Ground Central Terminal とNew Rochelle

現在のように綺麗に改築される以前のグランド・セントラル・ターミナル、1階のメインコースから西側出入り口に通じる階段を上がったところにBar & Cafeがあった。吹き抜けの天井、窓から入る細くて長い太陽光が落ち着く雰囲気をつくり出していた。

友人と短時間だけ会って話したい時や、アップステート行きの列車の時間待ちには最適な場所。ミッドタウンで買い物をした帰り、アップステートへ行く待ち合わせ場所として何度も立ち寄った。

ちょっとお腹が空いていたら、オイスター・バーのカウンターでクラムチャウダーを食べることもできる。

ターミナルからメトロノース鉄道に乗り30分ほど走るとNew Rochelleという小さな駅がある。

昔、その町に当時のボーイフレンドが住んでいた。駅から車で10分ほどの大きな家に両親、兄夫婦と彼らの1才の子供と暮らしていた。兄夫婦は自分たちの家を買う資金が貯まるまでの同居。緑が多く、小さな湖もある。グランドセントラルターミナルからわずか30分でこんなに静かな場所があるのかと古い映画を思い出させるような景色を楽しむことができた。

玄関のドアを開けると広いエントランスホールがある。右手にゲスト用の豪華な
ダイニングテーブルを置いた部屋、さらにその右奥には皆がTVルームと呼んでいた小さめの部屋、その左奥にはやはり10人用の洒落たダイニングテーブルを置いた部屋。エントランス左側にある大部屋にはソファーセットが2つ置かれていた。
12月になるとその部屋に大きなクリスマスツリーが飾られる。その隣にもソファのある部屋、その奥に使っていない家具を置いている部屋。この部屋は角部屋で大きな窓から太陽が入るいちばん良い部屋なのに倉庫代わり。キッチンにはシンプルなダイニングテーブルがあり普段はそこで食事をする。その隣にはアイロンルームと呼ばれる小部屋がある。2階は両親の寝室、子供部屋、ゲストルームが2部屋。
3階は屋根裏部屋、この階をお兄さん夫婦が使っていた。ベッドルームがひとつ、子供部屋がひとつ、テレビルーム、かつてのメイドさんの部屋。2階、3階のどの寝室にもそれぞれバスルームが備え付けてある。

映画でしか見たことのない大きな家だった。ボーイフレンドの友人が私に忠告する。「この家をアメリカの平均的な家だと思ってはいけない。一般家庭ではこんなに大きな家はめったにないよ」

ボーイフレンド兄弟たちが子供の頃は、祖父母も同居していたとのこと。

数年後、兄夫婦はそれほど遠くない場所に家を買い、両親はフロリダへ移住、大邸宅は売却された。その大邸宅へ行く度に乗ったメトロノース鉄道にはもうずいぶん長く乗っていない。

映画:Fall in love、Unfaithful, Carlito's Wayなど数多くの作品がグランド・セントラル・ターミナルで撮影したシーンがある。映画に映る一コマが一瞬にして懐かしい気持ちにさせてくれる。

住んでいた時には日常の一部だった駅が、今では思い出深い場所になっている。

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