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【読書記録】井上荒野さん『ホットプレートと震度四』淡交社

今年のゼリーモールド
ピザカッターは笑う
コーヒーサーバの冒険
あのときの鉄鍋
水餃子の机
錆び釘探し
ホットプレートと震度四
さよなら、アクリルたわし
焚いてるんだよ、薪ストーブ

どの話も一つのものと思い出が深く結びついていて、特に好きなのが「あのときの鉄鍋」。
大学生時代の友人 大槻 湊が亡くなり、還暦を迎えた懐かしいメンバーで、湊の家へ形見分けに集まる。思い出の中の湊は、相変わらず静かに笑っている。三千枝は最後に湊と会ったときのことを思い出していた。あのとき、もう一つの人生があったのだろうか。

人生をある程度過ごしてくると、ふと後ろを振り返ったときの分岐点の多さに慄く。
もし、あのとき、あの電話に出ていたら。
あの交差点で立ち止まっていたら。
ほんの少しの差で、今と違う人生があったんだろう。
それが幸せなのか、不幸なのか。
ああ、でも、戻れないからこそ、甘く思えるだけなんだろう。

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