世界経済の現状と今後の見通し 2022年1月 -暴落相場で利益を出す方法はあるのか-

2022/1/26 現在株価の大幅な下落やロシアのウクライナ侵攻の可能性など国際情勢や経済の見通しが難しくなっている。そこで、今日の状況、現状に至った経緯、今後の見通しについてアメリカの経済指標をベースに解説する。これを読むことによって現代の政治、経済についての見識を深めビジネスや投資に活かしてほしい。
最後には、買うべきでない株と買うべき株、そしてその売り時について説明してある。

まず、現状の経済指標を軽く確認しておく。
インフレ率が7%、10年債利回りが1.77%、2年債利回りが1.03%となっている。
これを踏まえて、年初からの株価の急落と理由と今後の方針について説明する。

まず、株の下落は以下のステップで起きた。
1,コロナによる自粛
2,経済の再開に伴う物流の遅れなどの混乱
3,半導体に代表される物不足によるインフレ
4,インフレ対策としての経済引き締め(金利の引き上げ)
5,金利上昇による株価のバリュエーションの低下

つまり、現状の株安は根本的にはインフレに起因していることがわかる。それゆえに、株価の底打ちはインフレが収まるまで期待できない。

これが、おおよその現状に対する分析であるがこれを踏まえてどのような株やコモディティにどのような影響が出るか具体的に説明していこう。

1,ハイテク株  (かなり悪い)
これは、収益に対して株価がかなり割高になっている。金利の上昇は未来のお金の価値を引き下げるので、このような将来を期待されて高値のついていた株は当面下落が続くことがわかる。

2,バリュー株  (少し悪い)
利益に対して株価がそれほど大きくない(およそ10倍以下)株をバリュー株という。このような株は金利上昇に対して比較的強いが、今は相場が焼畑農業をしているので特別な理由がなければ入らない方が良い。特別な考えがないのなら、インフレが落ち着いてから行動を起こせばよいのである。

3,銀行株  (金融政策による)
金利上昇局面で利益を上げられる株といえば銀行株である。銀行は金利が上がると利鞘を取りやすくなるからだ。しかし、現状はそれほど簡単ではない。まず、銀行の基本的な収益構造は金利の低い短期金利で預けてもらってそれを金利の高い長期で貸し出すことで、その利鞘で稼いでいる。そのため、長期金利と短期金利の差が銀行の有益に直結する。いま、中央銀行はインフレを抑え込むために金利を上昇させようとしている。中央銀行が金利を上げる方法としては二つある。FFレートの引き上げと、バランスシートの縮小である。FFレートとは、中央銀行が市中の銀行に貸し出す時の金利で、短期の金利である。一方、バランスシートの縮小とは、中央銀行の持っている国債の量を減らすことである。中央銀行の国債が市中に出回ると国債の価格が下がりその利回りが上がる。このように二つの手段があるか、FFレートの引き上げの方が金利のコントロールがたやすく行われやすい。銀行の株を保有するのであれば、FOMC(アメリカの中央銀行であるFRBの方針を決めるところ)の動向を注視して、どのような方法でどれほどのペースで金利を引き上げていくのかを注視する必要がある。とにかく、銀行株はイールドカーブが急傾斜であること(長期金利が短期金利より高いこと)が最も大切であるので、フラット化する兆しが出てきたら、そこが売りのタイミングとなる。

4,金、金鉱株  (良い)
金はインフレ局面では上がる傾向がある。それは、貨幣価値の下落を恐れて価値の保存のために金が買われるのだ。仮想通貨も価値の保存を目的として変われることがあるが、現状仮想通貨が暴落していることは金には追い風となるだろう。また、金の価格が上がると金を産出している会社も大きく利益がでる。オペレーティングレバレッジと言って、生産コストが一定である状況で金価格が上がり売り上げだけが伸びると、営業利益が飛躍的に伸びることがある。このような理由からインフレ下の金鉱株の保有は良い戦略と言える。注意点としては、中央銀行の利上げにより、金は金利を産まないため価格が下がるリスクがある。とはいえ、インフレ率が金利を大幅に超えている現状は金の価格は上昇することと考えて良いだろう。売り時としてはインフレが収まる兆しが出てきたらキャッシュポジションに戻して、株を買う準備をしよう。

5,原油株 (やや良い)
景気回復局面では原油価格は上がる傾向がある。しかし、これは現在、イールドカーブのフラット化などが懸念され景気の後退も懸念されているため、単純にはよいと言えない。しかし、現在の特殊要因としてロシアのクリミア侵攻の可能性によって原油価格が上昇している。そこで、短期的には原油価格の上昇とそれに伴う産油会社の株価の上昇が見込まれる。問題となるのは売りのタイミングであり、ロシアのクリミア侵攻が行われない公算が高まった時など、早逃げが重要となる。

このように現在の相場はとても難しく、おそらくインデックスをアウトパフォームするにはノーポジションがいいのではないかと考えられるほどだ。このような中で利益を出したいのであれば、それなりの特殊性を活かした戦略が必要となる。

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