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『日本が先進国から脱落する日』   全文公開 第1章の4

日本が先進国から脱落する日 』 “円安という麻薬"が日本を貧しくした‼ (プレジデント社)が3月1日に刊行されました。
これは、第1章の4全文公開です。

4 日本は「アメリカ並み」から
  「韓国並み」になった

一人あたりGDPでもアメリカの6割
 一人あたりGDPは賃金とほぼ同じ動向を示す指標であり、国際比較データを入手しやすい。これについての時間的な推移を見ると、図表1 ― 1に示すとおりだ。

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 2020年における一人あたりGDPは、日本は4万146ドルであり、アメリカの6万3415ドルの63・3%だ。
 昔からそうだったわけではない。2000年においては、市場為替レートで換算した一人あたり名目GDPは、アメリカが3万6317ドル、日本が3万9172ドルであり、日本が8%ほど高かった。
 ところが、その後の成長に大きな差があった。2000年から2020年の間に、自国通貨建て一人あたり名目GDPは、日本では422万円から428万円へと1・4%しか増えなかったのに対して、アメリカでは3万6317ドルから6万3415ドルへと74・6%も増えたのである。
 このために、2020年には、日本はアメリカの63・3%にまで落ち込んだのだ。

韓国にもいずれ抜かれるだろう 
 一人あたりGDPでは、図表1 ― 1に見るように、2020年で日本が4万146ドル、韓国が3万1496ドルなので、まだ日本が高い。しかし、両者は接近している。
 アベノミクス以前の時期には、日本の一人あたりGDPはアメリカとあまり差がなかったが、いまや大きな差がある。その一方で、アベノミクス以前には韓国との差は大きかったが、いまやあまり大きな差がない。
 つまり、アベノミクスの期間に、日本は「アメリか並み」から「韓国並み」になったことになる。
 しかも、日本の値が停滞しているのに対して韓国の値は成長している。このため、一人あたりGDPで、日本はいずれ韓国に抜かれる可能性が高い。事実、本章の2で見たように、賃金ではすでに韓国のほうが高いのだ。また、本章の1で見たビッグマック価格でも、韓国のほうが高い。

20年後の一人あたりGDPで、韓国は日本の2倍になる?
 問題は成長率だ。2000年から2020年の間に、日本の一人あたり名目GDPは1・02倍にしかならなかったが、韓国の値は2・56倍になった。日本が停滞している一方で、韓国が急速に伸びている。
 その結果、2000年には日本の31・3%でしかなかった韓国の一人あたりGDPは、2020年には78%になっている(図1 ― 1参照)。
 これまでの傾向が将来も続くとすれば、数年後に韓国が日本を追い越すのはほぼ確実だ。そして、その後さらに格差が広がっていくだろう。
 仮にこれまでの成長率が将来も続くとすれば、20年後には、日本の一人あたり名目GDPが4万1143ドルなのに対して韓国は8万894ドルと、ほぼ倍になる可能性すらある。

日本人が聞きたくないニュース
 韓国の最低賃金が日本より高くなったことが、しばらく前に話題になった。最低賃金は政策で決められるものなので、「韓国では高すぎる値に設定されているのが問題だ」との意見もあった。
 しかし、最近では、右に見たように、賃金そのものが日本より高くなっている。これは、経済の実力を表すものだ。いま韓国は、さまざまな指標で日本を抜きつつある。
 韓国の人口は日本の4割程度だから、GDPで見れば、日本のほうがずっと大きい。このため、変化はあまり目につかない。しかし、重要なのは、GDP全体よりは、豊かさなど、一人あたりの数字だ。これで韓国が日本を抜いていくのは、重大な「事件」と言わざるをえない。
 ところが、このことは、日本ではほとんど報道されていない。日本人にとって聞きたくないニュースだからだろう。しかし、聞きたくないニュースや不都合なニュースに耳を塞いでしまってはいけない。そうしたニュースほど、真剣に向き合う必要がある。

中国の一人あたりGDPも日本に近づく
 一人あたりGDPで日本との差を縮めつつあるのは、韓国だけではない。
中国の一人あたりGDPは、2000年には日本の3%でしかなかった。しかし、2020年には、すでに日本の27%になっている。IMF(国際通貨基金)の予測によると、2022年には日本の3分の1程度になる。
 日本はアジアで最初に工業化した国であり、1980年代には世界経済における地位が著しく向上した。その状況がいまでも続いていると考えている人が、日本には多い。
 しかし、現実の世界は、すでに大きく変わってしまっているのだ。

高齢化する日本で人材を確保できるか?
 日本の購買力が低下するということは、日本に所得源があって外国で使うと、昔のように高い価値のものを買えなくなるということだ。逆に、外国に所得源があって日本で使えば、いままでより価値が高いものを買えることになる。
 1980年代、90年代には、日本で所得を得て外国で使えば、贅沢な消費ができた。それが、いまでは、できなくなってしまった。
 日本では、人口高齢化に伴って、労働力不足が今後さらに深刻化する。多くの日本人は、日本が認めさえすれば、海外から労働力を日本に呼ぶことができると考えている。しかし、日本円の購買力が低下し続ければ、日本に来て職を得るのは、魅力的なことではなくなる。だから、外国人労働力に期待することはできなくなっていく。例えば、介護人材を外国人労働力に求めるのは難しくなる。
 逆に、日本人が海外で仕事をすれば、日本に戻ってから豊かな生活をすることができる。だから労働力が流出する。日本人が、外国で介護を行なうような時代になるのだ。
 こうしたことは、現在ではまだ顕著な形では現れていない。しかし、いまの状況が続けば、早晩、深刻な問題として立ち現れてくるだろう。

 




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