見出し画像

「パクリ」の類語とそれぞれの言葉の境界線を考える

総コンAdvent Calender 11日目の記事です。

イラスト、音楽、ゲームetc…。創作をする上で、既存の作品を参考にすることはよくあると思います。それ自体は全く悪いことではないですし、むしろ技術の上達やインスピレーションを受けるうえでは必須の行為です。
しかし、出来上がった作品が参考にした作品と酷似してしまうと厄介です。練習として作ったものであれば問題ないですが、それを公開するとなると「これ○○のパクリって言われないかな…?」と心配することになるでしょう。
そこで今回は、「パクリ作品」とその他の「似てるけど問題ない作品」の違いについて、個人的な考えを述べたいと思います。


はじめに

いきなり元も子もないことを言いますが、人それぞれ価値観は違うので、どんなに自分ではパクリじゃないと思っていても、第三者からパクリだと指摘されてしまう可能性はあります。作品を公開する以上、作者自身よりも受け取り手側の評価の方が重要なので、大勢からパクリだと言われてしまえばそれはパクリです。残念ながら。
では、パクリかそうでないかを自分で気にしていても意味がないかと言われれば、それは違うというのが僕の意見です。「パクリ」と「それ以外」の自分なりの違いをハッキリさせておくのは大切ですし、これは創作する万人に対して共通することだと思っています。そこの基準を持っておくと、作品を作ったときにいちいちやきもきする必要が無くなるので。明確な基準が分からない人は、この記事を一つの参考にしてもらえると幸いです。
あと、僕は創作の中でも基本DTMしかやっていないので、この記事でも音楽の話が中心になっています。イラストや映像に関して詳しいことは言えませんが、心構え的な部分はどのジャンルの作品を作る上でも共通することだと思うので、ぜひいろんな方に読んでほしいです。

「似ている作品」の細分化

一口に「似ている作品」といっても、その中にはいろいろな種類が含まれます。具体的に分けると
・偶発的に似ちゃったもの
・作風を真似たもの
・既存の作品があることを前提としたもの
・作品の一部分を引用したもの
・既存の作品をそのまま自分の作品にするもの
等の種類があります。

偶発的に似ちゃったもの

たまたま似ちゃっただけなので、本来これはパクリでもオマージュでもインスパイアでもありません。しかし、おそらく「これパクリじゃね?」と言われる作品の中で一番多いのがこのパターン。
一時期話題になってたあいみょんの「マリーゴールド」とメダロット2のBGMである「Easygoing」が類似しているのもこのパターンに該当するのかなーと思っています。個人の予想ですが。

このパターンは自分じゃ対策しようもないので、万が一起きちゃったらしょうがないと割り切るしかないですね。コンテンツは増え続ける一方なので、何らかの作品に似る確率も上がるわけだし。
まあ、万が一似たところで、作品の大部分が同じという確率は低いので、スルーしちゃって問題ないと思います。

作風を真似たもの

冒頭でも述べたように、作品を作る際にリファレンスを用意するのはごく当たり前の行為です。ただ、結果完成した作品がどれくらい似ているかによって、それがどう分類されるか変わってくると思います。音楽を例にすると
雰囲気は似ているけど具体的なメロディーは異なる→インスパイア
雰囲気に加え、一部分メロディーが同じ→オマージュ
雰囲気に加え、大部分メロディーが同じ→パクリ
という感じ。
ここら辺の定義が人によって違うのでパクリか否かの議論が絶えないんですが、個人的には「特定のパートの主旋律が丸々同じメロディー」だったときは、パクリと言われても仕方ないのかなあと思います。特にサビが同じだと目立つので余計にそう思われそう。
裏を返せば、数秒同じメロディーがあったところで、他の部分が異なっていればパクリとは言えないと思います。コードが同じなら、心地いいと感じるメロディーも無限ではないでしょうし。他の部分でリファレンスとは異なると自信をもって言える要素を作れていれば、多少同じでも問題ないというのが僕の持論です。
とはいえ、前述のマリーゴールドが一部で叩かれていたことがあったことからもわかるように、同じ部分が少しあるだけでもパクリだと指摘する人がいるのも事実。「絶対にパクリって思われたくない!」って人は、頑張ってすべてリファレンスとは異なるメロディーにするしかないですね。

余談ですが、僕が曲を作る際も、毎回何らかの曲を参考にしています。
↓こんな感じ

この記事で紹介している曲は自分ではリファレンスのインスパイア程度にとどまっていると思うんですが、人によってはこれもパクリだと思うのかなあ…。

既存の作品があることを前提としたもの

いわゆるパロディです。「○○っぽい作品を作りました」とか「ネタを詰め込みました」って作者が公言しているパターン。具体的にはこんな感じ。

「ザ・ボカロっぽい曲① /いろんなボカロ - イチロク」

歌詞も曲調もそれぞれの原曲ギリギリまで寄せている。元ネタが変わるタイミングのつなぎ方に違和感がなくて聴きやすい。イラストも変わるのでどの部分がどの曲のパロディなのかわかりやすいのもいい。

「ミクがネギを背負ってやって来る - にとぱん」

曲や映像、ネットミーム等々いろんなものをネタとして詰め込んだ曲。元ネタが推定100個くらいありそうなすごい作品。

上記のような作品を「完全オリジナルです!」って公開したら叩かれるに決まってますが、これらは元ネタが分かる方が楽しめる作品なので、作者側もそんなことはせず、むしろ「気づいて!」って発信してると思います。こういった作品にケチをつけるのはナンセンスですね。
とはいっても、あまり技術のない人がこれをやろうとすると、元ネタとほぼ同じものが出来上がりかねません。それを「パロディです!」って言って公開してもおそらく認めてもらえないので、そこは要注意。

作品の一部分を引用したもの

既存作品の一部分を意図的に使用する方法。これは媒体によってよしとされるか否かが結構変わるイメージです。例えば音楽であれば、既存の楽曲の一部を抜き出す行為は「サンプリング」という手法であり、原曲の作曲者の許可があれば何ら問題なく使用できます。この手法は決して珍しいものではないため、聞き手もすんなりと受け入れられます。ただ、自分のオリジナル要素が生かされていることで評価されるので、これも安直にやるのは要注意。
あと、音楽にはもう一つ「マッシュアップ」と呼ばれる2つ以上の曲を組み合わせて一つの曲にする手法もあります。YouTubeでもよく見かけますね。これ、著作権的に言えばグレーなんですが、制作者が自分のオリジナルであることを主張しない+収益化しないことで許されているんだろうなあと感じます。聴き手もそれを前提に楽しんでいると思う。
音楽は割と許される手法である一方、イラストの場合は、同じ構図をそのまま使う「トレス」と言われる行為はNGだというのが僕の認識です。初めからトレス用の素材として配布されているものを使うのは問題なくても、そうではないイラストをトレスするのは、もし許可があっても鑑賞者には受け入れられない気がします。というかおそらくトレスを特別に許可する作者がそもそもいない。
ただ、イラストにもおそらく例外はあって、歌ってみたのサムネイルなんかは元の絵と同じ構図・雰囲気であっても許されると思います(なんならその方が評価される)。Eveさんが歌い手だったころは原曲と同じ映像を使うのが当たり前だったのに、いつから映像もアレンジが要求されるようになったんだろう…。

既存の作品をそのまま自分の作品にするもの

これはもう誰がどう考えてもアウトです。まあ1から100まで同じものを公開したら速攻でバレて終わりなので、誰もそんなことしないとは思いますが…。

番外編:AI作品

機械学習技術の発達によって、AIによるイラストや音楽作品が急増しています。2023年の流行語大賞のトップ10に「生成AI」という言葉がランクインしたりしました。
個人的には別にAI作品であっても(それがAIであることを明記していれば)問題ないとは思うんですが、そうでない人が一定数いるのも事実。現状では、生成AIを使う以上はある程度の批判を受ける覚悟が必要かもしれません。
ひとつ言えるのは、AI作品に触れる際は、作り手は原案の作者へのリスペクトを忘れないのが大切だということです。AI作品の作り手が、それをさも自分の作品かのように扱うのは原案の作者の権利とファンを蔑ろにしています。とはいえ、原案の作者に「あなたの作品をもとにさせていただきました!」って報告するのもただ煽ってるだけになるので違うと思いますが…。
また、AI作品の登場によって、受け取り手側のモラルも重要になってきます。完全オリジナルの作品を「これAI作品だろ!」って騒ぐのは作者に対して失礼極まりない話です。作品がAIであることを疑われて、制作過程を公開したイラストレーターさんもいたらしい…。
「似た作品を簡単に作れる」という性質上、使いやすい一方で批判を受けやすいのは理解できますが、いつか多くの人が納得できる利用方法が確立されてほしいな…と思います。

おわりに

長々書きましたが、結局何が言いたいかというと、完全に同じ作品以外には自分は寛容でありたいし、他人にも寛容であってほしいということです。パクリと言われることにいちいちビビっていたら創作なんてできないし。受け取り手も「これ○○のパクリだ!」と騒いだところで、自分には何のメリットもありません。パクリかどうかというのは被パクリ疑惑をかけられた作者が判定すればいい話であって、外野は基本黙っているのが吉です。新旧関係なく、リスペクトの気持ちを持って作品を楽しみたいですね。

おまけ:ちょこっと紹介似てる曲のコーナー

僕の好きなアーティストの曲の中から似てる曲を紹介します。これらは偶発的なものかオマージュかはわかりませんが、パクリではないことは断言できます。少なくとも僕の基準では。全部本当にいい曲なので聴いて!ぜひ聴いて!!(突然の布教)

  • 「セプテンバーさん - RADWIMPS」と「7 - ポルカドットスティングレイ」

セプテンバーさんのサビと7のAメロ後半~間奏にかけてのギターのフレーズが同じ。

  • 「やどかり - RADWIMPS」と「分別奮闘記 - BUMP OF CHICKEN」

イントロの盛り上がりの部分のフレーズがそっくり。使われてる楽器が何かわからないけど音質も似てる。
ちなみに、RADのボーカルの野田洋次郎さんはBUMPのファンを公言していて、音楽性に影響を受けたことも認めています。この曲もBUMPの影響を受けたんだろうなあと思ったら、なんとリリース日はやどかりの方が先でした。

  • 「天体観測 - BUMP OF CHICKEN」と「惑星ループ - ナユタン星人」

キーは結構違うけどサビの入りのメロディーが似てる。

  • 「桜 - FANKY MONKY BABYS」と「炎 - LiSA」

これもサビの入りのメロディーが似てる。タイトルの語感もちょっと似てる(関係ない)。

  • 「不死鳥 - SEKAI NO OWARI」と「高嶺の花子さん - back number」

テンポは違うけど不死鳥のBメロと高嶺の花子さんのサビのメロディーが同じ。4小節分続いている。

こんな感じで、自分が好きなアーティスト同士の曲だけでも似ている曲はいっぱいありました。YouTubeで「似ている曲」と調べればこの他にも大量の組み合わせが出てきます。気になった方はぜひ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?