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渡辺 尋志   桜井さんのこと#1

私は桜井先生とは普段から呼んでおりませんでした。「桜井さん」でした。私が学生時分は桜井さんは桑沢デザイン研究所の先生でした。その授業の無い日に造形大に通って作品づくりをしていました。夏も冬もどんな時でもコンスタントに作品づくりをする姿は私も他の学生にも尊敬の存在でした。新制作の作品造りは得てして春から夏のイベントのように始めるのが当たり前の造形大学石切り場において桜井さんは春先に作品が出来上がり磨きの終わった石に汚れが付かないようにブルーシートをかけていました。「今年の制作がもう終わったのですか?」と聞くと「今年のは去年出来てるよ。これは来年のだよ。」とにっこり笑うのが常でした。そういう方でした。

大学卒業して数年後、誰か(教授のだれか)から電話があり、「福島へ石を買いに行くなら桜井さんを車に乗せていってほしいのだけれど・・・桜井さんちょっと車を運転できないので・・・」詳細が分からない私は「いいですよ。」ということで福島の浮金石を買い付けに出かけました。その帰り道国道49号線をいわき方面へ向けて走っているところで「桜井さん、この道沿いの川で釣りをしてもいいでしょうか?」と釣好きの私は無理やり誘っ河原におりて竿を振り「桜井さんもやってみますか?」と誘うと「いや、見ているから気にしないで。」とにこやかに答えるのでした。1時間ばかりお付き合いいただいて帰宅の路に町田に送り届けて(私もその当時町田の鶴川に住んでいました)帰宅したことが懐かしく思い起こされます。

                        20190926 渡辺 尋志

↑浮金山 お世話になった石工屋さんから写真提供

↓造形大学石切場

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