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ファッション忘備録:幻のブランドCODE4129

遥か昔の三十数年も前のこと、有楽町に阪急百貨店と西武百貨店がツインでお店をオープンした時のこと。その阪急の新店舗要員に応募した私は(新卒で入社した外資系商社を三か月で辞めて…!)、なぜか古いほうの数寄屋橋店配属になりました。配属希望調査の際に「輸入ブランド」と書いた(ような気がする)のは、店舗のスタッフは自分の担当ブランドの服を着て店に立つのが原則で、長身の私には輸入ブランド以外に着られる服はない、と信じていたからです。

さて、配属は輸入ブランドおよび日本の高級ブランドが並ぶ「特選婦人服売場」のコムデギャルソン。ハナエモリ、芦田淳、ジョルジュレッシュなどエレガント系が並ぶ売り場の端っこにコンクリート打ちっぱなしの異世界空間があり、そこにワイズ、山本寛斎、とコムデギャルソンの3ブランドが並び、私はその一角に立たされたのでした。

前置きが長くなりましたが、今日のテーマはそのフロアにあったCODE4129。ハナエモリ社のブランドでした。取り扱い点数は少なかったのですが、大好きでよく休憩時間に見せていただいて、社販で買いました。当時の私にとっては社員割引があっても十分高額でした。が、とにかく素敵だった…。

同期の販売スタッフに聞いたところによると、デザイナーの意向により店頭の服もモデルサイズ。デザイナー氏の想定する理想モデルは身長178センチのスリム体型。そのモデルに着せて美しいバランスの服をそのまま店頭に並べる。たまに、「フロアショー」なるイベントがあって、売り場の通路をファッションモデルがブランドの服を着て歩くのですが、CODE4129のフロアショーの時は、デザイナーが理想として描いたであろうデザイン画から抜け出したような、この世のものとは思えないプロポーションのモデルさんが颯爽とフロアを闊歩し、お客様と一緒に眺めてただただため息でした…。

そんなサイズ感なので、「素敵!」と飛びつくお客様がいても試着してみるとたいていは長すぎて着こなせない…。だから売れない、と担当のスタッフがいつも嘆いてました。

私は当時、充分「背が高い!」ほうでしたが、CODE4129を理想的に着こなすには若干足りない。それでも、標準サイズの人よりはイケる、ということで、学生時代には縁のなかったそのエレガントで高品質かつ高価格なお洋服を社販で何着か手に入れました。

チェックコート

一番のお気に入りはこのコート。若干モヘアっぽいウールで、白地に黒の大柄チェック。丈も、マキシとはいかないけれどまあまあ長め。何より80年代の当時は肩パッド隆盛期。このコートにもしっかり厚みのあるパッドが入って丸くて大きな肩を作っていました。お袖はラグランで、身幅はめちゃくちゃたっぷりだけれど裾に向かって絞ったストレートラインだったように記憶しています。私は「丹前」と呼んでいました(笑)。これはさすがに170センチはないと着こなせないということで強く勧められましたが、何より、デザインが本当に大好きでした。当時の私にしては清水の舞台から飛び降りる思い、で買いました。

たっぷりサイズなので下に厚着もできますし、2月生まれの娘がお腹にいる時は臨月でもこれを着てると目立たないと言われたくらいでした(笑)。

麻スーツ

二点目はベージュの麻のスーツ。これも絵の感じよりもっと丸くて大きな肩。無地で、目は粗い感じの麻の生地で、大きな四角い貝ボタンがアクセントでとってもお洒落で上品でした。スカートはタイトのひざ下丈。
これを二十歳そこそこで着ていたなんて、もったいない(笑)。今着ても十分というか、今の方がきっと素敵に着られると思います…。でも夏服で麻素材なので襟周りのシミも取れないし、大きな肩が流行遅れになるとお蔵入り。

ウールニットプルオーバー&マーメイドスカート

三着目は黒のウールジャージーのプルオーバーとマーメイドスカートのセットアップ。プルオーバーはパフスリーブの七分丈、ウエスト部分が幅広ベルト風でバストの下で切り替えてギャザーが入っている、とってもフェミニンなデザイン。スカートは眺めのマーメードライン。これも二十歳そこそこで着る機会もないのになぜ買ったのか今となっては不明ですが(笑)、あんまり綺麗だから単に欲しかったのだと思います…。数年後にお友達の結婚式に、アクセサリーをジャラジャラつけて華やかさアップして参加した記憶があります。これも、今持っていたら、娘の結婚式にだって参列できたのになあ、と思いますが、娘が生まれる前の品ですから、いずれにしても無理だった?

残念なことにデザイナー氏が急逝されてブランド自体もなくなったと、表参道のハナエモリを訪ねた時に伺ってショックを受けたのは、これらの服を社販で買っていた時から10年以上たった頃でした。

若い時に、こんなエレガントでフェミニンで高品質な本物のお洋服に手を通すことができたことは、今思うと本当にラッキーでした。

ちなみに、CODE4129の4129は、よいふく=良い服。それを知ったのはずっと後のことでした。そういえば、阪急と同時にオープンした有楽町西武の1階にはオリジナルブランド服がありましたが、ブランド名が”U261"=有楽町2丁目6番1号みたいな住所でした。それすらもお洒落に思えた時代、というか、若い頃の私でした…(笑)。

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