スポーツ観戦の楽しみ

NBA NY・Knicksの大ファンで頻繁にマディソンSQガーデンに通った。
バスケットボールの試合はスピードが速いので観ている方も息をのみ酸欠状態になることがある。接戦を競う試合の時は、大声をあげ喉も身体も疲れ果てる。

事前にネットでチケットを買う時もあれば、当日券を買う時もある。
当日券を求める人の列の長さを見て諦める時もあるし、待っている人が少なければ寒さの中でも並ぶ。MSGの係の人が「今日はだいたいこの辺までは大丈夫かな」と言う時もあり、自分がその圏内に入っていれば心が浮き立つ。

その日は寒い日曜日だったと思う。午後1時頃からの試合のチケットを買おうと列に並んでいた。すぐ前には小学3〜4年生くらいの男の子と父親が並んでいる。
係の人が来て「今日は難しいかも」と困った笑顔で言う。諦めきれない思いでその場に立ち尽くしていたら、前に並ぶ男の子が、

「ダディ、チケット買えないのに何故並ぶの?」と父親を見上げる。
「うん、時間つぶしだよ」と平然と応える父。

いよいよ今日はチケットが手に入らないとわかると、男の子と父親はゆっくりとその場を立ち去り、私は地下鉄の乗り場へ急いだ。自宅へ戻りテレビをつけると試合はもう始まっていた。

161丁目ブロンクスにあるヤンキーススタジアムへは最寄りの駅から1本で行ける。数え切れないほどの試合を観に行ったが、一度も雨にあたらなかったのは幸運である。

NBAの試合観戦は呼吸を忘れるほど切羽詰まったものだが、野球はゆっくり楽しめる。全体的にのんびりした雰囲気である。

5〜6歳の女の子がちょこんと椅子に座り、親指を下側に向け、”Boo!”と笑顔でブーイングする。まわりにいる大人の動作をそのまま真似ているのが可愛い。その時のピッチャーはヤンキースのエースである。こんな小さい子にブーイングされるのは気の毒に思うが、ヤンキースを応援しているこちらの残念な気持ちを優しいものに変えてくれる。

試合によっては、観客にバブルヘッド人形(首振り人形)が配られる。
その人形が選手の顔にまったく似ていない時があり、飾っても意味があるのだろうかと思うのだが、それもご愛嬌、しっかり自宅の机の上に飾る。

その日中の試合のチケットは知り合いから頂いたもので、普段は座れないような
いい席だった。いつもはグラウンドを見下ろすと目眩がするくらいの高い位置の席なのだが、その時は選手の姿が間近に感じられる席。ヤンキースのキャプテンであるデレク・ジーターのファウル・ボールが頭の上を弧を描くように飛んできた。
背伸びをしてジャンプをすれば触れたかも知れないのだが、それをしなかったことをいまだに後悔している。ボールを取ったところで、グローブを持って待ち構えている子供に譲ることになったとは思うのだけれども。


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