【声劇フリー台本】空からの音
皮肉ったり陰鬱ったりする一人用台本です。
ご利用の際は利用規則をご一読ください。
【利用規則】
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台本のアレンジは自由ですが、台本の意味合いが大きく変わるような改変(大幅にカットするなど)は不可とします。
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【台本】
とてつもない光景だ。
人々が一箇所に集まって、空から降る音を聞いては咽び泣いている。
ある者は手を合わせて感謝し。
ある者は狂ったように踊り出し。
ある者は音について語り出し。
ある者は自分だけがその音を手に入れようと空に手を伸ばしている。
ああ、なんてことだ。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
そんな様を側から見ていると、彼らの異様性が一層際立つ。
異様で、異質で、悍ましい。
どれもこれも狂っている。
どれもこれも気味が悪い。
どれもこれも気持ち悪い。
もはや人ではなく、化け物のようだ。
勝手に狂って、勝手に盲信する、憐れで醜い化け物。
こうはなりたくない。
こうなってしまったらお仕舞いだ。
そんなことすら思う。
……けれど、どうだろう。
自分も本質的には彼らと同じ様なものだ。
今はたまたま彼らの中にいないだけで、かつての自分もこうだったのではないか。
とんだ醜態を晒していたのではないか。
悍ましい姿の化け物は自分なのではないか。
だとしたら。
だとしたら。
盲信的な姿は空から降る音を貶めるかもしれない。
狂信的な姿は空から降る音を穢すかもしれない。
空から音を降らせる正体は何を思うだろう。
遥か上空からすれば、自分など砂のほんの一粒でしかない。
砂の一粒が何かを喚いたところで、という話ではある。
それでも、せめて自分は醜い泥では在りたくないと思ってしまった。
どんなに足掻いたところで同じだとしても、同じになりたくないと浅ましくも思ってしまった。
あの音が欲しいと強請る姿が。
この音が良いと悦ぶ姿が。
もっと音を増やしてくれとせがむ姿が。
見れば見るほどに嫌悪感を募らせる。
こんなものを見るためにあの音を聴いていたわけではないのに。
日に日に嫌悪が膨れ上がって、自分の首を絞めていく様だ。
これはきっと、同族嫌悪に近い。
こんな言葉を吐けば、怒り出した彼らによって自分は殺されるだろうか。
無数の矢で、刃で、銃で、全身を貫かれ刻まれ砕かれ、そうして無惨な姿で死んでいくのだろうか。
……いいや、きっとそうではない。
どうせ、彼らは空からの音に夢中で、他の言葉など聞き入れるわけもない。
ずっとそうだった。
今までがそうなのだから、これからもそうなのだろう。
だからこそ、余計に彼らは加速していくのだろう。
閉鎖的な思考で、停止した思考で、欲望だけを追い求める。
もし、自分もそのような化け物に成ってしまったら。
もし、自分がまた化け物に成り果ててしまったら。
……ああ、とてつもない光景だ。
これが異様と思える内に。
これが異質と思える内に。
今の内に、この首を切り落としてしまおうか。
そうしたら、今抱える不安も嫌悪も恐怖も、何もかもが解決する。
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