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恵比寿様(4)薪能

「薪能がある、行かないか」と夫に誘われ、一も二もなく承諾した。能を見るのは何年ぶりだろうか・・
場所は美保神社、美保神社は事代主命(恵比寿様)が御祭神。芸能の神様で歌舞伎役者、能楽師、映画俳優が参拝に訪れるという。夜7時開演。

演目は「舎利」(しゃり:お釈迦様の骨)
能は幼い時から父に連れられ鑑賞した。数えられないあくびを繰り替えしたことは多かったけれど。アクションの多い「動」の演目は、迫力がある。今回の舎利は初めてみたが、この「動」のものだった。

一般の能舞台には緞帳がない、橋掛かりの奥に幕がしつられる。今回の拝殿はどのように舞台にするのかな、と思ったけれど、拝殿の左側に屏風を置き、橋掛かりを省略していた。

地謡いや囃子方が美保神社のご祭神である事代主命に神歌の奉納をし、その後、神殿には御簾のような幕がひかれ、演目の舎利の説明があり、ほどなく、囃子方が登場した。躙り口はないから地謡方そして後見が続いて入る。大鼓と小鼓がさっと床几をひろげ座る。この瞬間、“始まるわ”といつも背筋がのびて心地いい緊張感だ。
脇役が登場し「これは出雲の国美保関より出でたる僧・・・」という始まり。まさに「生まれも育ちも葛飾柴又~」というどこかで聞くセリフと同じ。どこのウマの骨かを日本人が気にする証みたいだ。

美保関の僧ははるばる京都の泉涌寺まで旅して、舎利を拝んだ後、雷が鳴った隙に、足疾鬼(そくしき)という悪い鬼に寺の宝・舎利が奪われる。奪う瞬間は動作巧みな舞。その場にいた僧は、犯人として疑われるけど、力強い“丁寧な説明”のセリフで鬼に奪われたと主張して疑いを晴らす。寺はスーパースターの韋駄天に捜索を頼む。朗朗とした的確な口上の謡に聞き惚れる。
韋駄天は三界(仏語で欲界・色界・無色界=全世界)を駆け回り、足疾鬼を見つける。舎利を取り戻す。
どうやって舎利をとりあげるのかな?と所作から目が離せない。

金襴の能装束に身を包んだ後シテ=主役・足疾鬼の迫力とワキの韋駄天の舞と鼓や太鼓は迫力満点。かがり火の中に浮かび上がる能舞台、古文のセリフだけど、わかるのは年取ったせい(笑)。
外気23度、秋風吹く夜。
ゆうこの山陰便り №127加筆修正

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