田んぼの畦はカバープランツのタネの宝庫でした。春に眠りから覚めた野花たちについて。
こんにちは。
めぐりファームの金澤裕子と申します。
富山県東部入善町で農薬・化学肥料を使わずにお米、野菜、ハーブなどを栽培しています。
農業に出会ったのは2013年。富山市から入善町の夫の実家に入ったと同時に田んぼの手伝いを始めました。何もわからない自分に義母は作業について色々教えてくれました。
そして義母に言われるままに早春の田んぼの畦に除草剤を散布しました。
畦にうっすら生えていた若葉が数日のうちにしおれ、茶色に変わりました。
農村を知らなかった私にとってはそれがとても異様な光景に見えました。
早春の若葉が芽吹き始める季節に土がむき出しになっていているのです。
田んぼは自然を楽しむ場所ではなく米という食べ物を効率よく育てるために整備された場所だとその後何年もかけてやっと理解することになるのですが、当時、田畑=自然豊かな場所と思い込んでいた私にとっては過剰な行為に見え、胸を押し潰されるような光景に見えたわけです。
農業は殺生の連続です。
中干しといって、根を痛める土中のガスを抜くために一時期田んぼの水を抜くのですがそれによってたくさんのおたまじゃくしが固まって干からびて死んでしまいます。
トラクターで田畑を起こすとミミズやオケラなどの昆虫が地表に投げ出され、鳥たちの格好の餌になります。
現場にいるとだんだんそれが普通のことになり、特に忙しいと気にかけることもなくなります。
カエルが農薬で死んでいるのを見たことが就農のきっかけでした。
周辺の動植物を極力傷つけない農業が成り立つのかやってみたいと思いましたが、農薬や化学肥料を使わなくても限界があると感じました。もしくは農業にかかわらず生活しているだけでどうしても傷つけてしまうのです。生きることにはそういう側面があることを受け入れざるを得ませんでした。
(ヘビイチゴ)
2018年に立ち上げためぐりファームでは、農薬・除草剤不使用・肥料は極力使用していません。肥料は農園から出た、米ぬかや籾殻・野菜の残渣、近隣の山や林の落ち葉、腐葉土を発酵または熟成させたものを中心に使用しています。
畔への除草剤散布はそれ一度きりでやめ、その後は全て草刈り機で対応することにしました。
草刈りは大変です。
特に夏草は生えるのが早くて、雨が降れば3日もあれば15センチくらいすぐに大きくなります。
それを30度、時に35度を超える炎天下で防具をつけて行うと熱中症になることもあります。
草刈りをしない田畑は近隣の住人や農業者に歓迎されません。害虫の住処になると言われます。地域が荒れているように見えます。
また、草が伸びすぎると作業の妨げにもなります。
小さい水路が張り巡らされている田んぼでは畦に草が生えすぎると水路が詰まりやすくなったり作業中に水路が見えないと怪我にもつながりやすくのでやはりある程度は草刈りしないといけません。
(ムラサキサギゴケ)
大雪で始まった2021年。
暖かくなってきてもカエルの鳴き声があまり聞こえません。
(異常気象の一つなのだろうか?)
4月も中旬になりそろそろ1度目の草刈りをしなけばいけないのだけど、
いつになく若草のあまりに美しい生命力に引き込まれなかなか手をつけることができませんでした。
毎日一つ一つの草花に目を向けていると、その中にそれまで見たことがない野花を畦に見つけました。
(小茄子)
これは小茄子という植物です。
毎年顔を見せてくれる、タンポポ、シロツメクサ、ムラサキスギゴケ、ヒメオドリコソウなどもたくさん花を咲かせていました。
多くの植物が入り乱れ、野花が咲き乱れる草原に見えました。
草丈が短くカバープランツとしても有効な植物が多く見受けられました。
また、スギナやドクダミ、よもぎなど薬効のある植物も生えています。
(ユウゲショウ)
2021年春に当農園で見かけた草花です。
オオイヌノフグリ
シロツメクサ
たんぽぽ
オオバコ
カラスノエンドウ
よもぎ(オオヨモギ・カズサヨモギ)
すぎな
セリ
ドクダミ
小判草
ツルマンネングサ
ステラリア・アルシン
小茄子
スミレ属の一種
オニタビラコ
カラスビシャク
大スズメの帷子
夕化粧
ヘラオオバコ
ヒメオドリコソウ
ヘビイチゴ
ムラサキサギゴケ
ノハラムラサキ
セイタカアワダチソウ
ヒメジョオン
(きっともっとあると思います。)
草刈機や除草剤がなかった時代に畦はどんなだったか見たことはありませんが、畦に残っていた草花の種から、かつての農村の春は色とりどりの野花が咲き乱れる、薬草や食卓に並ぶ野草がいつもどこかに生えているそんな場所だったのではないかと想像しています。
(ノハラムラサキ)
田植えの前に必要な場所は草刈りをしました。
また、背が高くなる植物は抜いたり刈ったりしています。
このやり方で夏草にどこまで対応できるかわかりませんが様子を見ながら草たちと付き合っていきたいと思っています。
農村の豊かさは、身近な自然を気軽に生活に取り入れられるところにあると思います。農村に来て8年目、野花に癒されまた有用な植物を利用する農村の生活が始まりました。
関連する論文を見つけたのでリンクを貼ります。
「水田畦畔に成立する半自然草原植生の生物多様性の現状と保全」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vegsci/31/2/31_193/_pdf
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