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リーダーにマネジメントスキルを求めてはいけない

「リーダーシップ」と「マネジメント」は全く違う。

先日、仕事仲間と話していたこと。彼曰く、日本はマネジメントスキルが評価される社会になっていない、と。

一般企業の多くがどのようにマネジメント人材を評価しているのかはわからないが、特に医療機関においては、マネジメントを学んだ人やマネジメントスキルがある人が管理職に就くわけではなく、多くの場合はプレイヤーとして結果を出した人が昇進して管理職になることがほとんどではないだろうか。

いや、プレイヤーとしての臨床スキルが評価されて管理職に就くだけでなく、実際は能力の是非に関わらず、ただ長く勤続している人が年功序列的に上のポストに就くことが多いのも事実だろう。そういうところが、医療業界にはびこる闇の一因だろうなと思う(前職でも思い当たることが多々ある)。

臨床家としてリーダーシップを発揮できるくらいのスキルがある人が役職に就くのであれば、せめて何らかのマネージャー研修くらいは受けてもらうシステムになっていたほうがいい。

人を管理するのって、個人の性格や考え方やセンスでどうにかできるスキルではないし、そういう個人の感覚でなんとなく管理される部下は不幸でしかない。上司になった人が管理職としての教育を受けていなくてもたまたまマネジメントの才能を発揮してくれたら幸いだけど、こんな抜擢の仕方ではそうでない確率のほうが高いかもしれない。

ただ実状として、人から尊敬される現場スキルがあるわけでもなく、長く組織に属して歴史を知ってるわけでもない人が、マネジメントに向いているからといって現場のトップの立場に立ったとして、メンバーの心情的にも納得できなかったりすることは容易に想像できる。だからやはり医療現場のような環境においては現場の中で一番「上に立っても違和感がない人」が管理職に就いていく、という流れが無難なのかもしれない。

スポーツのチームでは、GM(ゼネラルマネージャー)という立場の人がいる。ざっくりいうと、チームで一番偉い人である。ヘッドコーチやヘッドアスレティックトレーナーをひと言でクビにできるくらいの権限を持っている。GMは、選手に技術指導をしない。それはコーチの役割だからだ。GMになる人は、必ずしもそのスポーツのプレイヤー経験を持つ必要はない。米メジャーリーグのGMにはMBAや弁護士のバックグラウンドを持つ人もいる。マネジメントのスキルと、実際フィールド上で活躍するスキルは全く別なのだ。

よき現場のリーダーが、よきマネージャーであるとは限らない。これは誰でも経験上、なんとなくわかってることだと思う。

でも、私が先日の会話で理解したのは、リーダーがマネジメントをできないことが問題なのではなく、マネジメントをする立場の人が不在なのが問題だ、と考えることができるということ。

確かに。リーダーが、「なぜもっとちゃんとマネジメントしないのか?」とマネジメントスキルまで求められることがそもそも違う、と。なぜなら、その人はリーダーであり、マネージャーではないからだ。リーダーとは別にマネジメントに専念する人材が本来いるべきだ、と考えるほうが妥当なのかもしれない。

強力なリーダーシップはあるが、全体を見渡して内部構造を整える視点とそのための行動をとれるマネジメント人材がいない組織は、なんとなく大きくなったけど全然内情が追いつかなくて、色々なところで問題や不満が多発しても組織としてはなんの対策を打つことができず、人の出入りが激しくなって実質的に空中分解するのか、それともどこかで本腰を入れて組織を整えるための施策を打てるのか、でその後の運命が決まっていくのかもしれない。

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