいらっしゃいましたが、まったく、小夜子さんを囲む空間だけ、時が止まっっているように見えました。

そんな風に久しぶりにいろんなことを思い出したので、少しだけ、YouTubeやネット検索で小夜子さん情報をたぐってみました。そして、不思議な思いがしてきました。

どうして、一週間前に会った人にはまったく不調に見えなかったのに、急逝されたのか? (死因は急性肺炎とされているので、まさに急性なんでしょうが)。
急逝されたわりに、告別式は故人の遺志により身内で済まされている。闘病されていたわけでもないのに、万が一に備えてあった。独身でいらしたので、周りに迷惑かけないように、備えていたのかもしれませんが。
亡くなる一週間前に、知り合いの写真家の方に、急に撮影を依頼されたそうです、そして自作の黒い服で現れた、と…。

小夜子さんは、晩年は「ウエアリスト」と称して活動されていたそうです。トーク番組でも「身体だって着ていると言えるかもしれない、魂が身体を着ている…」という主旨の発言がありました。

私にとっては、そして恐らく多くの人にとっても、山口小夜子といえば、漆黒のボブヘア、陶器のような白い肌、くっきり切れ長の目、真っ赤なくちびる、スレンダーなプロポーションが確固としたイメージでした。それはイメージですよね? メイクアップをしっかりされていたので、自宅に帰れば化粧を落とした素顔があったはず、当然。

ご本人にしてみたら、だから、山口小夜子というイメージ/ブランド/存在そのものを、魂の/心の/素の自分の上に、纏っていたのかもしれません。。

そして、36年間保っていたその絶対的な美しい山口小夜子を、57歳という若さで逝くことによって崩さないまま封印してしまった。意図的であろうとなかろうと、です。

だって、やはり73歳の山口小夜子は、想像がつかないから。

そんなことを考えていて、俳優の田村正和さんと共通しているところがあるように感じました。

田村正和さんは昨年お亡くなりになりました、77歳でした。が、晩年、あまりテレビでお姿を拝見することはなかったように思います(もっとも、私があまりテレビを見ないせいもありますが)。勝手な推測ですが、往年のイケメン、美しい田村正和のイメージを崩さないようにされていたのかしらと思います。若い頃は美男美女で鳴らしていても、年齢相応に老け役に移行して活躍し続ける俳優さんもたくさんいらっしゃいますが、田村正和にあっては、それはナシだったのかな?と。晩年、お姿を見かけないなと思っていたらそのままある時、亡くなっていた、と知り、それはそれでショックでしたが、最後まで”田村正和”であり続けたのが、素敵でした…。

なんてことを徒然と思いつつ、ウキペディアにびっくり、そんなことを思っていた一昨日の8月14日は小夜子さんの命日でした。

私は、学生時代から約20年間、定番だったボブヘアを止めてから20年超経ちます(容貌が年と共に変わるのにヘアスタイルだけ変えないのはナンセンス、という貴重なアドバイスに従った結果ですが)。憧れだった山口小夜子さんへのオマージュとして、久しぶりにボブスタイル、復活してみようかな、なんて、思ったりしてみています…。小夜子さんが過ごさなかった60代を、小夜子ヘアで生きてみるのもありかも? できるだけ、私なりに、美しく…。



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