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太夫さん2題

こちらの土地には「太夫さん」と呼ばれるいわゆる「陰陽師」のような人がいる。

普段は違う仕事をしていることが多いが、基本は「禰宜」に相当する。

とはいえ、私たちにとっては「身近な」存在なのでみんな、なにがしらの恩恵を受けている。

1)えいゆうのはか

私の伯父が中学生のころ。田んぼのあぜ塗り(田のふちを泥で固めて水が流れないようにすること)をしていた。

そこに小さな「塚」があり、あぜ塗りのちょっと邪魔になっていた。
伯父はそれを「昔のえらい人」と聞いていた。

伯父はそのまま「塚」を塗りこめてしまい、その上から指で「えいゆうのはか(英雄の墓)」と泥の上から書いた。

その晩から伯父は高熱を出した。
医者を呼んでも全く効果がない。そのうち医者が言いだした。
「太夫さんを呼んだほうがいい。」

太夫さんがやってきた。「何かおかしなことをした憶えはないか。」

伯父は「えいゆうのはか」の話をした。

もちろん家族は激怒し、塚に行き、すぐにあぜを壊して塚を出し、太夫さんの祈祷と、たくさんのお供えものをした。

伯父の熱はすぐに下がった。

どうも塚を塗られたことにより

「息が出来なかった(死んでいるのに)」らしい。

2)「ばくろうさん」についた生霊

母の住んでいた地域に「ばくろうさん」と呼ばれる、馬を引いて荷物を運ぶ仕事をしている男性がいた。
かなりのイケメンだったようで、各地で女性をだましていた。

ある日、嫁の具合が悪くなり、医者を呼んでも治らない。これはおかしいと太夫さんが呼ばれた。

「騙した女の生き霊が憑いている」と太夫さん。

太夫さんはその生き霊を「こんな男に憑いていてもいいことは何もない。おとなしく、家に帰りなさい」と諭し、本人も納得して帰ると言いだした。

しかし、しばらくしてその生き霊はまたばくろうの家の方に戻ってきた。

さすがに太夫さんも怒りだし「帰ると言うなら帰ったらどうだ!」と叱ると生き霊は

「夜道が怖い」

と言いだしたので、知人の男性が生き霊を送ることにした。

少し大きい道に来た時、生き霊は

「ここからなら道が大きいから大丈夫」と帰って行った。

*いずれも母から聞いた話ですが、母自身が誰かに適当なことを言われたかもしれませんので、悪しからず。


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