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ファッション忘備録:記憶の中の80年代コムデギャルソンのピンク

コムデギャルソン

22歳の夏、デパートの社員としてコムデギャルソンの売り場に配属されました。配属を言い渡された当日までは、当時の流行りのニュートラ・ハマトラまがいファッションでした、就職活動の名残で…。(ニュートラ・ハマトラとは何か?について知りたい方は⇒こちら)。

一か月の販売員研修期間中、自分では輸入ブランドに行くつもりでいたので、まったくその存在を知らなかったコムデギャルソンの売り場に連れていかれて「今日からここに立つように、お前はマネキン替わりだから」と売り場主任に申し渡された時の衝撃といったら! 当時のコムデギャルソンは今のような可愛いラインとかなくて(Tricot トリコは可愛かったけど)、ファッションブランドといえばパリコレに登場する綺麗でエレガントなもの、くらいのイメージしかなかった私にとってはとんだ誤算とショックでした。

その時の私のファッションは就職活動の名残のニュートラスタイル、ヘアスタイルもレイヤーカット。で、慌ててボブにしました。学生時代後半はボブスタイルで、憧れのモデル山口小夜子さん風を気取っていましたが(笑)、就活スーツには似合わないのでそれなりにしていたのを戻した、感じです。

それでも、現代アート作品のような(理解できない…)デザインの高額商品を、いくら社販でもそうそう買うわけにいかないし、いずれにしても着こなせないので(身長の問題ではなくてそこの服に心酔しているかどうかのマインドの問題だったと思います…)、「一番シンプルなのが良い(無難)でしょう」と店長(ブランドの人)に選んでもらったのが、イラスト左のフランス製ウールジャージーのワンピース。ストンとストレートライン。フランス製が嬉しかった以外は感慨なし…。靴も、合わせられる手持ち品はなかったので中国雑貨店の大中でカンフーシューズ!を買って売り場用に履いてました…。ウエストをきちんと締めないスカートなんて信じられない!と、この楽ちんワンピースに危機感を覚えて、下にコルセットを付けてました…(笑)。制服代わりに、毎日コルセットを締めて出勤し、苦しい思いをしてこれを着てお店に立ってました…。

8月に売り場に配属になり9月に入ると秋物商品の立ち上がりで、黒・グレー・紺のモノトーンな売り場に差し色シリーズが並びました。4~5色あったと思うのですが、私が覚えているのはピンクと金茶。ピンクはちょっとくすんみ加減で可愛かったのと、コットンのシャツやベルト、タイツは他の商品に比べたらお手軽に買えたのがよかったです。

同じ色でも、素材が異なると色の出方が違います。コットンシャツのピンクは比較的薄目、ベルトは皮革なのでクレヨンで塗ったようにマットで鮮やか。タイツは透けない厚手の化繊生地でやはりマットな濃い色目でした。

今回、描いてみようと思い立ってどんなピンクだったかなあ、と記憶をたどりつつ、色の本をあたって名前を探してみました。「色の知識」という、カラーコーディネータースクールに通った頃に娘がプレゼントしてくれた本と、「日本の色269色」。

コムデギャルソンのピンクは、くすみ加減が日本の色っぽいなあと思っていたのですが、記憶の限りですが、一番近いと思えたのが、冒頭の写真にあげた「日本の色269色」にある「薔薇色」です。ブランドイメージが強すぎて「薔薇色?!」はちょっと違和感ありましたが、使ったステッドラーの水彩色鉛筆も本のサンプル色に限りなく近い。なので、イラストの色は、実は写真の色鉛筆の色なんです。

商品説明に戻ると、ベルトは通常のようにストレートではなくて緩くカーブしていて、一方についているパッチンと留めるクリップ(ズボン吊りについてるアレ)でもう片方を挟む、タイプ。そのカーブを身体に沿わせて、身体の太さやどこ辺りにベルトを位置させるかによって、好きなところを挟むみたいな、その融通性が珍しくて気に入ってました。使い込むにつれて、パッチンの跡がふえてしまいましたが…。ストレートのワンピースにつけるとアクセントになり。当時のコムデギャルソンの雰囲気には全然合ってなかったと今は思うのですが、当時の私にはそのくらいの着こなしができる努力の精いっぱいでした…。

イラスト右は、そのベルトを白いコットンのスカートにつけて、同じピンクのシャツと合わせて全然ギャルソンっぽくない着こなし(笑)。このスカートはただの長方形! それだって、「スカートにはベルト芯があるベルトついているのが普通」と思い込んでいた私には驚きでした…。当時のスカートはサイズが3センチ刻みで、57センチ、60センチ、63センチ、66センチ…とありましたから。(最近の時流を考慮してこれ以上の回顧は致しませんが)。

この時のショックなファッション体験が、でも、私の感覚にとっても大きなインパクトを与えたのは事実です。平たく言うと、自分のファッションをひとつのカテゴリーにおさめないで、好きなものは何でも着る、ようになったこと。その頃は、だから、仕事ではコムデギャルソンを着て、社販で買うのはハナエモリブランドのCODE4129や当時流行していたNORMA KAMALI、ハマトラ・ニュートラもまだ手持ちにあったということで、文字通りなんでもありでした(笑)。

また、なぜかそのままコムデギャルソンに留まることはなく、売り場で同じ並びにあったYsに惹かれるようにり、今もYOJI YAMAMOTOは大好きなブランド。


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