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患者さんが未成年でも、「子ども扱いしない」

整形外科には中高生のスポーツ傷害の患者さんも多く来院されます。初診時であれば特に、そういった未成年の患者さんには保護者の方が一緒に来院されることが多いです。

外来で診察の様子を見ていると、色々な親子関係が見えてきます。

中には医師が症状などについて患者さんに質問をしても、本人はほとんど口を開かず、代わりにノンストップでしゃべりまくるお母さんも・・・。

「本人は絶対に関係ないって言いはるんですけど、痛みが強くなったのは木曜日の体育で全力で走ったせいではないかと思ってるんです。やっぱり体育なども全部休ませたほうがいいですよね?」

こういうときにご本人の様子を見ていると、「もう勝手にしてくれ・・・」って感じの、半ば呆れたような表情で、めんどくさそうに(笑)黙って座っていたりします。

あまりにも本人が何も言わない、何を聞かれても毎回、まず親の顔を見るような様子だと、一体誰が、誰のために治療を受けに来られているのだろうか・・・?と思ってしまうこともあります。

よくあるのが、15〜17歳くらいの、スポーツをやっている男子。

まぁ医師を前にして、さらに数人の大人が注目する中で、自分の症状や今後の予定などについて、きっちり上手にすらすらと説明するのは難しいにしても、ひとつひとつの質問に、ひとつひとつ答えることはきっとできるはず、と思います。

痛みが出だしたのはいつから?とか、これまでこういう症状出たことある?とか、ポジションは?次の試合はいつ?とか、実際そんな大して難しいこと聞かれないですからね(笑)。

特に、こういう「親御さんがご本人を押しのけて(すみません、笑)グイグイくる感じ」の親子で一番気になるのは、本人がそういう流れにもう慣れてしまって、自分の身体に関することなのに、自分で考えて他者に状態を伝えたり、専門家が説明したりアドバイスしてくれることを「自分がちゃんと聞いて、理解しよう」という自覚に乏しくなってしまうのではないか、ということです。

いくら自分のことが議題に挙げられているからといって、会話にほとんど参加できていなかったら、医師が一生懸命説明してくれている話も「自分ごと」として捉えづらいのではないかと思うのです。

もちろん、お子さんに任せちゃうのが心配な親御さんの気持ちもわかる気はします笑。

でも!

自分の言葉で説明するのも、質問に答えるのも、聞きたいことを聞くのも、やっていかないとうまくならないのです。

医療機関の受診に「大失敗」って、別にないと私は思います。

もし絶対にやってはいけないことがあれば、医師のほうからちゃんと説明されるのが普通です。逆にいえば、よっぽど特殊な状況でない限り、ダメって言われてないことはやってもよいと思っていていいのではないでしょうか。

実際、患者さん側が「大事なことを聞きそびれた!言い忘れた!」って思うことが、本当に超・重大なことであることってほとんどないように思います。

絶っっ対に!言わないといけなかった、とても重要(と思われる)ことを、もしお子さんが聞き忘れてしまい、どうしても聞かなければ気が済まない!!のであれば・・・・電話していただければ大丈夫です。笑

(そして責めないで、人生はみんなトライアンドエラーです。)

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一方で、親も一緒に来ていて年齢的にはもっと若くても、医師の顔を見て自分でちゃんと受け答えできる子もたくさんおられます。

以前、とても感心したのは、13歳の患者さんご一家の様子。

医師の診察のあと、簡単な書類の作成と説明のために別のスペースで看護師が個別に患者さんと短時間の面談をする場合があります。

ご両親と患者さんが待っておられる場所のすぐ前の部屋からお名前をお呼びしたところ、お母さんもお父さんも一緒におられましたが、さも当然のように患者さんご本人だけが立ち上がって、ひとりで面談に使用する部屋に入ってこられました。

呼ばれたときに患者さんは親の様子を伺う素振りもなく、ご両親も一緒に行くべきかちょっと考えたり、「あなただけ行きなさい」と声に出したりすることもなく、親も子も文字通り"当然のように"「はい」と返事をして、13歳の患者さんご本人だけが面談に来られました。

その様子を見て、きっとこのご家族は、普段からこの子本人に自分自身のことは任せているんだろうなと思いました。

別にほったらかしというわけではなく、もしここでご本人だけでは困るようなことがあれば、扉をあけてすぐ前で待っておられるご両親に声をかければいいだけですからね。

もちろんこの場面だけで全てがわかるわけではありませんが、親も子もお互いへの信頼が強いんだろうな、という雰囲気が印象的でした。

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私自身は子育てをしているわけではありませんし、よそのご家庭の教育方針に口出しする意図はまったくありません。

ただ、なんらかの症状を抱えて医療機関を受診された患者さんご本人には、少なくとも自分自身の身体についてちゃんと興味を持ってほしいし、感じていることや考えていることを言語化したり、診断や説明をちゃんと聞いて理解しようとしてほしいなと思うのです。

たとえその方が、未成年やご高齢であっても。

なので、私は小児の患者さんをレントゲンに案内するときなども、親御さんとご本人両方の顔を見ながら場所を説明し、なるべく患者ファイルは患者さんご本人にお渡しするようにしています

また、よっぽど小さい子の場合は威圧感しか与えないと思うのでそこは臨機応変ですが、未成年の患者さんであっても基本は敬語でお話しします。「子どもだと思って舐めてないよ」というのを態度で示したいからです(伝わってると思いたい)。

ただ、クソ丁寧すぎるのはただでさえ慣れない場に来て多少の緊張感を抱いているであろう相手の警戒心を高めてしまうと思うので、説明は敬語でも問いかけの言葉づかいはちょっと崩してバランスをとることが多いですけどね。

困ったときはいつでも来てくださいね。
わからないことがあったら、遠慮せずになんでも聞いていいですからね。

それこそアスレティックトレーニングルームのスタッフのように、"We are always here for you."という気持ちで、患者さんが自分の身体と向き合い、よりよい生活を送るための、よい相談相手となる施設であれたらいいな、と思って日々診療の補助をしています。






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