山ペンギン 44 年末年始営業
「オレ君ー大晦日と元旦、シフト入れるかな?」
主任から打診。
「大丈夫ですよ。」
「劉さんと一緒なんだけど。」
「やっぱり帰省しようかと思います・・・」
ここまで言って隣にいた劉さんに殴られる。
「私が帰らないのに、なぜ帰るか。阿呆。」
この人はなんでこんなに口が悪いんだ・・・。そして、何でこんなに理不尽なんだ。
「こんばんは。年末年始って何か特別なんですか?」
トリが来た。
「我々も帰省しませんよ。」
そりゃ遠いからな・・・。
「遠いから、って今思ったでしょう。宇宙は四次元的に折りたたまれているから距離があるほうが、ワームホールの利用で早く帰れるんですよ。」
四次元に折りたたまれているといわれても。
「foldingだな。」
劉さんが答える。
なんか検索して出てきたPDFを紹介しておこう。
http://www.tuhep.phys.tohoku.ac.jp/~fumi/resources/Lecture0821.pdf
違う気もするがまあいい。
「近い方が行きにくいんですよ。近いほど直線距離で移動するしかないですからね。」
「ああ。金星に行く方が時間かかるかもな。」
「別の恒星系でも、同一銀河内だと大変だから、いったんアンドロメダに出ますもんね。」
どんなトランジットだ。
「近いほど恒星系ごと、銀河ごと同一ベクトルの方向に高速で移動していますからね。
折り紙を連想してもらっていいですよ。近い位置ほど、折り曲げて合わせるのが難しいでしょう?ほぼその感覚で理解してもらっていいです。
遠いほどやりやすいでしょ。
ただ、折り曲げられている位置が時間ごとに必ずしも同じでないので、まるがりたさんが作ったAIが計算して、どの経路をたどるのが最適なのかコース設定しているんですよ。」
分かったような、分からないような。
ギャルも来た。
「新年あけちゃってめでたいー」
「ゼロカロリーおもちがあればうれしー」
マリとユリと言うらしい。
劉さんの顔が少し険しい。苦手なのか?
マリさんは今高校生なんですか?
「よく聞いてくれましたー。これ、なんちゃってだから、制服=私服ー。今20歳!」
20歳でそれはすごいでしょ・・。
「ほんとは大学でー。」ユリ
「劉さんのこと知ってるよ。」マリ
「確かに存じ上げております。」
なんで突然敬語・・。まあ、お客様だけど。
「MIT工科大学准教授のお二人。マリア・ペレイラ・アルブロイド博士とユーリ・スジェク・ダクロビッチ博士ですよ。」
飛び級で17歳で大学卒業、その後MITに残り研究を続けているようだ。
「お前は・・。私たちの大学に教えに来てるだろ。」
呆れたように劉さんがため息をつく。
遠目にしか見ていないし、教壇では多分白衣だから・・。
・・・20歳でそれはすごいでしょ・・・。
どちらも日本人のギャルにしか見えないけど。(続く)
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