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ぼくらがなぜ「入管」に怒っているのか知ってほしい シリーズ1 「入管」は人の命を大切にしない!

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この件はニュースで見た人も多いと思うし、亡くなって2ヶ月近くが過ぎた5月1日現在でも、十分な医療が提供されていなかったことを示す情報や、遺族の怒りの声などが新たに伝えられている。すでに似た趣旨の記事は無数にある。

しかし、

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そんな経緯から、亡くなった方を他人とは思えない自分がいる

彼女を自宅に迎え入れる予定だった支援者(支援団体には所属していない:以降Mさんと記載)から、私が絵や文章を書くことを前提に、この事件を世に知らせる運動を何か一緒にやろう、と持ち掛けられていた。

私としてもMさんが面会していた人が亡くなったという衝撃は大きかったので、何かしたい気持ちはあった。しかし、亡くなった方や遺族への配慮を欠くことはしたくないという思いが強く二の足を踏んだ。また、生前の病状や入管の対応の悪さはMさんから聞いてはいたものの、私自身が面会したわけではないのに、何が書けるだろう?と考えもした。

そんな中で、彼女の死亡事件とは別に、政府与党や法務省が入管法を改定して、入管の力を今よりさらに強めようとする動きに対する反対運動が活発化してきた。私も支援者として、入管法改悪反対!の声を上げていくつかの運動に参加している。

そして与党法案の内容のひどさ(これについては別の回に書く)や、名古屋入管での今回の死亡事件への対応の杜撰(ずさん)さ、そして法務大臣や入管幹部の誠意のない対応遺族の怒りなどが聞こえるようになると、私の考えは少し変わった。

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入管に収容されている人の死亡事件、自殺は過去に多数ある。入管は「お悔み」などを口にするが、体制はほとんど改善されていない。

この現状を、自分なりに文章を書いて伝えることはできないか、と考えるようになった。

私の支援歴は3年程度、諸先輩方に比べれば長いとは言えず、何が書けるか自分でもよくわからない。

しかし、情報提供を続ける先駆者がいたからこそ、私も入管行政のひどさを知って、無視できないという気持ちになった。

入管行政のひどさは、多くの人が知らないからこそ横行している側面もある。外国人に対して偏見を持つ人であっても「病気の治療をせず見殺しにしていい」と思う人はほとんどいないはずだから。

そんな経緯から、私も絵と文章で、入管行政のひどさを伝えようと思い、「ぼくらがなぜ「入管」に怒っているかしってほしい」というシリーズを始めることにした。

私自身、法的なことや入管の歴史などを熟知しているとは言えず、勉強しながら書くことになる。それだけに、わからない人の気持ちに沿ってかけることがあると思う。

先駆者の文章、報道情報を引用することもあるが、基本的に引用元は明記する。

その一方、単なる「まとめ記事」にならないように、自分自身の支援体験や、自分なりの検討・考察を盛り込みたい

また、仮放免者の医療費の募金活動もしているので、その呼び込みもすると思う。とにかくなるべく正直に書くので、読んでいただけたら嬉しい。

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1)落ち度がある人だからと言って、治療を受けられないのはおかしい!

入管に収容されているのは、日本の滞在許可がない人。その点について書いた記事があるので、ぜひ読んでいただきたい。

→「「仮放免」という立場のRさんが脊柱管狭窄症で苦しんでいる件」


今回亡くなったスリランカ人女性も滞在許可が切れていたのは事実らしい。

しかし

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入管は在留許可がない人に対して、送還(ほとんど自費で帰らせる)か、または全件収容という姿勢を取っている。

全件収容自体が人権への配慮が無いということは別の記事で書くが、仮に収容するとしても、体調が悪い人に医療を提供するのは人権上当然のことだ。

入管自身も、被収容者の健康管理を行うことは明言している。

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上記は以下より引用

http://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/tetuduki_taikyo_shisetsu.html


入管は医師の常駐を明言しているが、今回、スリランカ人女性が亡くなった日には医師は収容場内にいなかった。それもこの日だけのことではなく、土日祝と夜間に医師がいないのは常態化しているのだ。この時点で入管が言う「医師及び看護師が常駐」というのは実行されていない。

医師がいないことを前提として、職員が健康状態をチェックして、異常があれば外部の医師に相談したり救急車を呼んだりできるシステムはある。

しかし、今回そのシステムは全く活かされなかった。

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https://mainichi.jp/articles/20210421/k00/00m/040/315000c

このように適切な医療を提供しないのは、名古屋だけでなく入管全体の悪習となっている。

そもそも今回亡くなったスリランカ人女性は1月からすでに体調を崩しており、本人も支援者も何度も医療の提供を要求したのだ。

何度か話が出ている、スリランカ人女性に面会していた知人Mさんは、介護の資格と業務実施歴があり、過去経験に基づけば、スリランカ人女性はすぐ救急車を呼ぶ健康状態にあったと話している。そしてその経験や判断の根拠を入管に話し、点滴や入院を申し出た。

Mさんは医者ではないから、全ての指摘が適切だったかはわからない。とはいえ弱った人を直接見てきた経験を持って意見を上げた。それは、命は失ったら取り戻せないという当たり前の考えからだ。

状態が悪ければより専門性的機関に相談する、とにかく命を守ることを優先する、それは医療の基本だろう。しかし、入管はそのような考え方を持っていないように見える。さすがに殺すつもりはないのだろうが、被収容者が体調不良を訴えてもまず詐病を疑い収容という管理(または支配)を優先する、そういうマインドがあるのだとしか思えない。

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https://www.tokyo-np.co.jp/article/100892

ちなみに医療放置による死亡事件は今回の件だけではない。

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2014年、東日本入国管理センターでカメルーン人男性が死亡した際も医師が不在だった。この男性は亡くなる2週間前に体調不良で診察を受けているし、亡くなる前日と当日に激しく苦しむ様子がカメラに記録されている

つまり入管は体調不良の兆候を理解したうえで放置していることになる。この2014年の死亡事故の後、法務省は医療体制に問題があったと発表しているが、それから7年たった現在も不適切な対応によって死亡事故が起きているのだから、状態は全く改善されていないということになる。

ホームページの記載が実行されていないことを重箱の隅と笑う人もいるかもしれない。しかし、人命軽視はそういうところに現れていると私は思う。

https://www.asahi.com/articles/ASKB265HYKB2UBQU019.html

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そもそも入管側の人命や人権を軽視する傾向が変わらなければ、医師がいても大きくは改善されないだろう。とは言え、国家が運営する機関としての建前は少なくとも存在するはずだ。

それでも医療体制がまったく改善されない現状を見れば、根本的に被収容者の命を守ろうとする意志が薄いか、あるいは組織として無能であるかまたはその両方か、と言う以外ないのではないか?


さらに言えば、収容場内の健康状態を入管職員と話すとき、「彼らが帰国すれば解決する」という意見を聞くことが多い。私は職員らが被収容者を病気にして苦しめようとしているとまでは言わない。しかし、「帰国か収容か」という圧力が被収容者の大きなストレスとなり、体調不良を促進しいることは容易に想像できる。

帰国できる人は苦しい収容に耐えることはなく、すぐに帰るのだ。だから帰れない事情がある人ほど収容が長くなり体調を崩す。

自分の人生の行方に、迫害や死、家族との別れ、苦労して築いた生活基盤を失うことが待っていると思う時、誰もが絶望して気力を失うだろう。それに変わる措置が無限に続く収容しかないと思えば、ストレスで体調を崩すのはむしろ当然ではないか。

そういう意味で「全件収容主義」の中に体調不良は組み込まれていると言える。つまり根本的には、長期収容者に対しては在留許可を出す以外の解決はないのだ。


もう一点、加えておくが、東日本入国管理センターに2014年の死亡事件以降、医療体制はどのように改善しようとしたかと問い合わせたが、明確な回答は得られなかった。保安上の理由などで回答できない理由があれば入管はそのように答えるので、今回は回答拒否ではない。検索しても資料にたどり着けなかったのか、そもそもそんな文書データがないのか、どちらかであろう。


2)そもそもスリランカ人女性を収容する必要はあったのか?

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ここは報道等から見た私の推測に過ぎないが、DVや金銭搾取の結果、在留許可を無くした可能性がある。しかし、入管や警察は在留許可が無いことだけに着目して収容し、帰国を迫ったのではないか?

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これは入管が持つ「滞在許可を持っていない人間は危険であり、管理対象でしかない」という短絡的な思考が生んだ問題ではないのか?

警察や入管が行うべきだったのは、事件の調査解決ではなかったのか?

当初は彼女は帰国を望んでいたようだが、帰国後にも暴力を行使するような脅迫文を受け取っており、帰国を拒否するようになった。

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ちなみに、今回は死亡事件となったので大きく報道されているが、入管が適切な医療を提供しないことは常態化しており、これに関する記事も多数存在する

これは一時的、局所的なことではなく、日本のすべての入管収容場でしばしば起こっていることだ。

疑問に思う人は、ぜひ支援グループに連絡を取って、面会に行って見てほしい。(相手の国籍や名前がわからなければ面会はできないので、突然行って誰でもいいので面会したい、ということはできない)

何人かの話を聞けば、医療体制が十分とは言えないことはすぐにわかると思う。

収容に至る経緯は個々に差があり、共感や納得はできないこともあるかもしれないが、長期収容されている人の多くが体調不良で苦しんでいることは理解できるだろう。

また、「この人は本当に収容が必要なのか?」、「事情を汲むべきではないか?」、と思うケースも少なくないだろう。

多くの人が知れば、放置して良い問題ではないことがわかる。

また、入管の問題に触れれば、多くの人が人権とは何か?と考えることになる。それは私たちがこれから生きやすい世界を作るためにかならず役立つと私は明言する。


3)今回の記事の趣旨をまとめる

どんな経緯があっても、落ち度がある人でも、医療を提供せず死なせて良いはずはない!

・入管は収容している人に適切な医療を提供しない悪習を持っている。これは滞在許可を持たない人に対して、支配の意識が強く、まず詐病を疑うことが常態化しているからだと思われる。

・入管は医療を提供する建前は明記しているが、実行する意思は薄く、管理能力も低い。(入管側にとっても死亡事件は騒ぎになるから避けたいはず。それでも繰り返されることを見れば、無能と呼んで差し支えないだろう)

・入管行政のひどさは、日本国民の多くが実情を知らないことに起因していると私は思う。国内に外国人が増えることをよく思っていない人でも、医療放置などの非人道な対応を知れば、そのままで良いという人は少ないはず

・入管は個々の事情を汲まず、収容か送還かを迫る悪習を持っている。しかし、事情を汲んで在留許可を出すべき人、収容の必要が無く日本で社会生活ができる人、個人では解決できない問題に国や行政が踏み込むことで穏便に帰国できる人も中には存在する。

以上。


今後、面会での体験や、仮放免者のことなどもプライバシーに配慮しつつ書いていこうと思うので、また読んでいただけると嬉しい。

最後に、仮放免中で医療を受けたい人への募金活動もしているので、こちら記事への募金や拡散をお願いします。






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