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貧乏サラリーマンが見た世界138

自分が長く関与して来た仕事に関連する国際的な業界団体がある。単なる親睦団体で国際的なカルテルといったものではないが、大事なのは長年の親睦を通じて繋がるネットワークで皆がお互いを知っているという事なのだ。そのビジネスは伸び続けているし、今後も伸びていくだろう。だからこそ定年後の自分が海外で働くチャンスがあったわけなのだ。民間の株式会社は利益を上げ、株主に配当することが絶対的な正義であり、現在はESGに配慮しつつ成長を続けなければ、いずれ市場から退場せざるを得なくなる運命にある。日本企業がグローバル経済下で、その経済的な地位を年々下げ続けているのは、お金が株式市場に流れず、個人の貯金になっているだけだからという側面が大きいのだろう。本来なら、とっくに日経平均株価が4万円を越えて然るべきだと思う。この世の価値を計る物差しは数字しかなく、経済においては、それをお金と呼んでいるに過ぎない。企業が成長の為、事業計画を実行するにあたり、銀行から融資を受ければ、会社の銀行口座の数字が増えるだけなのだ。事業計画という数字があるに過ぎないのに銀行はお金を企業の口座に数字を打ち込む形で融資を実行している。個人の住宅ローン場合、現物の住宅そのものが担保になるし、自営業者の場合は、定期預金が担保となったりするので数字が現実の価値に紐付いているように見えるところに銀行の信用創造機能の理解が進まない背景があるようだ。また国全体の経済成長を計る場合も、勿論数字=GDPがベースになっている。即ち、GDP=Y=C+I+X-Mとして表すことが出来る。現下の日本の経済成長の為には、デフレでC(消費)が伸びず、経済成長もしない中、P(民間)がI(投資)をしないとなるとI=P+GのうちG(国)が財政=投資という形で数字を経済に注入しない限り、経済成長はしない。日本政府は財政出動には後ろ向きな一方で金融緩和政策を継続し、物価を押し上げるといった政策をとっているが、効果なくデフレが続いている。金融緩和というか超低金利は資産家の不動産や債券等への投資を後押ししているに過ぎないように見える。日本の現在の状況はデフレ=需要不足なので本来であれば、老朽化した社会インフラ資産の入れ替え需要や、高度化需要を創出するなどして需要を作り出す財政政策が必要なはずだが、未だに財政再建ありきで国民の金融資産2千兆円を税金として回収し、国債を償還する事で数字としての残高を消し、経済成長を止める、即ち従来の成長を是とする資本主義からの脱却を目指しているようである。預金は使われなければ単なる数字であり、何の価値にも変換されない。その数字を税金により消し縮小均衡を目指すのが、キッシー総理の言われる新たな資本主義なのか、ゼロサムで個人の持つ金融資産(資産課税)により、分配を図るということなのであろうか。或いは幸平さん著『人新世の資本論』に沿った政策を展開するということなのだろうか。彼の話を聞いていると加速する資本主義に対するアンチテーゼのように聞こえるのだが、様々な商品が生み出され、取引される市場におけるグローバルな競争こそ、自分にとってはゲームとしても最高にスリリングで外国人との経済戦争はスポーツと同様に面白いのだ。そして勝ち負けも数字としてはっきりと表れる。諸々の市場で多様な価値が日々決まっているが、その真の価値を決める物差しなどなく、その時々の市場参加者の需給が数字という形で価値を決めているに過ぎず、そこには政治的思惑やら投機やらも混在するので、価値が常に変動するのだ。需給を操作出来れば大勝ちもあるのである。勿論、市場には規制やルールもあり、一見公平性が担保されているように見える。ただ実際は公平ではない。何でそうなるのかわからないので陰謀論が生まれる素地にもなっているのだろう。市場では意味などない単なる数字を参加者が価値として受け入れているだけなのである。また市場は将来的な期待価値を数字として反映するのでテスラの時価総額がトヨタの時価総額を抜くなんて事が起こるのである。ここに起業家の醍醐味がある。日本企業は現物に目が行き過ぎているので、米国のように時価総額を取りに行くという経営がもっとあれば経済も活気づくと思う。グローバルなモノの移動に目を向ければ、サプライチェーンが国を越えて複雑に絡み合っている現在のグローバル経済においては、それをコントロールする術はないし、そんな機関もない。勿論、米国は資源エネルギー取引に必要なドルを持っているので、その力は強大なのだが、一方でドルをひたすら金融市場に供給し続けなければ、現在のグローバル金融取引の仕組みを継続していく事は出来ない。それにSWIFTという世界各国の金融機関の背番号を米国がコントロールしているのでひとたび米国から制裁を受ければ、米国以外の国は鎖国に追い込まれてしまうという金融システムになっている。米国の経済的な力の源泉がここにある。これに対して明確に挑戦しているのが、中国のCIPSである。CIPSは人民元の国際間取引を行うための銀行システムである。日本も当然に参加している。経済的には中国経済とデカップリングなんて米国企業含め出来ない。メディアで保守を自称する言論人は経済の現場にいないので常にお気楽な世迷言ばかり述べているのだ。そして、この数年浮上して来たきな臭い流れが、脱炭素で、温室効果ガスにはマイナスの価値が数字として押しつけられる感じだ。それを計る基準も検討されており、二酸化炭素にマイナスの価値が付くので、例えば二酸化炭素排出の大きい国の製品はグローバル市場でのペナルティーを支払う事になるだろう。実際、EUは国境炭素税を2023年から導入する予定だ。脱炭素とエネルギーの電化の真の狙いは小型モジュール炉による原発の復権にあると思うが、日本は福島原発事故による国民の感情からして炭素税が席巻する世界では再生エネルギーしか選択肢がなく、ただでさえ高い現在のエネルギー料金がさらに上がり、輸出産業が成り立たなくなり、人口減少もあり、国としては衰退のスピードを早める事になるだろう。自分の幼少期、昭和30年代の生活水準に戻り、農業主体の環境重視の観光立国化する手はあるかもしれないが、現実的な話では全くない。自分はあの頃の生活に戻っても一向に構わない、幸平さんに同調する皆さんもご同様なのではないか、そうでないと彼の言うことはおかしいと思う。民間企業としては、株主は別に日本人ばかりではないので、自分が担当しているような海外事業をベースに海外で使える人間を今はやりのD&Iで日本人に限らず調達、配置し、そういった人材を高給で絶えず雇い続けることで、海外事業に従事させ、その事業の上がりで更なる新規事業を展開しつつ株主配当を維持し、成長し続けていくんだろうなと考えている。上述の式で言えばX(対外収入)− M(対外支出)の部分に当たる。この部分が黒字の間は、一部の企業群は安泰だろう。因みに、この式と意味するところは社会人向け短期ハーバードビジネススクールの講義でデービットモス先生から教えを受けたものだ。短期コースで自分はMBAではないが、彼らと同じ言語で話す事は出来る。いずれにせよ、会社の小株主である自分としては次世代に繋ぐリリーフ役として63歳の爺いではあるが、ここイスタンブールで仕事を楽しみながら働いているのだ。


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