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山ペンギン 4 高速の星

イマドがエレキギターを弾いている。

もちろんオレのものだ。

あの手でどうやって弾いているのかはわからない。
だが音は鳴っている。

以前は通電させていたが、今はアンプはつないでいない。

ヤツの羽毛のせいか、感電したからだ。

家に帰ると何か真っ黒なくるくるに縮れた毛の塊のようなものが踊り狂っていて、

オレは自分が何を見ているのかわからなかったが、焦げ臭いので感電したイマドだと理解した。

エレキギターを持っているのはバンドをやっているからだ。

オレはどちらかといえばモテる。

イマドが来てからはそういったことに構う余裕がなくなっているが。

一度などいい感じになった女の子を連れて帰ってきたら

「アナグマドリがいる!!」

とわからないことを言って逃げ帰った。

ところでイマドは何を弾いてるんだ・・。

ほん、ほろほろほほんほろほろ・・。

まさか・・

ほんほろほろほろほーん。

ハイウエイスター・・。

ふえーんほろほろ・・。

オレはなんだか悲しくなってきた。

へへんへーん

どうしてオレは

ほあは、ほあは

こんな生き物と

ふおおんおーんおーん

暮らして、こんな間の抜けた音を聴いてるんだ・・。

オレは外に飛び出した。

帰ってきてオレはイマドに

大正琴をくれてやった。

その後イマドは華麗な手つきで

ヴィヴァルディの春を大正琴で奏でている。


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