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猫と暮らした私の21年間

彼女は捨て猫だった。私が小学生の頃に見つけた子猫だった。
初めて見たときから甘えん坊で人懐っこくて身体の小さい子だった事を今だに覚えている。

私の人生の半分以上は彼女と暮らしてきた。

彼女の表情を見るだけで、言葉など交わさなくてもなんとなくだけど気持ちがわかったりした。
寂しがりやで、くっつく事が好きだった彼女はいつも私の膝の上に来ては甘えていた。信頼して、安心して、丸くなって寝てくれるのが私は嬉しかった。

夜、一緒に寝る事はいつも拒むくせに、私が朝になっても起きて来なかったら心配してか構って欲しいのか鳴いて必ず一度は起こしにきた。ゆっくり寝たい。
起こしに来たかと思えば布団の中に入りたそうにするので、結局一緒に寝てしまう事もあった。目覚めると毛玉の物体が目の前にいたから最初はびっくりした。

仕事でツラい事があった時は抱きしめさせてくれた。
ちょっと嫌な顔はされたけど、逃げる事なくそのままジッとしていた。
何かあったのか。仕方ないな。そう言われている気がした。

外出するときや帰ってきた時は必ず彼女に話しかけていた。
「行ってくるね」「ただいま」
玄関の扉を閉めると寂しそうな声が聞こえてきていた。
帰ると嬉しそうな、寂しかったと少し怒っているような鳴き方をされた。
寂しいのはお互い様なんだよ。気付いてないだろうけど。

歳を取っても甘えん坊なところは全く変わらなかった。
私より先におばあちゃんになっていくのは見た目より、撫でた時に感じた。
こんなに細くなっていくものなんだな。
いつまで一緒にいてくれるんだろう。
ちゃんと幸せだっただろうか。
そんなことを少しずつ考えるようになっていった。

彼女が息をひきとる数日前から私の部屋で過ごすようになっていった。
何かに耐えるような表情で私のそばにいた。
猫って死期が近くなると自分の身を隠す生き物だと聞いていたけど、彼女は違ったんだろうか。お互いに別れを感じ取っていたと思う。
寂しがりやな彼女らしいと思った。

夜に一緒に寝るのを嫌がっていたのに珍しく私の部屋で一緒に寝た。
起きたら息が止まっているのではないかと私は途中で何度も起きた。
彼女はそんな私を見て「どうしたの?」って顔をする。
でもその表情すらもツラそうだった。
数日後、ついに起き上がれなくなった。

天国へ旅立つ日の朝、寝たきりの横顔を見つめていた。
呼吸があるうちに感謝の言葉を少しずつ伝えた。
悲しくなった。とても寂しくなった。
どうしようもなく涙が止まらなくなった。
でも、それよりもただただありがとうと、心からの感謝の方が強かった。

いつも一緒にいた彼女が目の前からいなくなってから1ヶ月が経とうとしている。
最後に感謝の言葉を伝えれて、看取れて本当に良かったと思う。
彼女と過ごした21年間はとても幸せでした。
またどこかで巡り会えたらいいな、なんて思います。


ありがたく食材費に・・・料理本とかも。 何に使ったかは記事で紹介させていただきますね。