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鎖に繋がれた象《改》

またひとつ寓話(改)を紹介いたします。

ある所に鎖で繋がれた象がいました。
その鎖が固定されているのは木製の杭ですが、確かに太くてしっかりと打ち込んであり、そう易々とは外せません。
この象も子象の頃なら外せませんでした。
生まれながらにこの頑丈な杭に繋がれて、寝ても醒めても違った景色を求めて脱出を繰り返しましたが、どうにも外せない杭に、その気持ちもとうに失せてしまったのです。

大人になり、自分の身体が大きくなって、既にその杭を外すことは余裕で叶うのに、その象はその事に気づがずに今まで通りただその場で与えられた環境に満足して、そこから離れたいと四六時中思っていた身体の小さかった子象の頃と同じ場所で暮らすのでした。

いつかその簡単な事に気づく時まで……

あたりまえのようにその場から離れずに生活を続けるその象……
その背中には自由に空を飛び回っている小鳥も疲れを癒すためにとまっています。
お互いに会話することによって意思の疎通がかなわぬ関係にあり、象からみたら『またどこかから来たなぁ…』くらいにしか理解できないその鳥たちだろうが、鳥の方から象を見たら、《鎖に繋がれて可哀想な象》と、その事実が見えるに違いない。

鳥は象に教えてあげたい。

でも、お互いを分かり合うための言葉を持たないので、その鳥は疲れが癒えたらまた自由なる大空へ飛び立つのみであった。

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