山雅kabegami

松本山雅シーズンプレビュー


いよいよ松本山雅の2020シーズンが始まる。

クラブ史上2度目のJ2降格となり、長かった反町監督が辞任。さらには、クラブを支えてきた飯田や高崎といったベテランも数多くチームを去った。

クラブは、千葉県の強豪市立船橋高校で指揮を執った布啓一郎監督を招聘し、若手の育成と新たな山雅スタイルの構築を託した。

今シーズンの注目すべきポイントを個人的に3つの観点から書いていきたい。


ピッチ上の変化


反町監督の標榜したサッカーは、J2初年度~一度目のJ1昇格、J2降格から退任する昨季までの2段階に分けられる。

第1フェーズでは、クラブの予算規模やアマチュアからプロになり切れていない選手層を鑑みて、技術ではなく”走り負けない”というサッカーの根幹にある部分を前面に押し出したスタイルを構築した。これこそが、”山雅スタイル”として長く語られることになり、かつ第2フェーズにおいて苦しめられるようになった原因の1つだろう。J2において、絶対的な武器を持つことの重要性は語るまでもないが、湘南に代表されるようなスタイルで山雅もJ2を駆け上がった。しかし、J1では個々の選手の質の差や、自分たちでボール保持ができないことにより守勢に回る展開が多く、打ちのめされてしまった。

そこで第2フェーズでは、よりボール保持に重きを置いてカウンターとセットプレーに依存しないチームを目指した。しかし結果だけを見れば成功とは言えなかっただろう。使える武器は増えたが、熟練度がどれも中途半端であるために、相手に致命的なダメージを与えるレベルまでは磨ききれなかった。個人的には長期政権を引いたことにより反町監督が引き出しを増やすためのインプットの時間が足りず、最後は付け焼刃の解決策になっていた気がしてならない。(もちろん、J2残留が目標だったクラブを8年足らずで2度のJ1昇格へ導き、クラブ予算規模も初年度からは想像できないほどに成長性させてくれた反町監督には感謝してし切れないと思っている)


布新監督に求められるのは、過去から脱した、新たなスタイルの構築だ。

長らく問題となってた自分たちでボールを保持して相手の守備陣を崩すという点については、ルヴァン杯の開幕戦でも片りんが見られた。

(手前味噌で大変恐縮だが、参考までにこちらをどうぞ)

ただ自陣に引きこもってひたすらに相手の攻撃を耐える以外の選択肢を持ち、リアクションではなく自分たちのアクションで相手を崩すスタイルの構築が求められている。決して簡単なミッションではないが、期待したい。


クラブとしての方針


クラブとして現実を直視し、今何を最優先で取り組むべきなのかを見つめなおす一年になるだろう。

JリーグがDAZNと超大型契約を結び、理念配分金という形で優勝したクラブに対して3年総額15億円という賞金が払われることは既にご存知の方も多いだろう。これによって想定されるのが、ビッククラブの誕生だ。スペインのレアルマドリーやバルセロナのように圧倒的な資金力とブランド力で、リーグ内で頭一つ抜け出した存在が生まれるはずだ。(おそらくアジアで勝つためにJリーグもそれを望んでいるはず)

すると語弊を恐れずに言えば”刈る側”と”刈られる側”という構図が生まれてくる。今オフで言えば、客観的に見るとマリノスや大分、鹿島、柏が刈る側だった反面、徳島や山口、京都は刈られる側になってしまった。

そして山雅も例外ではない。町田や守田はJ1へ個人昇格(残留?)していったし、今後も結果を残す若手については夏の段階で引き抜かれていくことも覚悟しなければいけない。

現状刈られる側になっているという意識を我々はどれだけ持てているだろうか。2度のJ1昇格という実績から、J2の中では少し抜けていると思われているがとんでもない。Jリーグ全体でみれば、都市部ではない松本市をホームタウンとし、クラブ規模もそれほど大きくない現状からすれば刈られる側となるのは明白だ。

何が言いたいかというと、刈られる側には刈られる側の立ち振る舞いがあるということだ。現に、山口や徳島、大分は魅力的なサッカーを展開し、プレーすることで若手が成長できる環境を整えた。すると、有望な若手がこぞって集まり、もちろん巣立った選手もいるが、確実に強くなってきた。大分は成功事例だが、昇格のチャンスを逃さずに駆け上がり、一気に刈る側へ立場を変えた。

クラブとして現実を直視し、今何を最優先で取り組むべきなのかを見つめなおす一年になるだろう。焦って1年でJ1へ舞い戻ることが最も大切なのか?正直自分としては、疑問に思っている。プレーオフで岡山に劇的な敗戦をした後に書いたブログでも言っているが、山雅は一度休憩をするべきだと考えている。クラブを取り巻くステークホルダーの熱や期待にほだされて走り続けてきたが、今一度立ち止まってJ1で定着するためには今後10年間で何をしなければいけないのかを練るべきだ。今のままで昇格しても通用しないことは、皆昨年痛いほど味わったはず。

今後数十年繁栄するクラブであるために、今考えよう。


サポーターとしての姿勢


世界的に見ても長期政権を終えた後の監督というのはやりづらいものだ。前任者の信者のようなサポーターから、常に比較の目で見られ、品定めをされているような気分になるのだろう。少しでも前任者より結果が悪ければ、あら捜しをされて、批判の嵐に合う。そんな監督を何人も見てきた。

しかし、冷静になって考えてほしい。布監督には、山雅で積み上げてきたものはない。反町監督に染まり切った選手たちを抱えながら、新しいやり方でいきなり結果を出せと言うのは少々酷だと思う。(自分が転職してきた立場に置き換えてもらえばわかると思うが、、、)

そして何より、クラブが布監督を招聘し、若手を育てると言っているのだ。これには多少の年月を要することは想像に難くない。

サポーターに求められることは何か?”忍耐力”だろう。シーズン序盤は、改善点を挙げればキリがないような状態が続くと思われる。そんな中でも、良い部分にも目を向けて、見守ることが今求められている。例えば今シーズンを終えて、序盤と何も変わっていない様ならその時は相応の批判をするべきとは思うけれども、まずはじっくり様子を見ようじゃないか、と。若手の成長も同じだ。苦手としていた逆足のキック精度が上がっている、守備をサボらなくなった、こぼれ球への意識が向上しているなど細かな部分でもいい。

批判だけでは人は育たない。

必ず成長している部分も見つけながら、一緒に変革期の山雅を見守っていきましょう。


あとがき


今回の内容は、自分自身に戒めのように語り掛けながら文字に起こしたものです。

結果が出ない時読み返そうかなと思っています。

変わろうとしている時は、必ずしもうまくいくことばかりではありません。それでも、今季の山雅をしっかりと見届けたいと思います。

どうぞ皆さま、一年間よろしくお願いいたします。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?