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どうでもいい話(2023年 3月分)


夢のマイホーム⑬

役所関係の手続きが済み、売上金の分配をどこか 落ち着いた所で やりたいな、なんて思っていた折。

元旦那から提案された。

「家見に来ない?」

えー…ヤダ。

思ったけど、現在地は駅から離れた住宅地。
周囲に喫茶店等も無く。

また喫茶店系で混雑してたら、分配出来んしな…

oh…

寝室にしたらしい部屋の中心には、敷きっぱなしの布団。

嫌な予感がした。

その部屋には足を踏み入れず「カーテン、まだ買って無いんだ」なんて、適当な話で布団は無視した。

居間で封筒から札束を出す。

これ、切るの怖いな…

恐る恐る帯封を外し、手に持つ万券。

「…おーほほほほほ!」

扇に広げたお札で、自分を あおいでみた。
だって、一度は やってみたいじゃん。

ピン券 嫌い。
一枚一枚 折り目を付けて十枚束を作り、折半。
一度 元旦那に半額渡した。

「引越し代と原付代、返して」

自分流の儀式的なものだけど、合わせて35、元旦那の手から徴収した。

さて、長居は無用だ。

「帰る」

「え!? 帰っちゃうの!?」

帰るし。

「えー…」

元旦那はソワソワと、畳の部屋をチラチラ見てる。

マジで、ヤダ。

思ったけど、せっかく普通に戻りつつある元旦那の精神状態が、また ややこしい事になったら、面倒…ていうか、下手したら殺されるんじゃないかな…

悩みに悩んだ、挙句。

「ゴム、無いでしょ」

元旦那が押し入れから出したは、何年前のか分からない使い残りのコンドーム。

捨てろよ。持ってきてんじゃねぇよ。

無かったとしても、買いに行って来る、とか言われたかもだしな…

事務的に、あくまでも、事務的に。
離婚を円満解決させる為に、自分の体を遣うことにした。

気持ち悪い…

もうね、元旦那にキスされるのも触られるのも不快でしかない。

痛い!

胸を掴む力が強過ぎるんだよ。手加減しろよ。

もうね、気持ち悪くて気持ち悪くて 堪らない。

あーあ、コイツに女性器 使わせたくねぇな…

「おしりにして」

もう洗うのも面倒で適当に、ゴム在ればまあ何とか。

あーもー、本当に嫌だった。本当に嫌。
安全と安寧の為とは言え、あの時 元旦那とセックスした、ていう事実が不愉快過ぎる。

「…帰る」

「泊まらないの!?」

泊まんねぇし。

「明日仕事だから」

早々に服を着て、暗い中なかなか来ないバスを待ち、電車を乗り継ぎ帰宅した。

もうね、死人の様相。
ボスンッとベッドに突っ伏した時には、床にこぼした牛乳を吹いたグッダグダのぼろ雑巾気分。

あー…もう寝ちゃいたいけど…

不愉快極まりない体を洗いたくて洗いたくて、頑張って風呂に入ってサッパリしてから、赤ワイン ガブガブあおってから、眠った。

やっとこ、全部 終わった。やりきったな──

で、終わらなかったんだよね(遠い目)

ひと月後くらいだったかな。
元旦那からメールが届いた。

『呑みに行かない?おごるよ』

えー…ヤダ。

もうね、私的には元旦那に二度と会わない、と 思ってたんだ。

タダ酒は有難いんだが、相手がヤツなのはマジで勘弁。

なんだが、一抹の不安が拭い去れず。
アイツ、一度 我が家に来た時有るんだよな…

以前は遠回りしたけど、万が一、覚えられていたら…と思うと怖過ぎる。

穏便に、穏便に…

適当に呑むだけ呑んで、悪い方へ向かないように、適当に喋って早めに切り上げよう。

「いいけど。次の日 仕事だから、遅くまで呑めないよ」

返信に念を押した。

あまり新居の近くで呑みたくはなかったんだが、私も体調的に優れないし、仕方なく最寄り駅 近くの居酒屋で集合した。

まあ、タダだし。

遠慮なんかせず、思い切り呑み食いさせてもらった。

特に話す事も無いんだがなぁ…

近況報告もしたくない。
呑み食いで口が空いても、タバコ吹かす以外に無い。
テーブル上の皿が空いて来て、ぼちぼち適当に相槌打って過ごした訳なんだが。

…話す事無いなら、帰りたい。

昔は平気だった筈の無言のテーブルが、居心地悪くて堪らない。

いやもう、無言が我慢出来ん。

「…家の売上金、ちゃんと貯金した?」

これだけは確認して、私の精神衛生を保つとしよう。
返してもらった引越し代 差し引いても、30はアイツの手元に残った筈。

「あれね、カーテン買ったら無くなっちゃった(照)!」

──はあ!!?

30万するカーテンって、何だよ!
ジャガード織の高機能カーテン、フルオーダーでもしたのか!?

団地だろ、テメェん家!

既製品で充分、サイズ売ってんだろ!
一級遮光のカーテンでも2枚で5千円程度だろ!
ていうか、あの家なら4枚セットで1900円ので充分だ!!!

「──ふうん(静怒)」

顔で笑って、腸 煮えくり返り。
流石にね、営業スマイルしてたつもりだけど、顔に出てたと思うよ(遠い目)

ていうか、嘘だろ。パチだろ。

本当アイツどうしようもねぇ。
怒りは心頭したものの、まあ、もう赤の他人な訳だし。
お金をどう使おうが 知ったこっちゃない。

疲れたし、帰ろ。

デザートもダブルで頼んで、食い終わったら撤退しよう、と 思っていた時だった。

「これ、持ってて欲しい」

元旦那が差し出した拳の下に、つい、私は片手を差し出してしまった。

──ハッ!!!

掌にポトン、と置かれたは、一本の鍵。
酷く動悸がした。

まさか…まさか、だよね…

「な、何コレ?何の鍵?」

「うちの合鍵」

やっぱり(引)!!!

「な、何で…」

「いつでも帰っておいでよ(照)」

帰んねぇよ(ドン引)!!!!!

ここまで嬉しくないプレゼントも無いと思う。

「ごちそうさま…」

ようやく解放されると思った、会計後。

「○○ん家、寄っていい?明日休みなんだ」

ざけんな。来んな。

「私、明日仕事だから」

とはいえ、ここで四の五の言って険悪になったら本末転倒。

かなり粘られた。

「──まあ、シロは喜ぶから…いいけど。私は、明日仕事だからね」

5畳半な我が家にて、ベッドを椅子替わりに旦那が着座すると、私は出来うる限り距離をとり床に座った。
缶ビールあおりながらも気が気じゃない。

──ていうか、話す事無いなら、帰れ。

そのうち元旦那がベッドにゴロンと寝転んだので、私は大慌てで叩き起した。

「ちょっと!寝るんなら帰って!」

「えー、明日休みだし、泊まってって良いでしょ?」

ざけんな。

「俺は明日仕事だっつったろうが!帰れ!帰れ、帰れ!」

これ以上、付き合いきれない。
これ以上、我が家に のさばられたら、何されるか分からない。

私は元旦那を及び腰で引っ張り起こし、背中を押し押し、玄関から追い出した。

「しばらく忙しいから。こっちから連絡する」

そう伝え、通常ならば客人が帰った後しばらく鍵を掛けないんだが、あの時ばかりは即行、ガチャガチャガツッ!と鍵二箇所に内錠まで掛けた。

──ふうぅ…終わった…

最後、かなり感じ悪い終わり方しちゃったけど、泥酔していたようだし覚えとらんだろ。

え?連絡ですか?
するはず無いじゃないですか。
私だって身を守る為の嘘は吐く。

…あ゙あ゙あ゙…コレ、どうしよう…

手元に残ったは、元旦那の新居の合鍵。

見たくもないし、触りたくもない。

処分したいが、有事の際に「持ってない」て言ったら、また、面倒臭い事になるんだろうな…(遠い目)

仕方ないので、小箱に入れて戸棚の奥深くに封印した。

これきり、元旦那とは音信不通である。

この数週間後、タバコを吸いにベランダに出た時に気付いた。

ベランダから見える路地裏の細い道路に、白いワゴン車が路駐しているのが見えた。
それも数日置きに、同じ場所に 同じ車が 停まってるんだ。
ただの被害妄想であるんだが、あの家に住んでる間、怖くて仕方なかったよね。

合鍵、多○川に投げ捨てたい。

──数年後。

都会から田舎に引っ込む決心をして、5畳半からは引っ越した。

荷物を纏めている際に出て来た、すっかり忘れていた元旦那の合鍵は、多○川まで行くのも面倒だったので、紙に包んでゴスッ!とゴミ袋の奥底に押し込んで処分した。

あ、分別しなくてスンマセン(汗)

現在は元旦那に住所バレしてないし、悠々自適✨…でも、無いんだな。

あ、元旦那では無く、別の懸念が有ってさぁ…本当 私、どうしようもねぇ…

今の我が家からも 引っ越したいっちゃ、引っ越したい。古いし。

─おまけ─着信、アリ。

世の中がコ○ナで自粛生活が始まった頃だったかな。
日中、スマホを持ち歩いて居ないので、着信が有った事に気付かなかった。

スマホを充電コードから抜き、点灯した画面を見て、凍り付いた。

不在着信に、表示されてるは、元旦那の氏名。

──何用だッ!??

怖いじゃん。

世の中アレだから安否確認の為かもしれないが、数年間 音沙汰 無くて万々歳だったのに、突然の着信とか、恐怖じゃん。

うえぇ…どうしよ…

掛け直すか、掛け直さないか、半日くらい悩んだかな。

──ええい、気にはなる!

私は元旦那の番号に掛け直した。

プルルルッ
『お掛けになった電話は…』
プチッ

繋がらなかったから、切った。
小一時間程 スマホを睨んだが、鳴らなかった。

…もう、良いや。

翌日。

再び元旦那から着信有り、私は鳴動するスマホ画面を見てたんだが、出なかった。

何度か着信に気付いたが、出なかった。

私から掛け直したタイミングが、ラストチャンスだったんだよ。

遊び屋⑥ ※エロい話※

前回のあらすじ
ナンパされ、自称同い年の成年に追従した、わたくし。

綺麗目なホテルに入り、小さい冷蔵庫から缶チューハイを取り出して、二人掛けのソファーに腰掛け、一服した。

ピッタリ隣に くっついて座った成年と行為が始まる訳で。

適度なところでベッドに移った。

──デカッ!?

いきり立つは傘こそ普通だが、長く竿中央が太く膨れた魚型した流線型。

「…え?コレ、ゴム入んの…???」

「普通のだとキツいんだけど」

生憎と用意なんかしてないもんだから、ホテルのアメニティのゴムしかない。

コレ多分、Mサイズ…

着けてあげたくとも、中央に引っ掛かる。

あんまりグイグイやったら、痛いだろうな…

もうね、本人に任せるしか無いよね(遠い目)

パツンッ!

oh…

根元の方まで掛かってないんだけど。
何でこう巨根遭遇率が高いかな。日本だよね?ココ。

若かりし頃ならば喜んだかもしれないが、ぶっちゃけ、デカ過ぎると体への負担が怖くて嬉しくない。

「──ひぃんッ!!!」

恐る恐る下を見れば、突き当たって尚、3分の2程しか挿入ってない。

ヤバ。

しかも、流線型だから動いても全然抜けなくてね(遠い目)

正直言おう。
悦かったかどうか全然、覚えてない。
成年の顔も名前も思い出せず、ちんこのサイズしか記憶に無い。

そんなこんなで事後。
うあー、疲れたー…

疲労感強く壁に掛かった大きなテレビの電源を入れた。

『──あんッあんッ』

チャンネル回し、止まるはエロビデオチャンネル。

「え、そういうの観るの?」

「うん。観たいじゃん」

この特有の専門チャンネルは、ラブホの楽しみの一つである。

ちびちびチューハイ呑みながらカワユイ女の子達を のんびり鑑賞して、朝まで過ごした。

出勤前に家に寄って、ニャンコらにエサをやらねば…

もうね、妙な使命感に燃えていたよね、あの時(遠い目)

数日後。

連絡先を交換していた成年から週末、再び ご飯の お誘いが有った。

あー…疲れてんだよなぁ…

一週間の疲労はピーク。
居酒屋寄って帰る、なんて元気は無い。

──まぁ、悪い子では、なかったよな。

「うち来る?」

その日は会社の最寄り駅で成年と合流して、家の近所の商店街で寿司折りを買った。

ううん、家に在るゴム、Mサイズなんだよなぁ…
コンビニに大きいサイズ、売ってんのかなぁ?

試しに寄ってみた。

おおお✨あるじゃない!

何でも揃ってんな、凄ぇな、コンビニ。
Lサイズを買ってみた。

ニャンコらと遊び、ベランダでタバコ吹かしつつ寿司食って、ベッドに並んで腰掛ければ始まる訳で。

──Lでも入んない、だと!!?

見た目的にはMよりはマシだったが、もうね、息苦しそう。

「キツい、よね?」

「うん、少し(照)」

だよね。

いやぁ、それまで考えても無かったけど、大きければ良いってもんじゃないな。
受け入れる方もだけど、持ち主の本人も。

そんなこんなで成年とは度々お家デートにラブホデートを重ねて行った。

話は少し戻る。
人生最低体重をマークしていた細い私が、ハマっていた
のが、ベビードール。
行為に及ぶためのエロカワイイ ランジェリー、アレだ。

──カワイイ♡

通販やらド○キで見かけると、つい、買っちゃうんだよね。
パッケージのモデルの子がスラッとしてて、また可愛いくてね。

まあ、収集が目的で、元旦那の前でもパートナーの前でも、着なかったんだが。
時は戻り、成年と遊ぶ約束を交わした、当時。

ベビードールコレクションの外箱を床に広げて眺めていて、ふと思った。

一度くらいは、着てみたいかなぁ…だが。

全て細かった時期に買ったもの。
サイズを確認すれば、どれにも“S”の表示。

──入る気がしない。

しつこいようだが、太っちゃった。
今まで来ていたウエストが緩かった筈のスキニーが、ピチピチで ぽよっ腹が乗るレベル…

ううん、破けるのを覚悟で一枚くらい着てみるか。
箱入りは勿体ないし、なんかのセールで買ったやつを。

…着ていくのは、ちょっと。

ベビードール1セット持ち、楽しい遊具の在るラブホテルへ向かったんだな。
早速ベッドの上で着替えてみた。

oh…

キャミソール型のだったんだが、いやはや、ピチピチ。
ちょっぴり縫い目がビリッて、いいましたよ(遠い目)

身頃はピチピチなのに…

胸が余る。
胸が余るんだよ!見頃はピチピチなのに!胸が!胸がぁ!!!

…失礼、取り乱しました(汗)

楽しく遊んで、事後。

「旅行、行かない?」

旅行だと!?
温泉入りたい!温泉 浸かってのんびりしたい!!

割と直近に親友らと長野の避暑地に一泊旅行してたんだが、私がズタボロ過ぎて観光どころか温泉にも入れなかったもんで。

「行く!」

即答した。

温泉街に一泊、しかも旅費持ってくれるって言うもんでルンルンだよ。

はわわ、温泉…✨

温泉なんて何年ぶりだろう。
持ち家が ようやく片付いて、疲労が溜まっていたから、のんびりまったり楽しみだった。

旅行って、何持って行けば良いんだっけ?

一泊だから着替えは下着くらいで良いし…あ、アレが要るな。

Amaz○nさんを開いて見たはは、大っきいサイズのゴム。

うぇッ!? こんなにサイズあったの!?

検索したらば、出るは出るは。
素材もしかることながら、サイズも豊富。流石Amaz○nさん✨

えぇー、LLかXLだよな…どっちだ(汗)!?

旅行まで数日。
サイズ測る為だけに会うのも、なんだかなぁ。
勃たせねばならんし、面倒。

箱裏の、cm表記から推測する他無い。

うう~ん…

大は小を兼ねると言うが、コレばっかりは緩くては意味をなさない。
片手にスマホ、片手で虚空を掴み握ったり摩ったり。悩みに悩んだ。

──XLだな。

折角だしラテックスじゃない、お高いのにしよ。

ポチッとカートに入れて、お買い上げ。

翌日には宅配ボックス届いていた。マジ便利✨
下着とゴムだけ鞄に入れて、待ち合わせた駅から新幹線に乗った。

──ハッ!!!

しまった、朝 薬 飲むの忘れた!何か体 重いと思った!
持って来るのも…忘れたーッ!!!

気付いた所で、新幹線の窓から見えるは既に、畑に田んぼ。

ど、どうしよう…

数泊だったら戻ったかもしれんが、所詮一泊。
薬無しで丸1日我慢する事にした。

んだが。失敗だったな~、コレ(遠い目)

旅先の駅に着いた頃には、背中が痛くなり始めていて。山登りでもした後のような重たい疲労感。

もうね、バタッと横になりたかった。

温泉街らしく、駅前には足湯なんかも在ったりして。

一度足を浸ければ、立ち上がれぬ。
暑い季節に長いこと足湯に使っちゃったよ。

「はい、タオル」

おお、物持ち良いな。

成年の差出したタオルで足を拭き、素足のままスニーカーを履いた。

…坂道多い(泣)

観光する気分にならなくて、即 旅館に向かってチェックインまで数時間ロビーに座らせてもらった。

…あそこには、行きたい。

確か、この辺りだったと思うんだ、秘宝館。

だって一度は行ってみたいじゃない、エロスなテーマパーク。
親友らとは行かない気がするし、母姉とだなんて以ての外。

今、このカップル旅行の今が、チャンス!

洋室ツインのベッドにボフンと横になり、休んでいる間ずっと考えた。

何て言い出そう…

成年は色々と観光プランを考えてくれていたようだけど、私が全部 蹴ってしまったので、ちょっと申し訳無いのも有り、なかなか言い出せなかった。

「どこか行きたい所、有る?」

「ここ!」

私の体調を気遣いつつ 成年が尋ねてくれた瞬間、私はスマホでブクマしてた検索画面を見せた。

「いいね!」

というわけで、念願叶ってタクシー呼んで秘宝館へ向かったんだな。

館内の名言は避けるが──

めちゃめちゃ楽しかった!

この題目を読んでいると言う事は、そういうの お好きなのだろうから、18歳超えたら一度は行くべきですよ。にひひ♪

成年の前では素の自分を晒してなかったので、大はしゃげ総レースのエロパンツが出た。

旅館に戻り、浴衣に着替えた。
大浴場の温泉は…明日にしよう。

もうね、生ける屍状態。

浴衣でベッドに横になったら放っておかれるはずも無く。

始まる訳ですね。
こればかりは自分を上げて切り抜けるしかない。

「私の鞄取って」

成年に鞄を持ってきてもらい、取り出したるは、Amaz○nさんで買うたXLのゴム。

「…ちょうどいい(喜)!」

でしょうね。

自慢じゃないが、サイズ計測は得意なんだ。

ついさっき入手した総レースのエロパンツに履き替え、折角なので浴衣で出来る遊びをしたいと思った。

「縛って」

私は両腕を揃えて差出した。

「ぎゅっとね」

成年の怖々 縛る力が緩々で「もっと、ぎゅうっと」て、何度か言ったな。

「──じゃーん☆」

知ってる限りの縄抜けマジックをやってみせた。
滑った。

結局ね、焚き付けたような感じになっちゃって再度、きちんと抜けられないように縛られましたけど。

──いい加減、許してくれ。

いつもラブホなんだから大して変わらんと思うんだが、旅先で浴衣という通常以外のシュチュエーションで盛り上がってるのか、離してもらえなかった。

朝まで致しましたよ(遠い目)

うああ~…温泉…

なんて入る余力無く、ゴロゴロしてれば、チェックアウトギリギリに またされちゃう訳で。

温泉、入れなかった。

自力で歩くのも一苦労で、また駅までが急な坂道なんだよね。
先に歩く成年に着いて行くも、どんどん離れて行ってしまう。

あー…腹 減ったな…

外で食べようと思ってたんだろう。素泊まりの ご飯無しプランだったから、当然 朝飯 食えてなくて。

私は土産物屋が並ぶ細道の、練物屋で立ち止まった。
紅しょうが天を買った。

ウマーッ(歓喜)✨♪!

揚げたて ぽっくぽくで、空きっ腹に染み渡る。

「何食べてんの?」

私が遅れている事に気付いた成年が坂を下りて来た。

「コレ。めっちゃ美味い!」

成年も自分の分を買ってた。

駅前の土産物屋でパートナーへの土産Tを購入、新幹線に乗った。

や、やっと帰れる…

喫煙ルームで一服して、座席に戻った頃には、私は完全に“自分との戦いモード”に入っていた。

薬が切れたまま無理しちゃうと起きる、簡単に言えば放っておいて欲しい状態。

話しかけられても返事出来ず 会話など以ての外。自分のカラに閉じこもり、ひたすら痛みを耐え忍ぶんだ。
そういう時の私って、眉間に深いシワは寄っていると思うのだが、はたから見たらムスッと黙り込んでいる様にしか見えんだろう。

「わ~♪」

何を思ったのか座席のアームレストを上げ、成年が私の ぽよっ腹に抱きついてきた。

よりにもよってコンプレックスになっていた ぽよっ腹にだよ。ぽよっ腹に。

「止めて。触んないで」

冷たく一瞥(いちべつ)して言い放ったら即、離れた。

自分との戦いモードに入っている私って、末恐ろしい程に感じ悪い、て自覚はあるんだが…

それも隠せないくらい、限界突破してるんだよ。分かるかな。難しいかな。

成年とは帰路一切 会話の無いまま。

──確か、ひとつ

前の停車駅で降りた方が、終点まで行くより我が家に近かった筈。

思い出した私は、もう とにかく独りになりたい一心。ヨロっと座席を立った。

「──私、ココで降りる」

「えッ!? あ…うん、気をつけてね」

成年とは新幹線で別れ、途中下車して乗り換え、我が家に帰り着いた。
即行、薬飲んだよ。

数日して成年から 遊びの お誘いが有ったけど、既読スルーした。
以来、成年から連絡は来ない。

だってさ、かなり散々な目に遭ったんだよ。あの旅行。
秘宝館と紅しょうが天は良き想い出だが。

楽しみだった温泉入れなかったし。
まったりしたかったのに…

そもそも薬忘れた私が、一番悪いんだが。
──まあ、成年とも音信不通別れしたけど、あれで良かったとも思う自分がいる。

ぶっちゃけると、当時のパートナーが面倒な人だったんだよ。束縛強いって言うか。

出先では逐一「どこで誰と何してる」て、報告せねばならんくてね(遠い目)

行き当たりばったりな私には、凄く面倒臭い。

⑦に続く──

─おまけ─足湯と素足

ひと月程した頃だったかな、ふと気付いた。

あれ?なんか…臭い。

ぷーんと部屋まで漂うは、完全に足の臭い。

自分の足を持ち上げて嗅いでみたけど、別に臭っていなかった。

ええー、どこからしてんの???

すんすんと臭いを辿り行き着いたは、我が家の玄関。

…臭ーッ!!?

夏場はサンダルしか履いてなかったよな!?

一足一足 嗅いで、ひとつで手が止まった。

…oh。

顔を近づけるまでも無く、臭い元は それだった。

何でコレだけ???
1~2回しか履いてないのに。

──足湯か!!!

あの時、素足で履いたスニーカー…即廃棄。

足湯に入ったらね、素足で靴を履いちゃダメ。

先駆者ならざる者⑤

淡い気持ちは胸に秘め、恋した者たちとは ちりじりになって進学した、地元の中学校。

二つの学区の小学校が、一つになる。
当然クラスも増えるし、隣の学区から初めて中学で顔を合わせる人が半数を締め…

失恋なんて何のその。
こりもしないで、私は新たな恋に踏み出すんだな。

─中学校─

同じクラスになった、隣の学区の女の子。
ショートカットでシュッとしてスカート膝上で可愛かった。

仲良くなって、サシで遊ぶ約束をした。

ルンルンで当日、いつも通りチノパンにカッターシャツ、お気に入りの角鞄を背負い、中学の校門前で待ち合わせ。

──再び、現実を思い知った。

なんか僕、ダサい…

女の子は年頃ファッション誌が如く、似合った可愛い服装。

方や、ウエスト高くカッターをインした私は、オタク丸出し。

それまで男子ばかりと遊んでいた私は知らなんだ。

──女子には“派閥”が有る、という事を。

何か違う、て事には早々に気付いて、その子とは距離を置いた。
しばらくクラスの女子達を観察して、自分の中の疑問に答えを出した。

女子が まとまるグループは簡単に、大きくわけて3つ。

一軍(オシャレ今どき女子)
二軍(中間)
三軍(オタク女子)

どのグループも互いに交遊しあってはいるものの、牽制し合う見えない壁が存在している。

──女子、怖い(震)

女子とはそこまで仲良くなかった自分の居所は無かったもんで、私は早速、机で お絵描きしていた女の子に声を掛けた。

「絵、上手だね!見せて見せて!」

最初恥ずかしがって なかなか見せて貰えなかったんだけど、誰かの椅子に座って、その子の机で一緒に落書きをした。

あの子、ヤバい絵が上手い。

鉛筆描かれたアニメ絵は、当時の私にドンピシャ、突き刺さったんだな。

その子とは隣の学区から中学で一緒になった。

丸顔に そばかす。天然パーマを二つに縛ってて、可愛らしく。
そして、やはり声が めちゃめちゃ小さかった。

多分だけど私の女の子の好みって、そこ、なんだろうなぁ(しみじみ)
守ってあげたくなるような大人しさながら、どこか秀でた尊敬する能力の有る子。

もちろん即、仲良くなった その子とは、絵を切磋琢磨しつつ、実家で遊んだ。

私は出不精なもんで実家で遊ぶのが鉄板だったけど、外でも遊ぶ事は有った。

その子は か細い声ながら、誰にでも話掛けられる勇気も有った。
ほら、年齢的に店員さんとかに「どこに在りますか?」とか聞くの、恥ずかしいじゃない。

そういう場面で、その子は率先して「私が聞いてこようか?」て、申し出てくれるんだ。

だから お任せして、生唾呑んで店員さんに話しかけるその子を傍観するんだけど。

「(ボソボソボソボソ)」

「…はい?」

聞き取れない店員さんに何度も何度も聞き返されてタジタジになってたな。

結局「あれ!どこに在りますか!?」て、私が横から尋ねてた。

前に迷子の話で書いたけど、中学当時ハマっていたのが、自転車。

あの子、自転車持ってなかったのかな…?
その辺 記憶が曖昧なんだが、一度 待ち合わせ場所に自転車で行った時のこと。

隣駅のショッピングセンターに行こう、とか そんな約束だったと思うんだが、その子は徒歩だった。

歩いても行けるから自転車押して行こうかな。

「ううん、私 走る!」

ええーッ!!?

「大丈夫!?疲れるよ!?俺も歩くし!!」

「大丈夫だから 気にせずに漕いで!」

ええ~…

妙なところが、頑固な子だったな。

結局、私は後ろから走って着いて来る あの子を気遣いつつ、低速で自転車を漕いだ。

歩いた方が楽だったかもしれない(笑)

あの子が描く絵に触発されて、私も徐々に絵が整って行った。
あ、中学レベルですけども。

──楽しい♪

私が絵を描く事は、中学校でも周知され、英語学習のスライド用イラストなんかを先生から発注されたりもしてた。

あの子の方が、絵が上手いんだけど…

何で私になんだろ、て引け目は有ったな。
まあ、私が授業中とか隠してなかっただけなんだけど(笑)

そんなこんなで あの子と遊んでいた中二の春、気付いてしまった。

ドキドキする…

学校でペア組んで授業を受ければ楽しくて。
遊ぶ約束を交わせば嬉しくて。

ほんの僅かな日常が、あの子と過ごせばキラキラと輝いてて。

──好き。

あの子は気付いていたか分からんが、私はエスコートする紳士さながら、道を歩けば必ず車道側を歩いたりして。

──大好き。

林間学校は追追語るが確実に、私は あの子に大して“彼氏”として接していた。

──“好き”を、伝えたい…

想いは膨らむ一方、とうとう ある秋口の日。

実家に向かう幅広な遊歩道。
分かれ道まで競走でもしてたのかな、あの子と二人で走っていた。

乾いた秋風に夕焼け空に、色付いた うろこ雲。
凄く、綺麗な空だった。
キラキラした世界に、想いが溢れた。

「好きだーッ!!!」

前を走る私が前を向いたまま 突然 叫んだから聞き取れなかったのかな。

振り向いて見た あの子は、きょとん としていて特に返事は無い。

「──へへへッ♪」

顔から火が出るほど恥ずかしくて、照れ笑いを残し そのまま家まで爆走した。

ひいぃえええ!甘酸っぱあい(照)!!

もうね、その日は さっさと布団に潜ったけど、いつまでも動悸が治まらなかったよね。

翌日。

あの子の対応が分からな過ぎて、学校行くの怖かったけど、皆勤賞 狙ってたんで頑張って登校した。

「おはよ~♪」
「お、おはよ…」

あの子は、いつも通りだった。
あえて気付かないフリをしていたのか定かではないが、あの子が笑顔で挨拶してくれただけで、胸を撫で下ろしたよ。

それからは、まあ、元通り。

お絵描きして遊んで、土日は画材買いに行ったりしたり。

私は別段 あの子とだけ仲良くしていた訳で無くて。
派閥には属さず、みんなと喋るし馬鹿するし。
現親友の一人とも同じクラスだった。

冬の とある放課後。
クラスに残って皆と お喋りタイム。
確か、前日のバラエティ番組の話で盛り上がってたかな。

「あ、あれ面白かったよね!」

私も偶然 同じバラエティを観ていたから、相槌を打った。

たったの一言。

──翌日。

「おはよ~♪」
「……」
あの子に無視された。

あ、あれ…???

最初は聞こえて無かっただけかな、なんて思ってたんだけど、行間に話掛けてもプイッと無言で私を避ける。

何で無視されるか分からんくて、混迷を極めた。

突然 人が変わった様になってしまった あの子の事ばかり考えて、マイナスな邪推ばかりしちゃうんだ。

学校 楽しくないのかな。
お家で何かあったのかな。

しつこいくらいに「何で話てくれないの?」て問い質したな。

無視され続けたけど。

それでも懲りないのが、執拗な私。
あんまりウザかったんだろう、数週間して あの子が折れ 一言だけ喋った。

「…私の知らない話をしてたから…」

──はい?

当然、私に身に覚えなど無く。

思い返して思い返して、ようやく あの子が口を聞いてくれなくなった前日の行動を思い出した。

ええッ!? あの時、君も笑って話の輪に居たじゃん!?

だけど、以外に心当たる事象は無かった。

このまま、あの子は再び口を閉ざしてしまい、二度と会話する事は無かった。
要は、嫉妬だ。

友情からの独占欲から来たものかもしれないが、私が自分以外の女の子と仲良くしてるのが気に食わなかったようだ。

ひょっとしたらね、あの子とは両想いだったかも、ね。

─中学三年生─

進級したての春の事。

「おはよ~♪」
「……」

女子連が返事してくれなくなった。誰一人。
先に結論を言えば、地味に私 クラスの女子全員から、年頃によくある虐め的シカトの対象になってたんだ。

──なんだが。

好い天気だな~。

なんて机に頬杖着いて 窓から見える空を、ボケ~ッと眺めていたのは覚えている。

当時の私、無視されてた事に気付いてなかったのだよ(遠い目)

阿呆だよね。
大人になったてから、あれ?あの時、ひょっとして…?
と 思い、親友に尋ねてみた。

「女子全員で『アイツ無視しようぜ☆』って話になってたんだ。ゴメンね(汗)」

「あ、やっぱりそうだったんだ。いや、私気付いてなかったから別に構わんし」

余談であるが、シカトの原因は私が“ケチだから”、だ。
当時、母親から「たとえ友人であっても、カリは作るな」と教わっていたもんで。

春休みだかに女子連数人と ご飯でもしたのかな。

会計の割り勘で 私、一円単位で割ったんだよね。
それがウザかったみたい。

今 私が同じ事やられたら、心底面倒臭いと感じるし、そりゃあ仕方ないよ。

話は戻るが、表面上の付き合いだけの、タダのクラスメイトは、私にとっては かなり どうでもいいらしい。

話掛けても返事が無いもんで、私は女子には関わらなくなった。

救いなのは、クラス一丸では無く、女子だけ、だった事かな。
男子連中は全く知りもしなかったようで、いつも通り馬鹿騒ぎして駆け回ってた。
期間は短く、ひと月 程。

5月くらいだったかな、少し遅めの転入生が、私のクラスに来た。

凄く背が小さくて、ストレートの髪を後ろで二つに縛って、笑うと えくぼ が可愛らしい女の子。

──そろそろ女の子とも喋りたいかな。

クラスメイトが恥ずかしがって遠巻きに その子を見ている隙に すかさず
私は声を掛けた。

私、下心満載。

明るい性格の その子とも すぐ仲良くなった。

私が転入生と平然と話していたのも有るし、私がシカトされても無反応だったのも有ると思うが、気付いたら前と同じように女子連とも喋ってた。

あの子が転入して来なかったら最悪、中学生活は暗黒色だったやも知れぬ。
感謝しか無いよね✨ありがとう、Tちゃん♪

そんなこんなで、もれなく その子を好きになり…

一緒に遊ぶ時なんかは、彼氏気取りだったんだな。

想いは伝えなかったけど、懐いてくれてて 手を繋いだり 腕を組んだり、女子特有のスキンシップが多くて、嬉しかったよ。

…ええ、下心満載野郎ですよ(笑)

─中学校・表─

私は男子達とも仲良く大騒ぎしていたから、年頃女子の恋愛相談なんかも結構、受けてて。

好きな人居るのかなぁ?
好みはどんな子なのかなぁ?

他人のリアルな恋愛模様、大好物でつ。

しかし実際、私はそう言った話は男子とは全くしていなかったので、知りません。

「誰が好き?」

平然とね、友達男子に聞いたりして情報リークしてた。
他人の恋愛には食いつくものの、自分の恋愛は誰にも言わなかった。

うん、恋バナな美味しい思いしてただけ。

そんな私であるが、幼稚園から小中全部クラスが一緒、というミラクルな友達が居た。

んだが。

なんだろう、小さい頃から見過ぎてて恋には発展しなかったな。

そんな私が好きだったのは、やはり隣の学区から中学で一緒のクラスになった男の子。

「おい、サル!」

いえね、私どうも同い年以下の男子は お猿に見えちゃうらしく…名前何だったかな…??

「何だよ、右京!」

…これ、あんまり詳しく語ると旧姓バレるな。謎のままで。

こうやって思い出そうとすると…

何にもエピソードが思い当たらんな。

何で好きだったんだろう?
自分の中でも謎な事象。

「男女~!」

「待て、この野郎!」

サルとは日常的に二人で騒いで、大抵最終的に 馬鹿にされた私が怒って、逃げるサルを追っ掛けて廊下を二人で走り回ったてた、くらい??
そもそもが、何でサルと喋るようになったんだ?
それすらも覚えてない。

サルはサッカーだか運動部だったし、私は吹奏楽部だったし。
委員会も同じだった時 無いんじゃないかな。

それがいつの間にやら基本「右京」と呼ばれ毎日「男女(おとこおんな)」と馬鹿にしてくる。

他の男子との方が、お馬鹿エピソードが浮かんでくるんだが。

私は口では負けない乱暴者だったから最終的に悪態吐かれて、追いかけっこに発展して、サルは痛い目しかみてなかったと思うんだがなぁ。

「また夫婦漫才始まった」

なんて、周りの男子からは やんややんやと 呆れられてたくらいで。

顔はサルだし、頭もサルだし。

学校外で遊んだ時も、一度も無いんじゃないか?

何で好きになったのか、マジで分からん(笑)

分からんが、好きだった。

少なくとも、男子連中の中で一番の仲良しだったと、私は思っている。

サルの趣味もテレビも好んでいた事など、何にも思い出せんのだが(笑)

…あ。サルが好きな子は聞いてた。
クラスの頭の良い女子。

サルからも、良く恋愛相談 受けてたな。
あんな可愛らしくて秀才の女の子と勝負しようと思ったら、口が悪い馬鹿な私では勝負にならん。

ずっと、サルの恋が叶うのだけは、願ってたよ。

──才女の好きな人が誰かも、私は知ってたんだがな。にひひ♪

恋バナ、ゴチで~す♡

そうそう、良く才女の子とは比べられてた。

「右京。お前もさ、○○みたいに女らしく、おしとやかになれよ。そしたら少しは可愛げ出るのに」

「俺、別に可愛くなろうと思ってねぇし」

今思うと、私の存在 全否定な要らぬ お節介でしかないアドバイスなんだが。

ハラスでしかねぇし(笑)

でもさ、そういう他人には言い難い現実を「将来が心配だ」~って、親身になって伝えてくれる友人って、なかなか居ないじゃない。

ほんの些細な日常会話なんだけど、そういうところが、好きだったのかな。

まあでも、女扱い一切されないのは気に食わない。

(ぺちゃ)胸 触らせて、女だって分からせてやんよ。
胸では気付かれないか。
いっそ股間を触らせた方が良いんじゃね。

追いかけっこで、どうにか事故的に装って…

なんてね、三年生の頃には日々 悶々としてたよね。
実行はしなかった(と思う)んだけど。

サルとは大して偏差値 違わなかったんだから、同じ公立高校を第二志望にしても良かったんだが…

何って勿論──ラブレターを。

メールなんてツールも当時は主流で無かったし、電話だなんて、売り言葉に買い言葉で喧嘩になる未来しか視えない。

…小っ恥ずかしいし。

どうしても顔色伺っちゃうから、自分の気持ちを素直に表現出来るのは、文を書く以外には無かった。

これは、現在進行形か(笑)
うーん…??
やっぱり内容は覚えとらんな。

ヘッタクソな文字から進化した癖強な文字で、一体、何を書き連ねたんだろう…
正直、怖いよ(震)

一つだけ覚えているのは、文末に書いた一行。

「返事は、要らない」

ソワソワ ウキウキ ヒヤヒヤしといて、返事が無い時の落胆この上無い事、知ってるし。
サルが好きな人も知ってたしね、想いを伝えておきたかっただけ。

ポストに投函して、思う。

スッキリしたあ✨✨✨

──当然、返事なんか無く。
自分で「要らない」つったんだから、仕方ないっちゃ仕方ない。

断られても嫌だし。

て いうのは、精一杯の強がりだ!素直じゃないね(笑)

⑥に続く──

─おまけ─同窓会

成人式後の打ち上げには、同郷のよしみで地元中学の会に参加した。

なんだが。

…あれ?みんなと何喋って良いか分からない。

和食がメインの居酒屋の片隅で、独り黙々と ぶり大根を抱えて食ってた記憶しかない。

うん。あの店の ぶり大根、マジ美味かった。

ビバ、ぶり大根♪

その後だったかな。

親友づてに同窓会の お知らせメールを受け取った。
覚えている写真は半袖で花火をしていたから、季節は夏だと思う。

ふっくらしてた中学の頃より少し痩せ、モノトーンの服が多かった。
ピタッとした黒いロゴTに、白いダボッとしたカーゴパンツ。
ややヤンキー入っていた頃。

女子連とは大盛り上がりしていたが、昔 仲良くしてた男子達とは一切、口を利かなかった。

何 話して良いか、マジで分からなかったんだ。

女子達とは楽しく過ごして縁もたけなわ、シメの線香花火の消化に皆で しゃがんで火を吐けた時。

誰かが わざわざ回ってきて、私の真隣に落ち着いた。

サルだ。

勿論、反射的にギュッと身構えたよね。
だって、ラブレター出しちゃってたんだよ?
何言われるか、怖いじゃん。

「右京 お前、どうしちゃったんだよ?」

どうしちゃった、と言われましても…穴があったら入りたいです。

最強クラスに警戒した私は、当然 即座に返答など出来ず。

言葉は出そうなのに固唾になって呑み込んでしまうんだ。

──ヤンキーはようすをうかがっている──

そんな状態。

「俺だよ、忘れちゃったのか?よく喧嘩したじゃん。
お前に何が遭ったんだ?学校か家で酷い目にも遭ったのか?」

もんの凄く、心配してくれた。

高校中退し、成人の時はセカンドハイスクールライフ。
高校辞めた事、噂にでもなってたのかな。

──これはこれで説明しづらい。

ええ、全く言葉が発せられましぇん。

せいぜいが頷いみたり 頭を振ってみたり、身振り手振りのみ。

そのうち私があんまり無言でいるもんで、諦めたのか サルも線香花火に火を点け、黙ってパチパチ弾ける火花を眺め始めた。

ひえーッ!!! あ、甘酸っぱあい(震)!!!

永遠にも思えるほど、凄く、穏やかな時間だったな。

最終的に複数のセット花火に入っていた大量の線香花火を 一本一本 着火するのは面倒になり、せっかくなんで常々疑問に思っていた
「10本束のまま火を点けたら、玉はどうなるのか」
を やってみたりしたけど。
すげぇデッケェ玉になって、恐ろしい程 火花飛んで、即行ボトンッ!て、落ちたけどw

「困った事が有ったら、相談 乗るから、な!右京!」

バシンッて背中 叩かれた。

──善いヤツだったな、サル。

中学当時の友人を、サルは選択したんだろう。

以来、連絡取らず。
…マジで名前、思い出せん(笑)

積年の親不知①

まずは表題の話をする前に、私と歯が辿る歴史を語らねばなるまい。

あ~…矯正にホワイトニングしたい…

まあ、思ってるだけで重い腰は上がらんのだが。

永久歯に生え変わった小学生当時、毎日朝晩 歯磨きしていたけれど、決して上手に磨けておらず、学校の歯科検診ではC判定。

要は、虫歯だ。

学校の歯科検診は半期に一度だったかな。
毎回、C。
それも、大量にくらう。

先日、母親は当時を振り返って、私を黙らせる為に「お菓子をあげすぎた」と、嘆いていたけど、違うと思う。

私、元々の顎の骨格が狭いんだ。

乳歯のうちは並んで生えてた歯も、永久歯の大きさに合わず。
要は、歯並びが悪い。

昔の歯ブラシって、幅も奥行も広くて毛高であった。
3色の歯磨き粉を にゅう~ と乗せ、力いっぱい擦っていた。
小学生当時の筆記圧を見れば一目瞭然。

そんなね、力いっぱい歯ブラシ当てれば、毛並みが寝てしまう。

接歯に触れるはブラシ側面。

磨けてなかったんだよね。

現行は知らんが、当時は学校の集団歯科検診でCをくらうと、歯医者さんで「治療しましたよ~」ていう用紙を学校に提出せねばならんかった。

それが毎回。
半期に一度。
大量に、だよ。

治療が終わって清々するのも束の間。
また、あの用紙を受け取るんだ。

oh…

間髪入れずに歯医者さんに逆戻り。
小中と歯医者に通ってなかった時期は無いんじゃないかな…(遠い目)

ちゃんとね、歯医者さんではフッ素も塗って貰ってたりしたんだよ。

やっぱりね、日々の歯磨きがモノを言う。

虫歯菌は幼児期に親から伝達するみたいの聞いて、虫歯にならない子達は やっぱり居て、羨ましいと思っていたものだ。
だが、そんなものは ないものねだり だ。
自分に虫歯が出来易いのは自覚しているし、特に文句も無い。

これで付き合っていくしか無いのだよ。

小さい頃からアレな私は、注射で泣きわめくどころか、腕に刺さる針先を じいっ と観察しちゃう 妙な子供で、小学校低学年の頃から一人で歯医者に通ってた。
集団予防接種や歯医者なんかで、全力で泣きわめいて怖い思いして逃げ出した挙句、大人達に力ずくで連れ戻されてる同年の子達を、眺めて思っていた。

結局 痛い目 見るんだし、大人しくしてれば、それだけ早く終わるのに…

可愛くねぇガキだよね。

「母ちゃん、歯医者行ってくる!お金ちょうだい!」

治療費って いくらになるかは分からないから 大抵 多く持たせてくれて、帰りに お菓子一個 買っていい、て事になってた。

毎週だか毎月だか、歯医者に行くのが当たり前であったし、私自身は嫌だとも思って無かったから、自ら進んで歯医者に行ってた。
お菓子の為に。

フッ素塗布の予防の後は「30分間食べちゃダメ」て 歯医者さんに言われるから、駄菓子屋 寄って買った お菓子は、家に持ち帰ってから時計と にらめっこして、ちゃんと時間守って食べてたんだよ。

歯医者の日は楽しみだった。

中学に上がる頃には、流石に面倒だと思い始めたけど(笑)

歯医者を理由に部活サボれるのは、良かったかな。
気付いたのは、ちょうど その頃。

歯が、何か黄色い…

これは生まれ持った性質だから、天然歯である以上どうしようもない、と 思うんだが。

私の歯、黄身が強いんだよね。

黄身が有る歯は強い、と誰かに言われたけれど、こんだけ虫歯になるんだから一概でも無いんじゃないかな。

芸○人は歯が命✨
世の中CMに代表されるように、白く輝く歯が好ましい とされている。

思春期にニカッと歯を見せて大笑い出来なくなったね。
爆笑する時は下を向いたり、口を手で隠すようになっていた。

オマケに、八重歯だ。
上の糸切り歯が二本とも。

これに関しては、一度歯医者さんに矯正するかどうか聞かれた。
ちょうど時期的に高校受験を控えていた頃。

掛かる費用に通院期間に、虫歯ケアや矯正器具の締め付けによる不快感、頭重…

受験生だから、入試が落ち着いてからの方が いいんじゃないかと、アドバイスもあった。

何より、掛かる費用に 度肝を抜かしたのが、私。

母親は、何とかしてくれそうな感じだったのだが。母親が めっちゃ苦労して きょうだい育ててくれてるの、見てるし。

そこまで甘えられない、大人になったら自分で何とかしよう。

て、考えちゃったんだ。

ぶっちゃけ、受験勉強なんてしてなかったんだから、矯正しても良かったんだが。

あの時 矯正していたら、無駄になったかもね。

そうそう、あと父親に

「八重歯、可愛いじゃん」

て 小さい頃 言われたの覚えてて、両側 八重歯でシンメトリーだから、いっかな、て 思ったのが一番の理由かもしれない。

昭和なアイドル感覚で化石的 嗜好だったのを、知らなかったんだよね(笑)

何で矯正な話になったかに戻ろう。

時は中学三年生
15歳に乗った頃。

あ、あれ…?歯が生えてきた…?

奥歯の奥の歯茎が盛り上がり、僅かに硬い歯らしき頭が覗いたんだ。

「先生、親不知 生えてきました!」

そうとしか思えないよね。だって歯が生え変わったのなんて、随分 昔だもの。

「あ、違うね。コレ、最後の大人の歯だ。親不知の一つ前の」

ええ!? そんな事ある!?

めっちゃ驚いたんだけど。
同い年の周りの子で今更、歯が生えてきた、なんて言う子 居なかったし。

若干、人より歯が生えるのが遅かったように思う。
だって15だよ?

加えて、既に永久歯で埋まった口の中に、新たな歯が生えるスペースなど無く。

歯を上下 4本か6本 抜いて歯列を整えるのが、一番 良い方法だと言われた。
でないと、歯が生えきらないかもしれないし、押されて余計に歯並びが悪くなるかも しれないんだと。

oh…

しかもね、その時撮ったレントゲン写真には、既に控える親不知の影が4本きっちり。

「顎の骨が狭いから、生えて来ないかも知れないけど…」
「今の状態のまま、もし将来的に親不知が伸びて来たら、悪さをするかもしれない」

「はあ…」

確かに、その時 歯医者さんは予言 下すってた。

だけど、親不知が悪さするだなんて当時は 全く想像つかなくて、ピンと来なかったんだな(遠い目)

とりあえず 矯正しないでも何とか生えるように、下の奥歯の側面を削り取ってもらい、金属を被せて応急処置してもらった。

矯正しないに決めた、直後だったかな。
すっかり行き慣れた歯医者さんに、新しい歯科助手に可愛いらしい女性が入った。

「見て見て!」

治療台で大口開けた私の上で、先生は洋々と その子を手招いた。

「ね、すっごい歯並びでしょ」

ええーッ!!?

もんの凄く楽しそうに歯医者さんは 歯科助手さんに、私の歯を見せびらかせたんだよ。

ええ~…

長年 通ってたけど、そういう事する歯医者さんじゃなかったから、ショックだったよね(遠い目)

私、ガチで歯並び悪いんだ…

この やりとり が先に有ったら、矯正に踏み切っていたやもな。

高校に進学すると、学校指定の歯科検診は無くなる。
歯医者に行く機会が消失するんだ。

つまり、歯医者に行くかどうかは 全て自主性に任される訳で…

元来 面倒臭がりの私が、強制でも無いのに、行くわけなかろう。

定期的に歯科検診 通ってる人、凄いと思う。

大人になるとね、なかなか行かない。
歯医者は痛くなったら行けばいいや、なんて思っちゃう。

あ、痛…

魚屋時代だったかな、前歯と糸切り歯の間が痛んだ。

ううん、流石に歯医者行かねばか…

だってチョコレート染みるんだもん。
食べたいじゃん、チョコレート。

丁度同時期、実家から歩いて直ぐの駅前に、新しい歯医者が開業した。
以前通っていた歯医者は微妙に離れていたから、近くに出来てラッキー、くらいの軽い気持ちで新しい歯医者に行ったんだな。

若造な私は、知らなかったんだ。

──世の中には、医者の善し悪しが有るという事を。

治療台は隣りの席との間に壁が引いてあって、各々 正面に液晶テレビが掛かっていた。

はあぁ、最近の歯医者は進んでるんだな。

イメージを例えるなら、ネカフェだ。

oh…

院長は歳若く、青い帽子とマスクから はみ出まくった金髪ロン毛。
ぶっちゃけ、清潔感は感じない。

さらに当時 最新なのか、顔全体を覆う透明なドーム状のフェイスガードを被っていた。

四半世紀昔の話だよ、そんな歯医者 居なかったよ。

潔癖なのか知らんが、飛沫が顔に掛かる事が確定している、て事。
前歯は流石に仕方ないと思うけど、奥歯なんかの時もだよ、常に。

普通さ、職人ならば飛沫飛ばさないじゃない。

そこに気付かなかったのが世間知らずな私…

虫歯もね、やっぱり何本か出来ちゃってて。
虫歯を削り、レジンを乗せ、硬化したら、終了。

あ、あれ…もうお終い?

て、当時の私でも思った。
1工程 足りんのだよ。

仕上げにレジンの表面を削り歯の形に滑らかにする作業が。

こちとら長年 虫歯治療を受けてきた身、気付かない筈が無い。

なんだが。

最近の治療は こういうもんなのかな…

なんて捉えちゃった、馬鹿な私。

結構 たくさん治療して貰っちゃったんだよね、その歯医者に(遠い目)

いつかポロッと書いたが 何より怖かったのが、歯をドリルで削ってる最中に、ずっとテレビを観ちゃうんだよ、歯医者が。

こ、こっち見てーッッッ(泣)!!!

て、何度も思った。

治療台にテレビが据え置かれた歯医者も、考えものだな。

やっぱりね、その歯医者が治療した歯って、表面がポコッとしてて、舌触り悪く。

後、私 タバコにコーヒー大好物だから、治療痕と歯の間に茶色の線が出来ちゃって、取れなくなっちゃったんだ。

それも、上の前歯。

恥ずかしかったよね、二十年くらい(遠い目)

間で方々の歯医者に通ったりもしたけど すっ飛ばし、つい数年前。
時間に厳しい職人気質の歯医者さんに、人生で初めて巡り会った。

「レジンを舐めるな!」

怒りながら、長年 気になってた歯を、削って埋め直してくれたんだ。

おおお✨✨✨

もうね、見違えたよ。
腕の良い歯医者って居るんだな!
コ○ナ下に突入して途中で行かなくなっちゃったんだけど、糸切り歯の奥サイドが終わってないから続きしてもらいに行かねば、とは思ってるんだが…

新規の虫歯も穴になっちゃってるし。

バスの連絡悪く歩いた方が速いんだが…

私の足では一時間掛かるのだよ。

叱られるの確定だし(笑)

②に続く──

幼少ひとコマ②

幼少期に言葉を知らないが為に発生する、造語(?)
大人になってから思い返すと アレ危ねぇ発言だったな、て やつ。

「注射大好き!」

注射は平気なんだ、というのを伝えたいが為の言葉でしか無いんだが…

語頭に『 お 』を付けて読み返しちゃった人は、私と同じ側の人間だ!にひひw

BLとの出会い

実家の近所に今ではあまり見ることの無い、古本屋が在った。

コンビニくらいの間口で薄暗く、半分以上が日に焼けた書籍で埋まり、独特の香り漂う。

棚と棚の間は狭く、一人通るのがやっとなくらい。
漫画本は少ないが、同人誌なんかも扱っていた。

中学二年生くらいの時だったかな。
当時は“BL”という言葉は無くて“やおい”と呼ばれていたな。

余談であるが“やおい”の語源は「ヤマ無し、オチ無し、意味無し」らしいが、私は「矢負い」だと思っている。

学校帰りに制服のまま、女子数人と古本屋に寄り道した。

ティーン向けのライトノベルの並びで、女子一人が小説を一冊引き抜いた。

「ギャーッ!!?」

何事ッ!?

本を開いた女子が叫び声を上げた。

「え、何何!?」
「どしたの!?」

女子が開いたまま固まっている小説を、皆で集まって覗き見た。

そこには──

可愛い顔した男の子が、白衣の男性にバックから突かれ、完全に入っちゃってる挿絵が。

「「ギャーッ!!?」」

なるよね。

自慢じゃ無いが、私は一度見た絵は瞬時に記憶してしまう。

勿論、そんな衝撃的な挿絵、瞬間的に脳裏に焼き付いたよね。

当時、商業誌が取り扱う やおい物って極僅かで 規制なんかも緩かったから、普通にライトノベルに分類されちゃってたんだな。

いやもう、ギャーギャー騒ぎながらも目が離せない。
他に お客様も居なかったんで、店主に叱られることも無く。

小説を持った女子がプルプル震えながら口を開いた。

「お…『俺の注射は』」
「読むなーッ!!!」

読み上げちゃうんだよ、その子。

騒ぎまくって恥ずかしい事に気付き、女子から本を奪って棚に戻し、逃げるように慌てて皆で外に出た。

「…あ、じゃあ」
「…あ、バイバイ」
「…あ、うん。またね」

なんか 皆 ほうけてて、変な感じに別れたよね。

そして…頭から離れない お注射な挿絵を 繰り返し台詞と共に思い返しつつ帰宅した、私。

速攻 私服に着替えて財布持って古本屋に逆戻り。

買ったよ、あの本。

ごちそうさまでした(照)

同人惨敗

BLを知った同時期。
一度だけ、二次創作系の同人誌に参加させてもらった。

話を持ち掛けてきたのは、小一でクラスが同じだった他クラスの女の子。
若干 虚言癖が有り 意味も無くバシバシ強く叩いてくるから、苦手系な子だったんだが…
同じ団地の同じ棟だったもんで、離れきれずにいた。

私自身、アニメや漫画の模写も ちょいちょいやって、そこそこ絵が描けるようになっていた頃。

「知り合いの お姉さんが同人誌描いてるんだけど、やってみない?」

お題は『ス○イヤーズ』

小説も全シリーズ読み込んでいたし、アニメも必ず観て、ア○メイトで買ったペンケースを愛用していたりした。

「やりたい!」

全力で答えちゃったよね。

言い出しっぺらしき お姉さんとは面識は無かったんだが、小学校の頃、その お姉さんに誕生日プレゼントで腕時計あげるからって、あの子に小遣い巻き上げられた時が有ったな(遠い目)
アレでアレな腕時計は「お揃いで買った」と、あの子がしていたんだけど。

おっと、話が逸れてるな。

同人誌という事は自費出版になる訳で、もれなく三人で印刷費用は折半する。
時々買ってたアニメ雑誌に印刷会社の同人印刷の広告が有り、いくらぐらいになるか予想を立てた。

表紙単色刷りの50冊が1/3なら、お年玉の残りで何とかなるかな、程度の価格だったので、一安心。
私はコ○ケなんかの同人即売会に参加した時は無い。

同人誌というものの存在は知っていたが、どういった物なのか良く分かっていなかった。

お姉さんは ちょいちょい参加しているらしい。あの子は買いに行ったりもしていた模様。

だから意識は完全に他人事だったんだよね。

3~4冊貰えれば良いや。
そんな お気楽な感じ。

持ちページは7枚位だったかな。
特に指定も無かったんで、早速ネームを切った。

私に好きな様に描かせては、ならん。

私が創った話は、中二目線の社会風刺を入れ込んだ、5人レンジャーもの。

悪の怪人を十六文キックで倒す、という、魔法も出なければス○イヤーズでも無い。

せいぜいが登場人物の頭がリ○やらガ○リィやらのス○イヤーズのキャラクターだった、てだけ。

もちろん、あの子にも見せたよ。
特に何も言われなかったから、文房具屋でA4の漫画原稿用紙を買った。

漫画絵自体は描いてたから、Gペン・墨汁、数枚トーンなんかも持っていた。
直ぐ、描き始めたよね。

図書室の机で あの子と作戦会議。

「本の題名、何にする?」

あ、そういうところも考えなきゃなんだ。

無知とは、恐ろしい。

当時は素直に聴いていたけど、大人になった今だから思う。
妙な話である。

「お姉さんが『絵が上手いから表紙の絵、描いて』って」

全く無名の私に、大役が回ってきた。
そんなチャンス無いだろうから、喜んで二つ返事で引き受けた。

「表紙の印刷、キラキラのやつにしよう!」「100冊 刷ろう!」

え、え!? ち、ちょっと待って!!

ポンポンあの子から出てくる企画が、どんどん大きくなって行く。

表紙絵をキラキラの印刷にすれば、もちろん価格は上がる。
100冊刷ればもっと上がる。

あの子が持って来ていた印刷会社の広告を指で辿り価格の所を見たが、もうね、暗算出来ない。

思考がパンクしちゃったもんで、私から何か言う事は出来なかった。

…おまかせ するしかない。

経験の無い 想像も出来ない 知らない世界過ぎて、自分で考える事を 放棄しちゃったんだな。
あの子づての友人に、ゲームが得意な女の子が居た。

力関係で例えれば、ジ○イアン・ス○夫・の○太。

時たま遊んだりしていた その子も話を聞いて「絵は描けないけど、手伝いたい」と申し出てくれた。

私の友人からも一人、だから…全部で四人か?
私の部屋に集まって、皆で作業して、楽しかった。

「200冊、刷ろう!」

うえッ!!?

あの子が飛び抜けた発案をした。

「沢山刷れば、それだけ お得だから!」

それはそうなんだろうけど!

1/3でも軽く五万超。
そんな大金、持ってません。

私はド○えもん(父親)に泣きついた。
当時まだ経済状態の良かった父親は、快くカンパしてくれたんだな。

ス○夫も社会風刺のシーンを指して「ここの台詞が面白い!」て 私の漫画を褒めてくれたりしたもんで、有頂天であったのは、間違い無い。

仕上がった原稿と表紙絵、費用をジ○イアンに渡し、あとは待つだけ。

──数週間後。

ス○夫の部屋で、ジ○イアンが抱えてきた重そうなダンボール箱を囲んだ。

おおお…✨✨✨

ご開帳した箱の中には、十冊毎に紙帯で束ねられたB5サイズの同人誌。

白黒で描いた筈の表紙絵が、キラキラしたシアン色のメタリックで印刷されているのは、かなりな感動である。

「凄い、凄~い!」

ス○夫と二人でキャッキャと ひっくり返し見た。

苦笑いしている、ジ○イアン。

誤記
B5 ✕ → B6 ○

「お姉さんが『こんな本、売れない!』だって」

「……」

ええーッッッ!!?

私もス○夫も言葉を失った。

だって、まさか、主体で企画した人間に、そんな事 言われるなんて思いもしてなかったんだ。

ジ○イアンは箱の中から本の束をポイポイと、8つ出し床に積み重ねた。

「はい、の○太の分」

うえッ!!?

私の取り分として、80冊やって来た。

「こんなに沢山、困るよ!」

「何で?」

何でも何も、同人誌の売り方を知らないんだ。
当時の私は自分の意見を混乱した頭では まとめられず、発言出来ずにいた。

「そんなの無いよ!!!」

キレたのは私ではなく、ス○夫。

「の○太はコ○ケに参加した事も行った事すら無いんだよ!? なのに『80冊 売れ』だなんて、横暴だ!!」

──ス○夫(感涙)✨

私が言いたい事を、ス○夫が代弁してくれた。
この時ばかりは 出○杉くん に見えた。

「う?う~ん…じゃあ…」

滅多に見れないス○夫の憤りように、ジ○イアンが折れた。
積まれた山からボスボス箱に戻され、私の取り分は3束にまで減らしてもらえた。

その後は三人とも、同人誌の話はしなかったな。

…どうしよう、コレ。

減らされたとは言え、30冊。
扱いに困るのは言うまでもない。

帰宅して、一束ほどいてページを開いてみた。

トップが私、次がジ○イアン。

oh…

トリの お姉さんの漫画で、手が止まった。

やおい(BL)四コマだった。

敢えて辛辣に書くが、意味合い的には、前者の「オチは とりあえずベッドインしとけ」的な。

印刷され、お姉さんの漫画を初めて読んだ、私。

──これは売れないわ。

やおいなんなら先に言ってくれてれば、やおいで描いたのに…
内容を整理すると、
・五人戦隊もの(私)
・ギャグ漫画(ジャイアン)
・やおい四コマ(お姉さん)…

大人になった今だから言える。
オムニバスでも、ジャンルは統一すべきだ。

既にコ○ケデビューしている作者に乗っかる感じなら、その作者の作風に合わせた方が、まだ商品には見える。
素人なんだから。

「売れない」と感じたので有れば、印刷出す前に言ってくれ。
何度でも描き直したよ、何度でも。

とりあえず、カンパしてくれた父親に一冊 郵送、一冊は自分用。
他は「欲しい」と言ってくれた子に配ったと思うんだが、うやむやにした気もする。

──どうしようコレ、マジで。

残りの本は、20冊強。

売れないレッテルを貼られた自分の作品を、無理に販売しようと言う気も起きず。
他に自分で同人誌を印刷する余力なんかも無く。

ダンボール箱に入れ 机の足元に置いたまま、何年か邪魔だった。

──もう、いいや。

ある時、箱から出したキラキラ表紙の本束は、ビニール紐で縛って古紙回収に出した。
あの時の5万円、トイレットペーパーになっちゃったよ。
ごめんね、父ちゃん…orz

手元に残った自分用の一冊は、持ってたら引き取って貰えんのかな?と 思い立ち、あの古本屋に持って行ってみた。

1円だったかな、買い取ってくれた。

ひょっとしたら、一冊くらいは 世に出回ったかも、しれないね。

母親は、アレ⑯

私が中学生の頃、母親は着付け師をやっていた。

元々、和装を着ていた訳でもなく美容師免許も持っていなかった母親は、着付け教室に通い 美容師学校に通い、美容師免許を取得。

冠婚葬祭場で着付けの仕事に就いた。

母親の勤勉だったり努力家のところ、凄いと思うし尊敬している。
あれ?これ、前に書いたかな?
ま、いっか。進めよう。

美容師免許を取るためには、パーマのロッドを巻くスピードテストみたいなのがある。

母親は良く実家の作業用テーブルで、お手作りの台に据え置いたカットマネキンにパーマ液の匂いを放ちながら練習していた。

頭だけの毛髪の生えた、アレだ。
彼女(?)達には、名前が付いていた。

美容師学校で買ったらしい お高い一人目は、松子ちゃん。

なんかのツテで お安く手に入れた二人目は、梅子ちゃん。

我が母ながら、安直なネーミングである。

パーマ液をまぶす という事は、洗い流さねば いかん訳で…

「コンニチワ」

「──ぎゃあぁッ!!?」

学校から誰も居ない実家に帰宅した私を、彼女達が良く お出迎えしてくれたよ。

居間の作業用テーブルから、並んで廊下の私を見詰めてるんだ。

絶対わざとだよね、この置き方。

あ、今日は居ないんだな…

なんて安心し、洗濯機回してベランダに干して振り返った、私。

「──ぎゃああああッッ!!?」

ガラス戸の内側の床、足元から、生首二つが 私を見上げていた。

天気が良かったからだろうな。
掃き出し窓の下、床に置かれて干されてたんだ、松子ちゃんと梅子ちゃん。

な…何も、顔を屋外に向けて置かなくても良いのに…

ぶっちゃけ、髪を乾かしたいのならば、後頭部側を屋外に向けるべきである。
私がホラー苦手になったのは、彼女達に日々 ビビらされていた所為やもしれぬ(遠い目)

「母ちゃん、ベランダに顔向けて干すの止めてよ。お向かいさんが見たら腰を抜かすよ?」

「家の中 向いてたら、アンタがビビるかと思って(笑)」

既に何度も仕掛けてから出勤してるよね、貴女。

確信犯である。

冠婚葬祭に訪れるのは、花嫁花婿だけではない。
来賓の親族から友人・知人に至るまで、紋付袴・振袖etc…
着物を着る者が多い。

シーズンになれば、成人式やら卒業式やらの着付けも有る。
着付け師というのは数を こなせねばならん、スピード勝負だ。

「着付けの練習させて」

晩御飯が終わると、ほぼ毎日、母親の着付け練習に付き合わされた。
最初のうちは、着物着れて嬉しかったよ。

…飽きた。

だってさ、実家にあった着物は、姉が祖母に買って貰った振袖一枚。

…飽きた。

毎日毎日、同じ帯で 同じ紺色の着物なんだもの。飽きるよ。
せいぜい着付け教本見ながら、帯結びが変わるくらい。

「アンタの肩幅は、本当に!和装が似合わないね!」

母姉は なで肩なんだけど、私一人 衣紋掛けのような いかり肩…

日本人が着る着物は、なで肩が良いとされている。
父親に似たらしい私の骨格、和装向きじゃ無いんだ。

首周りやら胴回りにバスタオルを何枚も巻かれて、物凄い調整をされてたよ。

「ふんぬッ!!!」

──ぐうッ!!?

着物ってね、あちこち締められるんだ。もの凄く。

良く映画で お転婆姫が使用人にコルセットを締め付けられるシーンが有るじゃない。あんな感じ。

「やっぱ身内が練習台だと、手加減しなくて良いから助かるわ♪」

親の仇かと思う程、ぎうぎう締められたものだよ。

個人的には男性ものの着物とか着てみたかったんだけどな。
女性ものより細い帯を貝の口に結んでさ、粋じゃない。

袴も履いてみたかったな。

母親の着付け教本を、指をくわえて眺めてたっけ。

なんて 小中と、常日頃から着物に慣れ親しんだ生活を送っていた、私。

中学の友人と、絵を描いていた。
実家の和室で ちゃぶ台に頭を付き合わせ、描いていたのは妖怪。

二人それぞれが、猫又を擬人化した和装の女の子を描いた。

下書きして、ペン入れと仕上げまでしよう、て話だった。

その日 母親は休みだったのかな?

墨汁が乾くのを待っていた私達の頭上から ぬうん と、ちゃぶ台を覗き込んで来た。

「○○!この着物は、何だ!」

え…?

母親は恐ろしい剣幕で私の描いた絵を酷評した。

「アンタ、仮にも着付け師の子供だろう!? あんなに着てるのに、着物の何も覚えて無いんだね!」

えぇ…!?

母親は私の友人の絵を指さした。

「友達の絵を見てごらん!友達の方が着物を分かってるじゃない!」

ぱちくり。

目を瞬かせて友人の絵を見た。

可愛らしい猫耳としっぽの生えた、白い着物の女の子の立ち姿…

「この、帯締めの結び方!着物というのは、こういうもんなんだ!」

──oh!

友人絵の着物の帯締め、広い帯の胴回りを回る細い紐なんだが、ちゃんとした祝い結び。

比べ私が描いた帯締めは動きに合わせて踊る、適当な蝶結び。

はあぁ…

絵って、こういう細かい部分まで、ちゃんと描かねば いかんもんなんだ。

気付かされましたよ。

──まあ、気付いただけで、描けるかどうかは別問題。

帯締めの結び方って、複雑なんだもん!描きたくても描けないもん(泣)!

ペン入れしちゃったし…

ポストカード二枚分程の小さな絵で、自分的にはデザインも気に入ってたし 良く描けたと思っていたから、机の横に画鋲で留めて飾った。

蝶結びは修正しないまま。

母親は私の部屋で着付け練習する度に、あの絵を じと~っと、見ていたっけな(遠い目)

そして、何度も何度も着ては脱ぎ、結わった着物。
終盤には くったくた になっちゃってた、くったくた。

ううん…お世辞にも綺麗な状態とは言えない この お振袖を、私は成人式で着なきゃいけないのかな…

嫌だな。正直、着飽きたし。

て、十五の頃には思っちゃってた。

そして──時は流れ、数えで二十歳。

「母ちゃん、私 スーツで式典行くわ」

「何で!?お姉ちゃん二人もアレ着たんだよ?アンタもアレで お揃いの写真撮らなきゃ!」

嫌です。アレ、もう私には晴れ着に思えないから、嫌です。

てな経緯で どうにか母親を言いくるめ、私はスーツで成人式に出席したんだな。

式典前の写真撮りだけ、振袖着る、て事になってた。

「アレは嫌だ~」

つい先日の11月12日。

故あって当日には描けなかった、立ち呑みの日のラフ絵を描いた。

「母ちゃん、見て見て!可愛い酔っ払いでしょ!?」

私は母親に見せびらかした。

「アンタ、絵、上手いね」

「え?上手いけど?昔程じゃないけど」

褒められ慣れてなくて、皮肉で返しちゃった。

⑰に続く──

積年の親不知②

二十代半ば、右上の親不知が生えてきた。

周りで親不知が生えてきたが為に、仕事中ぼんやり としちゃう人や痛そうにしている人を見てきたもんで、怖々 様子見。

──だったんだが。

上の歯は八重歯になっていたお陰か、わりとすんなり伸びた。

別に歯医者行かなくて良いんじゃね?
仕事に支障が出なければ不具合とは思わん、楽観思考。

ぶっちゃけ、歯医者は一度行くと長く掛かるので、面倒臭かった。

流石に狭い口腔に無理くり生えてきたもんで、前歯までギュッと詰まり 歯間が無くなり、壁に接したままだけど。
伸びきるのに数年かかかったが、最初の親不知は上顎に鎮座した。

歯が磨き辛い…

小さめベッドの歯ブラシで何とか奥歯まで磨けてた(?)程度の空間に生えちゃった、親不知。

もんの凄く、邪魔。

ゴスゴスッて、歯ブラシが口の中に頭突きするんだよね。

そんなんでも歯磨き自体は、歯医者の歯ブラシチェックで「ちゃんと磨けてますね」て言われるから、慢心してた。

──ん?

ある時、舌で触れた親不知に違和感を覚えた。

歯茎の付け根のところ、若干の段差が在る。

え~、ヤダ~、虫歯??

ううん、そろそろ歯石取って欲しいし、歯医者 行くかなぁ…

思いはしたんだが、仕事が忙しい事を言い訳に、なかなか行かずに放置したまま更に数年。

痛くもなかったし。

世の中には親不知生えたままの人も居るらしいし、私もそんな人の一人になるんだろうな、なんて おぼろげに思っていたもんだ。

──私、知らなかったんだ。

“生えたての歯は弱い”という事を。

加えて虫歯の出来易い体質(?)だ。
虫歯にならん筈が無い。

磨き辛い、と言うか、磨けてなかったんだ。
しかも何、親不知って生えた時には既に虫歯になってる、なんて巷では言うじゃない。

結論から先に言おう。

親不知が生えてきたら、とりあえず歯医者に行け。痛くなくても。

──そんな事など つゆ知らず、ズルズルと歯医者に行かずに経過した、ある時。

晩飯にコンビニおにぎりを食っていた。
あ、親不知の虫歯に、米粒が引っかかっちゃった。

舌や爪楊枝で取ろうと試みるも、全然取れない。

あれ~っ(汗)!?

爪楊枝を持ち、洗面台の鏡に大口を開いた。

親不知の虫歯は側面、歯並びの外側。
ほっぺの肉で隠れて、口を開いた位では視認出来ない。

人さし指で ぐいーっと、口を引っ掛け開く。

oh…

いつの間にやら大きく成長していた親不知のカルデラ。

米粒がね、すっぽりと収まってしまっていた。

取れない筈だよ、米粒。

爪楊枝で刺し、ようやく取れた米粒を、口から出して まじまじ観察。

──傷一つ付いていない。

崩れたり欠けたりしないで、綺麗なまんま。

親不知という外壁に守られ、舌や爪楊枝の攻撃から逃れちゃってた。

──もう、誤魔化せない。

流石に米粒がすっぽり入っちゃう大穴だよ。
上の歯の虫歯は脳に到達するとか都市伝説を聞いてたし、逆に怖くなっちゃった。

抜いてもらおう。

そう決意して、職場から通い易い歯医者に飛びこんだ。

診察台に座り、問診。

「親不知、抜いちゃって下さい!」

開口一番、歯医者に申し出た。

「いやもう、抜く覚悟で来ましたよね」

て、歯医者さん笑ってたっけ。

一応、口の中を診たり レントゲン撮って貰って、抜くに決まったんだな。

麻酔射ち抜歯作業の間、支え手に押され、口の内側に八重歯が刺さって痛かったっけ。
親不知自体は麻酔効いてるから、抜くだけならば痛くはない。

衝撃が凄いだけ。

一度 顎の骨から緩みを付けるためかな?
ドンッて何かが親不知を重く叩く器具を当てられた。

おおお✨漫画みたいの出てきた!

ペンチみたいので摘んで、グイグイ、ググい~ッ!て、抜くんだよ。
ペンチみたいので。

「抜けましたよ」

軽くゆすがれ金属トレーに乗った、親不知。

oh!

親不知って、デカイね!
びっくりするくらい、デカかった!

あとね、虫歯って黒いイメージだったんだけど、側面に空いた米粒二粒程の穴、白かった。

こんだけ深いのに、まだ深層には辿り着いてなかった、て事かな?知らんけど。

「持って帰ります?」

「え?親不知をですか?」

「はい」

え?要らない。

私はこの時 知らなかったんだが、状態の良い親不知は行く末 歯が無くなった時に差し歯なんかにも出来るらしいよ(未確認)。

乳歯が抜けた時の「上の歯は地面に埋めろ、下の歯は屋根の上に投げろ」て、迷信が頭を過ぎった。
上の歯だから、地面に埋めるべきなのかな…

なんて考えたんだけど、よくよく思い出せば、これって「丈夫な歯が生えますように」ていう、まじない だよね。

──え!? 親不知また生えてきたら困るんだけど!!

「要りません!」

いや、不要な経緯が我ながら、阿呆。

結局貰わずに帰ってしまったんだが根っこの生えた歯一本を まじまじ観察する機会なんて無いだろうから、惜しいことした。

それにしても…あの、レントゲン写真…

十年程前に見た時より、しっかり伸びる前の親不知が待機していた。

上の歯は真下を向いているようだったんだが…

下の歯二本、真横を向いてなかったか?

③に続く──

─おまけ─

積年の親不知。

これね、タイトリング誤字ってたんだ。

本当はね、“積念” にしようと思ってたんだよ、うん。

“積年”の方が若干軽い印象を受けるけど、日本語的には多分 正解だし、変換し易いし、

ま、いっかな。

て、思って続けてる。

物凄~く、どうでもいい話でした。

積年の親不知③

二本目の親不知は なかなか顔を出してくれなかった。

歯茎に埋まったままだと 一般歯科では抜けないから、口腔外科に行かねばならなくなる。

それは面倒臭い。

──あ、やっと生えてきた。

ようやく歯茎を破り硬い歯を舌で確認出来たのは、更に十年程経過した、三十代半ばのこと。
アレだ。最初の魔女の一撃くらって寝ずっぱり だった、あの頃だ。

そりゃもう日々、ぐだぐだゴロゴロ、なあんもしないで ただ生きてただけの、そんな時。

──明日、磨こう。

なんて、通常やらねばいかん毎日の習慣だった歯磨きすら、出来なかった。

腰が曲げられないからさ、口がゆすげないんだ。
と いうのは、ただの言い訳である。

多分 磨こうと思えば出来た筈なんだ。

しなかった、だけ。

そんな生活していたもんだから、いつの間にやら歯磨きが習慣から無くなってしまった。

お分かりですね。

そう、虫歯が出来易い体質(?)なのに歯を磨かねば、虫歯が出来るし広がるし。

親不知も放置。

それでも、気付いたら左上の親不知は ちゃんと生えていた。

痛くも無ければ、虫歯の穴も無さそうだ。

まあ、そのうち。
まあ、そのうち。

ズルズルと歯医者に行くのを先延ばしにしていたら、親不知よりも、重篤な虫歯が出来ちゃった。

右下の奥から二番目。
確か小学校の時に金属を被せた歯かな。
全体に被せる銀歯では無く、天辺の中央の溝にはめ込まれる冠タイプのやつ。

──ん?

最初に気付いた時には、金属と歯の接辺に若干の段差が出来ていた。

あ~…そろそろ冠、寿命かな。

現行は知らんが、昔の歯科治療は十年程で再度治療し治さねば、被せ物の下で虫歯になってたりする、と聞いた。
接辺が新たな虫歯になったのか、はたまた中で虫歯が広がっているのか。

歯医者、行かなきゃなぁ…

なんて思うだけ。
歯もろくに磨かぬまま、時間だけが経過した。

──そして。

ガリッ!

!!?

歯が欠けた。
金属の下の部分が三分の一程、無くなってしまった。

うえッ!?

舌で触れば、金属の一部が、僅かな天頂部に乗って浮いている状態。
歯の溝の形の薄い金属、エッジが利いてて、舌に刺さる。

え、ええ~ッ(汗)

とりあえず、金属の部分だけ舌が痛いんで取っちゃおうと試みたが、微動だにしない。

凄いね、歯科の接着剤って。

こ、これは流石に 歯医者か…

なんて思うだけ。行かなかった。
神経抜いてあったのかな、かなり深い穴だったんだけど、痛くなかったんだよね。

困るのは 虫歯歯にルーフ状に残った金属が邪魔で、食べ物が詰まるわ、歯磨きしてもカスが取り切れないわ。

痛く、ないしなぁ…

歯茎に残った根元も欠けている。
歯を指で押すと不安定な積み木みたいにグラグラする。

抜けちゃってくれんかな。

なんて思うだけ。
歯医者も行かず、指で摘んで抜けないか試してみるだけ。

更に数年が経過し、田舎に引っ込んだ同じ年。

ビギーンッ★

──痛゙ーッッッ!!?

とうとう強烈な疝痛が顎を襲った。

多分 虫歯が進行し過ぎて、深層部に達したんだ。

痛~ッ痛~ッ(号泣)!

もうね、寝ても醒めてもいられない。
もうね、痛い、としか言えない。

歯医者行かなきゃ、身が持たん!

ここに来てようやく、重い腰が上がった。
というか、上げざるを得なかった。

ただ、如何せん引っ越して間もなく。
家周辺の地理に明るくない。

ちょうど役所関係の手続きも有り、役所の窓口で歯医者の場所も尋ねた。
教えてもらった歯医者は聞いた時の有る住所。
多分そんなに離れてないんじゃないかな、なんて 方向音痴な私は思ったんだな。

そして、更に阿呆な事に──

教えてもらった歯医者に電話しちゃったんだ、私。

疝痛が走り回る虫歯なんだから、急患で飛び込んじゃえば良かった。
当時はまだ在った役所の喫煙所でタバコ吹かしながら、スマホを耳に入った当てた。

『予約は当分埋まってまして。今すぐ来れますか?』

「今すぐですか!?」

今、と言われても現在地は役所。
話では役所からバス一本で行けるっぽかったけど、軽く40分は掛かる。

「すいません、私 今、出先でして…」

バスの時刻表も確認してなかったし、一時間は掛かる旨を伝えた。

『何で そんな遠くに居るんですか!!』

いや、何でと言われましても(汗)

『次に予約が取れるのは一ヶ月先です』

ええーッ!!?

そんなに待たなきゃいけないの!?
そんなに痛いの我慢しなきゃいけないの!?

もう痛いし、頭が回らない。

結局ね、打開策も何も考えられなくて、一ヶ月後に予約を取った。
季節はちょうど桜の花咲く今時期、学校が春休みに入って混雑してたのかもしれない。

一ヶ月、耐えたよ。一ヶ月。

やっとこ予約日が来て、回らぬ頭で 我が家から歯医者への経路を検索した。

…遠くない?

遠かったんだよね(遠い目)

だけど、予約してしまった手前、断るのも なんだかなあ。

先にも話したが、バスの連絡悪く、私はシルバーカー押し押し、徒歩を選択した。

──まだ、着かない。

うん、地図で見るより、うんと遠かったんだよね(遠い目)
いや、私が歩くのが人の三倍 遅い所為なんだけども。

つ…着いたぁ~(大汗)!

季節は春の終わり、近年の夏は早い。

半袖のカットソーワンピ一枚だったんだけど、着いた頃には汗だっくだく。

いえね、肉襦袢というサーモスーツを着込んでいた頃だから、暑くて暑くって。

こ、これは、ダイエットになるかも…

名付けて、歯医者ダイエットの始まり である。

遠かったけど、腕の良い歯医者さんだったもんで、あんなに深い虫歯を、抜かずに削って新しく銀歯を被せる事になったんだ。

腕の良い歯医者さんは無闇に歯を抜かないらしいよ。

治療中は麻酔が効いているから痛みは無く、削って削って、セメントの仮歯を被せてもらい、初日の治療は終了した。

た、タバコ吸いたい~…

家で歯を磨く前に一本吸ったきり。
三時間近く経過したらば、ヤニ切れ起こしソワソワしちゃうが、中毒者。
暗い畑が続く通りをポテポテ歩くが、途中コンビニまではまだ距離が在る。

病院周辺は当たり前だが、禁煙ゾーン。
流石に、ねえ。
気が引けるよ。

どこか、どこか停車出来るところ~(熱望)

いい感じにシルバーカー 1台分の、道から少し入り込んだ畑の空き地を見付けた。

やった~✨

早速 停車させ、シルバーカーに腰掛け 携帯灰皿を出した。
因みに、歯医者から歩き出して10分も経ってない。

途中こんな感じで休憩を挟み コンビニに立ち寄りつつ、復路は時間が 2倍 掛かっちゃうんだな。
何で こんなにタバコ話をするか と言うと、善い歯医者の見極めにも通じると考えている。

私が出会った歯医者の中には、過去 二医者だけ「タバコは止めろ」と 言ってくれた方が居る。

歯科に一方、口腔外科に一方。

持病の主治医にも言われんのに、歯医者さんは口を酸っぱく再三注意してくれるんだ。
タバコは百害あって一利なし。
お財布にも優しく無いしね。

結論から言っちゃえば、頭では分かっている。
分かっては、いるんだが…止められるかは別問題。

意思が極弱で、スンマセン(汗)

口中に関して言えばタバコは、歯にヤニ汚れが着くだけではなく、歯茎の炎症等を誘発し口腔状態をも悪くする。
だから「タバコを止めろ」と言う歯医者は、ひたむきに口の中と向き合っている職人、善き歯医者だと 言えるんだ。

仮歯から銀歯に替わり、奥から二番目のエグい虫歯は終了して、歯医者さんが尋ねてきた。

「歯の着色が多いけど、色の着く食べ物とか食べてる?」

「あ~っと…コーヒーとかタバコ…」

「タバコは止めなさい!」

しまった!怒鳴られた(慌)!

そして、歯医者さんは丸椅子に深く座り直り、診察台に腰掛ける私に向かい直して背筋を伸ばした。

「タバコはね、病気にしかならないんだよ!」

──あえッ!?

まさか主治医でなく、歯医者さんに内科的な病気の説教をされるとは、思わなんだ。

歯の話は一切無いまま、肺や脳や血液や 怖い病名をバンバン提示されては、怖い症状を わんさか ご教授 下すったっけ、30分程(遠い目)

うん。色々と、勉強になりました。
ありがとうございます(礼)
これだけ真摯に向き合って下さる赤の他人ってのも、なかなかおらんと思う。

止められなかったけど…

他の出来ちゃってた虫歯の治療も進んみ「時間掛かるよ」と言われた古い治療痕の修繕も お願いした、秋口。

定例の親友らと我が家でグダグダくつろいでいた折、親友が私の顔を覗き込んだ。

「あれ?○○ちゃん、痩せた?」

──えッ?

体型なんか気にしなくなって長く、自分では気付いて無かった。

「何か やったの?」

「何か、というか…歯医者通ってたくらい?」

心当たるのは、真夏に汗をダバダバ流しながら徒歩で往復した、歯医者への畑道。
親友らが帰った後、いぶかしんで荷物置き場になっていた体重計を、引っ張り出してみた。

──おおおお✨!!?

なんとね、MAX体重から10kg減ってた!
歯医者ダイエット、成功である。

効いたよ、歯医者ダイエット。私には。
いやまあ…単純に運動極不足だっただけ、なんやが(汗)

歯も綺麗になりゆき痩せたとなれば、歯医者に行くのも苦では無くなる、単純思考。

若干うずき出した親不知の相談せねば…なんて まあ、そのうち 二の次。

④に続く──

小学ひとコマ②

小一で0点をとって以来、とにかく“漢字”が苦手である。

以前『真面と真面目』な話で触れたが、五~六年生の頃、担任の先生が打ち出していたオリジナル教育があった。

それは…

『漢字50問テスト』

これ、毎日。

いや、毎日だったのは、私だけかもしれない。

通常授業の終わった放課後、毎週。

担任の手書き お手作りな漢字テストが配られる。
多くは二字熟語の、読み書きキッカリ50問。

私は この時間を「魔の漢字テスト」と呼んでいた。

何故なら…

100点とるまで、終わらないのだよ(遠い目)

一問でも間違いが在れば、再テスト。
翌週の漢字テストの時間に新旧の二枚。
もちろん「100点とるまで」なので、二枚が三枚に、三枚が四枚に…

増殖してっちゃうんだよね(遠い目)

毎日 放課後、漢字テストの日に向け、間違った漢字は書き取りを20文字だったかな。

これ、終わらんと帰れない。

私、新規の漢字テストって、50点もとれないんだよね。

読みは意外といけるんだ。
問題は、書き。

とにかく漢字が覚えられない。

とめ はね はらい、これも採点基準に入っている。

とにかく、文字の形が分からない。

加えて熟語。
ちゃんと学習進度に合わせた、国語の時間にやったばかりの熟語に漢字なんだから、覚えていられれば良いんだけど…

授業の時間は軽く記憶喪失状態。
これが、毎週。

読みは割とすんなり読めるから、書き のみ。
新旧 合わせて、100問分くらい暗記してないと、大変な目に遭う訳で。

もちろん、出来損ないは私だけでは無い。

仲良しお馬鹿男子達と、クラスに残って放課後自習。

それでもね、奴ら3週分は溜まらないんだ。
3枚分やってるの、私だけ。

漢字テスト自体は、全問解答済みの用紙を教壇に置けば、終了。帰って良し。

クラスメイト達が一人帰り二人帰り…最終的には毎度の4~5人残った辺りで、担任も職員室に引っ込んじゃう。

ヤバい、みんな帰っちゃう(汗)!!!

焦るよ。

いつも居残り一番最後に、職員室の担任に提出に行ってたものだ。
自宅の学習机下の深い引き出しに、不合格な漢字テストが溜まってたっけな。

現行は知らんが、私の時代の学校の机って、木製天板付きの鉄フレームに教科書入れる用の枠がぶら下がっていて。

小学校の頃は、プラスチック製のデッカいトレーを各ご家庭で準備して、枠が引き出しになるように使ってた。
漢字テストは、B4見開き藁半紙。
折らずに引き出しに収まるピッタリサイズ。

お分かりですね。

漢字は覚えられないのに、悪さというのは思い付いちゃうもので…

御明答。
誰に教わった訳でも無く、カンニングを始めたんだな、私。

真似しちゃダメですよ!

いやあ、だってさ、帰りたいんだもん(涙)
もちろん、最初っからでは無い。

3週分は、自力で頑張る。
4週分 溜まった所で、一番古い添削済み解答用紙を引き出しに仕込んでおくんだ。

担任が はけた辺りで、チョロっと引き出し開いては、盗み見て書き、を 繰り返し。

こんなんやってたから、漢字なんて覚えなくて良い物になってしまったよ。
あの頃に、漢字を“絵”として認識出来ていれば、少しは覚えられたかもしれない。
分からんけど。

大人になった今だから想う。

毎週あの物量の漢字テスト作って、クラス人数分添削して、再テストまで行って100点とらせて、凄くない?

折角の漢字を覚えるチャンスを無下にして、ごめんなさい先生(礼)!

遊び屋⑥ ※アホな話※

これ以上無い。
これ以上無い屈辱を受けた。

仕事から帰宅し、テレビを観ながら まったりしていた持ち家時代。

風呂上がりの元旦那が、首にタオルを引っ掛け素っ裸のまま、居間に入ってきた。

この辺は別に構わないんだ。私もやるし。
特に気にも止めずテレビを観続けた。

ペタペタ歩き、座卓前の座布団に座る私の背後で、元旦那が足を止めた。

突然、頭上に何か置かれた。

「ちょんまげ!」

──ハッ

なまこ でも頭上に乗ってる感に、天頂部からぶわーっと毛穴が開いた。

「テメェ!ちんこもぎ取るぞ!」

もんの凄い屈辱的。
頭にちんこ乗せられるの。

⑦に続く──

SOS発信②

とある売れないクリエイターと お付き合いしていた、都会時代。

この人の事は面倒臭いので置いといて。

──ピキーンッ★

ッ!!?

我が家で寝ずっぱり、独り遊んでいた私の後頭部に、衝撃が走った。

目の前に星が飛び交う。

ぐはっ!!!

そこから始まったのは、末恐ろしい頭痛の嵐。

や…ヤバいかも…

後頭部だし、くも膜下だとか なんだとか、頭のヤバい病気が脳裏を過ぎる。

とりあえず、枕に頭を横に乗せ、横臥して様子をみる事にした。
ていうか、目の前がグルングルン回っていて、立ち上がれそうにない。

金槌で殴られたかの様な激しい頭痛は、治まる気配を一向にみせない。
数時間、そのまま耐えた。

──き、気持ち悪い…

ガツンガツンする頭痛に、とうとう吐き気を もよおし、ふらふら壁を伝ってトイレで嘔吐した。

便器に ぐったり身を もたれかけたまま、思う。

吐き戻しちゃう頭痛は、ヤバくね?

どうにかベッドまで戻り、枕元に置いてあったスマホを手に持った。

ええと…

『1・1・0』

…違うな…

『1・1・9』

プルルッ『火災ですか?救急ですか?』

「あー…救急車、お願いいたします…」

そこからは、どんな受け答えしたか記憶に無い。

とりあえず『救急隊員を向かわせますので、玄関の鍵は開けられますか?』と聞かれたのは、覚えている。

出来るかな…

痛いのは頭だけで、もうろうとしているが、意識は有る。
いや、無かったら自分で救急車呼べないか。

「多分、出来ます…」

そう答え、一度通話を切った。

ええと…財布…

私は長財布を抱え、救急隊の到着を、床に座ったままベッドに頭を乗せて待つ。

♫ピンポ~ン

あ…来た来た…

当時の我が家はオートロック。
階下のインターホンに床を這って腕を伸ばし、解錠ボタンを押下した。

続けて玄関先での呼び鈴に、ヨロヨロ立ち上がり鍵を開けた。

「○○ちゃん!? ど、どうしたの!?」

──あれ?

立っていたのは救急隊員では無かった。

当時のパートナーである。

あー…今日 来る日だったか…

間の悪い事に、自分で救急車を呼んだ直後に、第三者がやって来たんだ。

──もう少し待てば、頭痛いの我慢して頑張って自分で電話応対しなくても、良かったな…

思ったよ(遠い目)

「大丈夫!? 夜間病院、行こうか!?」

いや お前、足無いじゃん…

「あー…救急車、呼んだから…」

正直、言おう。
頭痛の症状から 救急に電話した経緯まで全部、問いただされて答えにゃならんかったのは、猛烈な頭痛最中に骨が折れた。

「救急隊です!患者さんは どちらですか!?」

そんなやりとりしていたら、救急隊員さんが到着した。

「あ、私です~…」

隊員さんに小脇を支えてもらい、エレベーターに乗った。
開け放たれた救急車の入口。
自力でストレッチャーに乗り上がれば、もう起き上がれない。

「付き添っても良いですか?」

え?お前、来ちゃうの?猫に餌をやって欲しかったんだけど。

頭痛が始まって以来、猫に餌をやれてない。そろそろ お腹空かせてる頃合だのに。

思ったけど、指示出す気力無し。

結局、同乗したパートナー。

血中酸素を量るクリップを指に付け、救急隊員の問診に受け答える私は、目も開けられない。
言葉を放つ度に襲いかかる金槌頭痛に吐き気。

いや、さっき症状やら何やら話したじゃん。

事情は既に把握してるんだから、私の代わりに説明してよ。

思っていたのは、内緒だ。

終始無言で救急車の片隅に着座するだけの、パートナー…

アイツ ぜってぇ、救急車乗ってみたかっただけだよ。ぜってぇ。

私だって、救急車の内装ちゃんと見てみたいのに…

それどころじゃない。
ていうか、目が開けられない。

モヤッとしたものを抱きつつ、救急車の揺れに耐え、総合病院に着いた。
病院のストレッチャーに自力で移動し、ガラガラと廊下を進む。

救急隊員から引き続きを受けた夜間担当の医師に再度 問診を受け、CT撮影したり何やら。

記憶が曖昧な この間、パートナーは どこに居たのか知らない。

もうね、シンドイから早く病室で ゆっくりしたかった。

「特に問題無いですね」

──え?

CT画像には頭の病気的なものは写っていなかったそうだ。

「頭痛薬を処方するので、帰宅して良いですよ」

ええッ!?
様子見だとかの一泊入院、無いの!?

「夜間窓口で薬は出るので、受付して下さい」

え、ええー…(汗)

時刻は軽く日付が変わる頃。
終バスの時刻さえも分からぬ知らぬ病院。
頭は依然としてガンガンとして痛いままなんだが、帰宅を余儀なくされた。

「どうだった?」

「何か、帰って良いって…」

自力で立ち上がり、病院の廊下でパートナーと合流。夜間窓口へと向かう。
窓口で書類を書いたり、会計したり、全部自分でやり、薬の紙袋を頂いた。

ああもう、タクシー呼ぼ…

私 他にも色々薬飲んでたり持病があったりで「頻繁するようでしたら、主治医の先生に頭痛の相談を」て、言われた気がする。

えぇー…これ飲んじゃったら、また痛くなっても耐えねば いかんのだよな…

思ったけど、飲んだよ。既に耐え難い頭痛なんだから。

タクシーを降車する際に財布を開くは、私。
パートナーを杖代わりに、自分の足で帰宅した。

シングルベッドを半分こして眠れもしなかったんだが、翌朝にはケロッと頭痛は治まっていた。

そして、思う。

──コイツ、何の為に同行したんだろう。

と。

─おまけ─私の頭痛って。

半年後。

ガツーンッ★

うぎゃッ!!?

独り遊んでいた私を再び、後頭部が殴られたかの様な、あの頭痛が襲った。

や…ヤバい…!!!

枕に頭を埋め耐えるも、痛いわ気持ち悪いわ。
これは再び救急車コースか?

──ぐぬぅ!

前回ほぼほぼ徒労に終わったのも有り、私は頭痛が治まるまで耐え忍ぶ事を選択した。

数時間に及ぶ頭痛は一向に治まる気配をみせない。
時は既に深夜。

や、夜間病院に行くか?
いや、足が無い…

朝まで…朝まで待って、まだ痛かったら朝イチで病院に行こう…

という訳で、結局 治まらなくて 朝イチ、総合病院に行く最寄りのバスに乗ったんだな。

あったま、痛ってぇ(泣)!

バスの揺れにガツンガツン。
病院に着いた頃には満身創痍。

受付を済ませ、医師に呼ばれ症状を説明した。

「何か頭が痛くなったキッカケは、思い当たりますか?」

「……」

言えない。
いくら相手が医師だろうと、口が裂けても言えない。

当時まだ羞恥心なんかが残っていた私は、答えられなかった。

「ええと…ちょっと、いきんだら」

「トイレですか?」

「トイレ…じゃなくて、ベッドに うつ伏せてたんですけど…」

もの凄~く、不思議そうな顔をされた。

「ちょっと、どういう状態か分からないんですけど、うつ伏せて どういう風に、いきんだんですか?」

くぅっ…!

「ええと…まあ…いきんだんです」

「起き上がろうとしたんですか?」

それだ!

「そんなところです!」

違うけど。力み加減や体制的には近い筈…分からんけど。

私は うやむやと医師の話に便乗した。

今度はストレッチャーが無いので自力で広い病院内をヨロヨロと、レントゲン撮ったりCT撮ったり猛烈に頭が痛い中 歩き回って結構大変だ。

「異常は無いですね」

またかよ(泣)!

「多分、線維筋痛症的なものでしょう」

あ、そういう診断になるんだ。

「主治医の先生から貰った頭痛薬は、いつ飲みましたか?」

「痛くなってすぐ と、深夜と、病院来る前に…」

頭痛時用に頓服で出して貰った薬も飲んでて、治まらないんだ。

「様子を見ましょう。痛くなったらまた来て下さい」

──え。

なんと、ここまで来て、何の薬も出ずに診察が終了してしまった。

そんな、殺生な(号泣)!

内科の窓口でカルテの返却を待つ間、もうね、ぐったり雑巾の様に椅子と壁に もたれてた。

あー…ここからバス乗って歩いて…

帰りの道のりを思うだけでも気が重い。

しんどい中 待ち続け、14時。

あれ?呼ばれたかなぁ?

9時には病院に居て、12時前には診察が終わってて…

再び壁時計を確認するが、やはり時刻は14時過ぎ。
周りで待ちあっていた他の患者も ほぼ はけている。

受付嬢は引き継ぎをして交代している。

「あのう、すいませ~ん。○○ですけど、呼ばれましたか?」

「──えッ!?」

「あらやだ!『このカルテ、何かしら?』って、話してたところだったんですよ!」

危ねぇ!聞いて良かった!

何かの手違いか、私 存在自体を忘れられちゃってたんだよね(遠い目)
気配消えちゃうほど、風前の灯火だったのかな。

ともあれ、無事会計を済ませ、帰宅した。

そして、耐えること数時間後ケロッと頭痛は治まった。

骨折り損の くたびれ儲け、だったな。アレは、マジで。

その後 度々 同じ様な頭痛に襲われたんだが…

どうもね 私の場合は、始まってから15時間キッカリで治まるらしい。

──え?原因ですか?

アレしか無いじゃない。

度の過ぎた自慰行為は、大概にね。

③に続く──

あ、書き忘れました(汗)

皆様は、妙な意地出して我慢なんかせず、末恐ろしい頭痛に見舞われたら、救急か病院に相談して下さいね。

どんな怖い病気か、分かりませんから。
くれぐれも。

シンドイ目に遭おうと、病気でない事が分かっただけでも、安心は出来ますからね。

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