時速4キロ未満。ベテルギウスへの旅

思い出は色褪せない。

むかし、むかしの話。

地方都市のまた、その周辺で生まれ育った。つまりはけっこうな田舎ということになる。自宅から小学校への通学路は徒歩10分。とても近い。大手町駅の東西線から丸の内線への混雑した長距離乗り換えに比べれば、平坦な田舎の通学路なんてミジンコの喧嘩のような微小の世界だ。小数点以下5位四捨五入でゼロの世界観。でも小学2年生の足ではレイキャビクのように遠かった。絶望的に遠い。いまなら歩いて100往復しても平気だけれども、小学2年生の脚力ではレイキャビクどころか、ベテルギウスぐらいの遠さであった。

その小学校への通学途上にある高校(これが未来に通学する高校になったが。。。)

ある雨の日。傘を忘れ、雨に打たれながら地球とベテルギウス間を時速4キロ未満で移動途上、傘をさした女子高生から入らない?の一言。あの女の子からは小さな小学生が雨に打たれていることが不憫に思えたのだろう。かわいすぎた小学生は、逃げる。嫌だといって。なぜかそのときは意味もなくいけないことのように思えた。

あのやさしさを受け止められれば、また違った人生を歩めていたかもしれないと、今なら思う。

傘に入れてもらえばよかった。

今は立派なおばあさんになっているのかもしれない、おねえさん。何気ない女子高校生からの一言だったけど、なぜか今もときどきあの光景を思い出す。セピア色ではなくしっかりとした天然カラー色だ。

ありがとう、お姉さん。いまでもあの気持ち忘れていないよ。声をかけてもらった感謝の気持ちを。

感情は色褪せない。

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