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暗闇のエーテル(小説)

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10年ほど前に書いた小説です。
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#小説

暗闇のエーテル(第16章 故郷)

 ぴっぴは毎週日曜日に教会堂のミサに参加している。今日もポッペンと祈りを捧げ、帰り道を二…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第15章 灯台の光)

 ポッペンはぴっぴがヨルシュマイサーに会った事があるのを信じないわけではなかった。しかし…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第14章 科学館)

 ぴっぴが灯台に戻ってから一月が経った。朝、いつものように工房に向かおうとお昼ご飯のサン…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第13章 ヨルシュマイサー)

 一年後、ぴっぴは燃料切れで動かなくなったラインマーカーを手で押しながら歩き続けている。…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第12章 タンポポロード)

 ぴっぴは国道をラインマーカーに乗りながら進んで行く。 ポコンポコンポコンポコン…ポコン…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第10章 ミンボウ)

 ぴっぴはミンボウという言葉だけを頼りに歩いた。しかし何処にも見当たらない。相変わらず電…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第9章 ネオシティ)

 ぴっぴと伯母は会話を一言も交わす事なく、電車を乗り継ぎ叔母の家へ向かう。場所はアカデミックシティから遠く離れたネオシティという場所にあり、その名は百年以上前につけられたものだった。  現在は治安が悪くコンクリートで出来た高層ビルの殆どが廃墟と化していた。辛うじて雨風をしのぐ程度の祖末な住まいで人々は生活している。街の殆どが貧困層であり、働き口もなく隣接するシャティエンという街まで出稼ぎに行っている。  ぴっぴは伯母の後ろについて歩いた。すれ違う住民は皆破れた服を継ぎもせ

暗闇のエーテル(第8章 病院)

 どのくらい眠っていただろう。目が覚めるとぴっぴはベッドにいた。真っ白な何もない空間。む…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第7章 アカデミックシティ)

トンネルを抜けると眩しさで目の前が真っ白になった。 「んーまぶしいです…。」  ところが…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第6章 シンコウ港)

 乗船から一月、ぴっぴは見廻りが来る時間には空になった飼料袋に隠れる生活を続けると、つい…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第5章 ディとヤポンスカ号)

 ぴっぴがファロスで生活を初めて半年が過ぎた。相変わらず昼は熱く夜は寒い生活を送りながら…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル(第4章 レンズ工房)

 目を覚ますとまだ薄暗かった。表が何やら騒がしい。もぞもぞと寝袋のジッパーを開け、様子を…

虹樹
2年前
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小説 暗闇のエーテル (目次ページ)

暗闇のエーテル目次ページです。 暗闇のエーテル (第1章 火事) 暗闇のエーテル(第2章 砂…

虹樹
2年前
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暗闇のエーテル (第1章 火事)

二〇三二年 四月。 シロツメクサの花がパツパツ咲き、白い束がそこいらじゅうにボン、ボン、と生えている。風が心地よい春の朝、ぴっぴはのっぱらの真ん中で居眠りをしている。 「すーぴー すーぴー」  鼻を鳴らしながら微睡みつつ、夢の中で白とグレープフルーツ色の間を行ったり来たり。顔はライオンの鬣のように花で縁取られている。瞼の裏側にチカチカと丸い蛍光色の残像が行ったり来たり現れたり消えたりしている。 「うー…むぐむぐ…。」  意識が戻ると大きな目をぱちりと開き、かっきり九十