
テーブルの上のほこら
いつからか手に入れて嬉しかったものを、テーブルの上にしばらくおいておく習慣がついている。ちょっとしたお菓子やくだもの、花がならんでいるところをみて、ある日ああこれは私だけのほこらだと思った。⠀
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友達からのおすそわけ、もらったお菓子についていた良い文のおみくじ。ひろってきた木の実、財布に入れていた展覧会のチケット、手紙。今年漬けた梅酒。きれいな色のフライヤー。誕生日に貰った口紅。読みたい本。ぴかぴかのオレンジ。フルーツポンチの瓶。拾ってきた良い石。リサイクルショップの400円コーナーで手に入れたとっておきのグラス 。⠀
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中学生のとき国語の先生が、漢字をおぼえるためには何度も繰り返し書くことです、と言っていた。一度で覚えられる人もいるかもしれないけどそれは稀です、大体の人は時間をおいて何度も思い出すことで記憶が強化されますと、確かそんなことを言っていた。⠀
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大人になってなぜか思い出して、私はそれを悪いことでよくしてしまっていると気がついた。くよくよしてもどうにもならない失敗なんかを5回ぐらい思い出すくせに、見つけた良い空き地のことは忘れてしまったりしていた。
それからはなるべく良いことを思い出すように気をつけている。嬉しいことは何度も思い出せるように、なるべく目の届くところにおいておく。そうやってにこにこしながらごはんを食べたり作業をしたりしている。⠀
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もうひとつ、私にとって同じ役目をずっと果たしてくれているのは写真です。嬉しいことはできるだけ可視化する、それが死なないための、私なりのひとつの答えだと思う。⠀
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読んでくださってありがとうございました。お礼がわりに、この数ヶ月で撮った写真を添えておきます。
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