ドローンと角運動量

ドローンをご存じだろうか。ご存じの方が多いだろうが、ドローンは遠隔で操縦できる無人航空機のことである。文字にすると厳めしいが、きっとどういう形のものかイメージがついているものと思う。

ドローンには羽が4枚ある。その4枚がどのように回転するのかご存じだろうか。

もし同じ向きに全て回転するとしよう。最初ドローンが止まった状態から発進したとしよう。同じ向きに全ての羽が回転したら、どうなるだろうか。回転の勢いを角運動量と考えると、羽が同じ向きに回転したらドローンは角運動量を獲得することになるから、止まっているときから角運動量が変化したことになる。しかし、角運動量は保存するという力学法則があるので、角運動量を保存するために、ドローンは羽の回転とは反対方向に回転しようとする。これではドローンは真っすぐ上昇ができない。

そのためドローンの羽は、2枚が右回転で、残りの2枚が左回転でないといけない。それにより角運動量がゼロのままに保ったまま、上昇できる。

ドローン

        図:ドローンの羽の回転方向

回転方向は対角方向に同じになっている。前に進むときは、後ろの2枚を速く回転させ、前の2枚を遅く回転させればよい。このときも羽の全角運動量が打ち消しあうようになっている。このようにしてドローンは前後左右に安定して進むことができる。

対角の右回りの2枚の回転を速くして、左回りの2枚の回転を遅くすると、羽の全角運動量は右回りの成分をもつことになる。それを打ち消しあうために、ドローンは左回転を始める。これが旋回である。以上のように、角運動量をうまく利用することで、ドローンは運動している。(詳しくは、例えばこのサイトなどを参考のこと)

角運動量と物体の回転が関係することは、物理法則をもとにする以上、普遍的なものである。つまり、ドローンの羽以外にも同じ関係が成り立つ。その一例として、話が飛ぶが、電子がある。金属の中には電気の素である電子がいるが、電子も自転しており、角運動量をもつ。これをスピンと呼んでおり、磁石の起源になっている。

電子のもつスピンと物体の回転が関係していることは、今から100年以上前にアインシュタインらによって示されている(磁気回転効果)。このようにドローンの羽と金属中の電子スピンには、同じ物理法則が成り立つ。物質の中の電子は電気の素であるだけでなく、磁石の素でもあり、物体の回転とも関係している。電子はこのような多様な物理的性質の起源となっており、物理学者の興味を惹き続けているのである。

















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