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【読書記録】正義をふりかざす君へ

人が生きていく中で、これは許せないというもの、これだけは守りたいというものが生まれる。
私は、約束するのが嫌いで、出来るだけ一人で行動したい。どんなに楽しいことであっても約束するだけで、3割やる気が下がる。
でも、そんな私を許せない人もいる。一人で勝手に行動する私は仲間から外れがちだし、仲間と行動することを重視する人から見れば、私は「勝手な行動をする人」になる。

「正義」という言葉ほど、曖昧なのに力を持っている言葉はない。正義と決めてしまえば、許されることの範囲が急に広がってしまう。そして、状況が変われば、簡単に正義の位置付けが裏返ってしまう。その危うさを分かっているからこそ、正義を名乗るものは声高になる。

そんなことを考えながら読んだのが、
真保裕一さん『正義をふりかざす君へ』

このタイトルを見たとき、ドキッとしました。
「ふりかざす」って暴力的ですよね。
「語る」ではなく、「ふりかざす」。
なんとなく、報道絡みの小説かなぁ、なんて予想しながら、読み始めました。

棚尾市にあるホテルで起きた食中毒事件。
当時、そのホテルの幹部だった不破勝彦は、事件の終息を見ないうちに、仕事を辞め、離婚し、故郷である棚尾を離れていた。
そんな不破の元に、別れた妻から「助けてほしい」と連絡が届く。
裏切り者と言われてきた自分に、なぜ助けを求めたのか。
疑問を胸に、不破は7年ぶりに故郷へ戻ってくる。

出来事の裏の裏を読んでいくような感覚で、「私、こんなことまで考えて、生きてきたことないなぁ」と感嘆しながら読み終えました。

「正義」って一つではないし、変わっていくし、じゃあ、何を信じればいいんだろう。

結局、自分から見た世界しか分からないのだから、自分の感覚を研ぎ澄ませていくしかないのかな。
自分がやりたいこと、大切にしたいことを、ひたむきに生きていく。
周りの人も同じように、その人なりの大切なことがあることを理解して、尊重していく。
そうやって、ある程度の距離を保ちながら、個人として生きていく世界が、住みやすいのかなぁ。

真保裕一さん『正義をふりかざす君へ』徳間書店
2013年6月30日初版

2022年6月読了

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