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切り絵。踊り。こどもたち。

私は、12年前、突如切り絵を始めた。それまで、特に自分で描くこともしてこなかったし、むしろ苦手な分野だと思っていた。なんで急に切り絵を切り始めたのか。わたしにとって、切り絵はなんなのか。

いま、改めて、想いを向けてみたい。

その時、私は【乳児院】という、特殊な場所で働いていた。小さないのちが、一生懸命に生きている場所で、わたしには何が出来ているのか。
できることなんてないのではないか。
いのちは、生まれてくる理由があって、決めてやってくるというけれど。
母は、家族は、産んだからってそれでいいのか。
2歳までここで育て、そのあとは?
そのあとは、元気に過ごして行くのだろうか?

それぞれの事情がある。今ならわかる。離れなくちゃいけない。離れたことで守られるいのちもある。それだけでも、本当に、奇跡のようなことだと思う。だけど、そうはわりきれないいろんな想いが渦巻いていた。

こどもたちとの日々は、可愛くて、楽しくて、でも、毎日祈りを捧げながら、過ごしていた。

その頃、家から職場までの一時間以上を、まるで修行僧かのように、自ら選んでひたすらに歩き、歩き、歩き続けて通った。
朝の五時半の朝焼けや、冬のぴーんと張った真っ暗な夜空や、川の流れや、そういう自然物の美しさに、心を救われ洗われていた。

いろんな想い、いろんな祈り。
内側にたまって。たまって。たまって。
気づかないうちに、私の体に満ち充ちてて。
あるとき、【音】をきっかけに溢れだした。

ぶわぁーーっとイメージが鮮明に沸き上がり、私はそれをどうにかして、この世に、作り出さなくてはいけない想いにかられた。

そこらへんにあった紙を手にとり、描き、切り、張り、キレイな青空と太陽の写真に重ね、そのとき思い浮かんだ【祈りの言葉】を描いた。それは、【英語で。筆記体のようなもの。古い書物の感じ】という指示。初めて切り絵を切ったときのこの感覚は、忘れない。指示がやってくる。次はこう。あそこにあの紙がある。髪はもっと、濃い茶。服の色は。。という調子で、細かく。

出来上がった子をみて、漠然と想った。【あぁー。きっと、修道院にいたことがあったなぁ。。。わたし。】

前世がほんとはどうだったか知る由はない。
幼い頃に読んだ小説や、平和運動に熱心だった母の影響を知らずに受けたのかもしれない。 
ただ、この命には、確かに、ずっとずっとずっとずっと前から巡って、繋がってきた血が記憶していることがあるのだと思う。人類の進化や記憶は、個人ではなく、【人類】として、アップデートされていて、だから、痛みや古い傷や、父や母や祖父母の悲しみとか、はたまた人類の。女性の。こどもたちの。想いも、きっと、ここの【血】には眠っていて。

内側の祈りを外に出す方法として、切り絵がぴったりだった。真っ黒な一枚の紙を、削ぎ落とすことで見えてくる光。カタチ。美しさ。

闇から光へ。

それから、切って。切って。切った。   
夜は寝ないで切り通すことも多々あった。

そして、【音】も重要だった。      

【音】は、からだに直接働きかける。
音に任せて、ひとり踊った。体が自然と動いた。
どこまでも、柔らかく、どこまでも自由に。
不思議な感覚だった。
からだと、まわりの空気の境目がなくなって、やわらかに。やわらかに。体が動いた。

人間の体は、水分で、その【振動】を受けて、いろんなことが起こるのは、不思議なことじゃない。
あの時期、わたしは、それぞれの音に、色があると感じて、音を色に落とすこともしていた。

無我夢中で作りまくった作品は、音楽と踊りと香りと、美味しいごはんやパンが食べられることがセットで、作品展を各地で行った。
【五感で感じる】は、大切なテーマだった。

さらに、【ゆきちゃん、その人の紋様、切れるよ。深く考えないで、そのとき、想ったまま切って、浮かんだものを伝えるといい】と、友人が言ってくれたことをきっかけに、一気に100名切らせていただき、イベントなどでもたくさん機会を頂き、ご縁が繋がっていった。

乳児院をやめて、紋様旅、屋久島往復、トマムでの私の持てるもの全てをフルで使って生きた3ヶ月。
夢の屋久島での仕事を3日でやめて、スペインの友人と屋久島の自然のなかで思い切り遊んだ数日間、戻ってきてからの保育園での保育士と切り絵の日々。結婚。出産。離婚。シングルマザーとして、ひとりで育てて行く道のなかで感じること。岩手まで幼い娘を連れて、セドナのユークアラさんに会いにいき、そのワークショップで【リーダーとしての自信と誇りを取り戻す】感覚を手にしたのち、劇的な展開で一週間で主任になり。。。

2019年、突如、しばらくしていなかった【あなたの紋様】を再開、百人の紋様展を開催。
数年ぶりだというのに、紋様は行く場所を決めているかのように次々と切り出されていった。

100名さまに切らせていただいた紋様はその全てを北海道東川の素敵な会場に飾らせていただいた。
一日限りの紋様展。
ひとつひとつの紋様が本当に美しくて、キラキラしてて。場が満ち満ちた。

会場では、こどもたちが走り回り、ぴったりのタイミングでスペインから来道していた友人のピアノがぽろんぽろんと響き渡り、自由に作品を楽しむ人たちがいて。夢みたいな空間だった。

友人は数年経て、ギタリストからハンドパン奏者になっていた。より、宇宙や星や水の振動を感じる音になっていた。
全てを感じて、包んで、美しい世界が広がった。

私にとって、切り絵は、【祈り】なのだと思う。

深く静かに潜る場所。

次は、あなたの紋様と虹色の女神についてもう少し。





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