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1.5万人規模のカンファレンスad:tech tokyoがオンライン開催に振り切らなかった理由

2020年の春からの新型コロナウィルスの流行に伴っておきた社会情勢の変化について、私はビジネスカンファレンスを主催するイベント会社の代表として感じたことや行ったことを色々とnoteに書いてきました。

2020年もいよいよ終盤に入りながらも日々変化していく環境のなかで、私たちコムエクスポジアムジャパンが主催するなかでは最大のイベント「ad:tech tokyo」が明日幕を開けます。

「ad:tech tokyo」は今年12回目を迎える、マーケティング業界向けのビジネスカンファレンスで毎年秋に2日間合計で1万4千人を超える参加者をお迎えして開催しています。昨年までは東京国際フォーラムを会場に全プログラムをリアル会場でお届け。デジタル関連のテーマが扱われることが多いイベントだったからこそ、イベントとしてはリアルの良さを追求してきましたが、本年はオフラインとオンラインを同時に展開する「ハイブリッド形式」にて開催することとなりました。

オンラインとオフラインどちらか一つには絞れない

経営面からの正直な話をすると、オンラインかオフラインのどちらかに振り切ったほうがかかるコストや人材の数は効率がいいです。実際に他の大型ビジネス展示会は大規模オンラインに舵を切ったか、あるいは旧来のオフラインスタイルの維持かに別れているようです。

ただ、オンラインオンリーにするにしろ、オフラインオンリーにするにしろ昨年までとの状況があまりにも違うため、オンラインオンリーなら完全な新規の企画、オフラインなら感染症対策を含む現況へのフィッティング作業がそれぞれ必要になってきます。もちろん、最終的な収益を精緻に読むことはどちらも困難で経営としては多少なりとも賭けになります。そこで、今回のad:tech tokyoではオンラインにもオフラインにも賭けることを決断しました。私たちのビジネスモデルの場合ではオンライン、オフラインどちらに絞っても例年通りの収益は難しい。どうせ賭けならハイブリッドにして両方の情報とノウハウを収集し、来年以降に活かしやすい賭けをしようという選択です。ノウハウがたまれば、スポンサーはじめ、関係者の皆さまにも還元できますし。開催日前日にこんな裏話を発表するのもなかなかスリリングですが!笑 

さて、このad:tech 2020を通して検証したいものは大きく2つあります。

検証事項①リアルじゃなくても良くない?のラインはどこからなのか

今年の春以降、リモートワークによる社内コミュニケーションのオンライン化はもちろん、社外の人との打ち合わせもオンラインでやることが珍しくなくなりました。相手の熱意がお互いわからない初回のご挨拶営業アポや、逆に関係性が出来上がりきったパートナーとの定例会など今の状況が収束しても引き続きオンライン会議が選ばれるようなシーンありますよね。「リアルじゃなくても良くない?」という意見で一致するようなシーンです。一方で契約直前の交渉や、競合プレゼンのような熱量がすごい打ち合わせや、雑談含めて盛り上がりたいネットワーキングなど「リアルじゃないと厳しいな」というものも当然あるわけです。そこのライン引きがまだ手探りです。ウィルス流行の動向にも左右されますし、VR技術が発達してくればオンライン会議もリアルにどんどん近づいてくるでしょう。ここから先のことはまだ見えませんが、今回は今までフリーエントランスになっていた基調講演や展示ブース会場をオンラインに移す選択をしました。最終的な来場人数が読みにくい部分でもあるため感染症関連の規定をクリアするための施策でもあります。いわゆる潜在的なニーズがオンラインでどこまで掘り起こせるのか注視しています。

検証事項②トークセッションのアーカイブはどれほど視聴されるのか

今回、有料カンファレンスパスの購入者が参加できるトークセッションはオフライン会場で実施したものをオンライン中継、さらにアーカイブ化し数日間の見逃し視聴が可能になっています。それにより会場のリアルな場で参加者本人が移動して参加しなければならなかった都合、最大で2日間9セッションまでしか参加できなかったものが最大59セッションにまで閲覧可能プログラム数が大幅にアップしました。従来通りオフライン会場での9セッションだけに集中することもできますし、オンラインの中継をオフィスにいながらリアルタイムで見ることも可能です。そういう選択肢が増えた時に一体何人の人がいくつのセッションに参加し、視聴するのでしょうか。週末を使ってまで新しい情報を収集しようとする方は昨年以上にたくさんのものを得ていただける一方で、セッション終了直後の登壇者と直接コミュニケーションを取れるチャンスはやはりオフラインのリアル会場でないと得られません……オンラインとオフラインどちらも利用尽くしてくだされば主催者冥利につきますが、果たして。

ハイブリッド開催すること自体が、業界の試金石になる

「オンラインで家から仕事や学習するのって便利!」と「オフラインで人と直接会って空気を感じられるのって面白い!」という相反する欲望は私たちのなかで拮抗していると感じています。新型コロナウィルスの流行状況だけでなく、通信技術の進化や、2027年開通予定のリニアモーターカーなどによる交通の進化によっても、その欲望は揺れ動くはず。先々のことはわからないと何度も書いてしまいましたが、少なくとも昨年までの状況にはもう戻らないというのが私の考えです。これからどんなことが起こったとしても、柔軟に対応にできるよう、まずはオンライン、オフラインのハイブリッドイベントでたくさんのことを吸収します。ad:tech tokyoを通じてお会いできる方はもちろん、このnoteを通じてでも色んな方のご意見を聞ければと思いますし、得られたことは発信して共有していきます。では!

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