Central Park

* 乗馬

早朝、ジャクリーン・ケネディ・オナシス貯水池周辺を歩いていると乗馬をしている人とすれ違う。颯爽と過ぎて行く人を見ると、女優・Madeleine Stowe(マデリーン・ストウ) を思い出す。映画:リベンジ (Revenge 1990年)で、馬の手綱を持ってトレイルを優雅に歩くシーン。

美しい人が上品に馬に乗って私の横を通り過ぎた時、異空間が微かに交わった感じがした。

* ザ・モール(The Mall)

両側からアーチを描くアメリカニレの並木道がまっすぐに続いている。
初夏には新緑が、秋には紅葉を楽しむことができる。道の端で絵が売られたり、道の真ん中で誰かがパフォーマンスを披露している時もある。

この並木道の途中でトランペットを吹いている50代くらいの男性がいる。彼はいつもおしゃれな帽子を被っている。ハンチングだったり、クラシックなストローハットだったり。演奏している足元に彼のCDが並べられている。

何度も並木道を通っているうちに、お互いに顔見知りになった。演奏中の彼は私に向けて親指を立て挨拶をし、私は笑顔で小さく手を振り返す。たったそれだけのことで、気分がふっと軽くなる。

* ザ・ランブル(The Ramble)

都会の喧騒から逃れ、自然を楽しみながら歩くことができる場所。迷子になったらなかなか抜け出せないほどの森林地帯である。

早朝は散歩する人も少なく空気も清々しく感じる。土の感触を感じて歩く。風が強い日は枝がしなり葉がざわざわ揺れる。水のせせらぎ、鳥の鳴き声。岩や丸太橋、池のまわりに咲く花、美しさを感じてただ歩けば瞑想になり癒やされる。

バードウォッチングのグループは足音を忍ばせて、息を潜めてカメラを向ける。
鳥が羽ばたき、枝葉が揺れる音。「あ〜」と静かな溜息が漏れる。

* ボウ・ブリッジ(Bow Bridge)

Central Park でいちばん美しい橋と言われている。COVID-19で行動が制限されていた時期、散歩と買い物に出かけることはできた。人もまばらな早朝にその橋を渡ろうとした時、反対側からひとりの若い女性がこちらに向かって歩いて来る。ストリートですれ違う時もお互いが相手をあからさまに敬遠する時期。彼女は自然な仕草で私の目を見て”Good Morning”と声をかけてくれた。それまで当たり前のように思っていたその言葉が心から嬉しく、硬くなっていた心が和らいだ。

* グレート・ローン(Great Lawn)

毎週末のように少年野球が行われる。未来のMLBプレイヤーたちの真剣な表情。
可愛らしい少年たちの掛け声の中に、いちばん真剣な監督の声が響く。

ここで毎年夏にフリーのコンサートが行われる。ビリー・ジョエル、アリシア・キー、ジョン・メイヤー、グウェン・ステファニー、スティング、クイーンたちの生の演奏と歌声を聴けたことは素晴らしい幸運。公演前日に行われるリハーサル、演者たちは本番同樣に数曲演奏し歌う。観客は入っていないし、そこにいるのはごくわずか。たまたま公園に来ていた人たちは足をとめ、ステージ近くまで行って楽しむことができる。こういうところ、アメリカは寛容である。邪魔さえしなければ好きなだけ聴いていても何も言われない。

セントラルパークは、春夏秋冬、どの季節も美しい。
人が楽しめるようにつくられた最高の公園である。

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