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#078 やさしいポートフォリオ分析(4) - 「重要度」の求め方

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今回は、ポートフォリオ分析に関する特集の4回目。

前回、ダミーのアンケートを使って、その商品・サービスの各要素の満足度を集計してみました。
今回は、それら要素それぞれが顧客にとってどれだけ重要だと考えられているかを集計し、次の製品・サービス開発を行う際、どこを重点的に改善していったら良いかの参考にしてみたいと思います。

前回同様、集計に使用したデータは以下の URL で公開しています。
Google Spread Sheet 形式です。ぜひ参考にしてください。

Microsoft Excel 形式でダウンロードすることもできます。
ご自由に改変して再利用頂いて結構です。

ポートフォリオ分析サンプル
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1jDBg7vOCImY2PHBHDr7iCYeKOY6BNfFXzcFRAjxdS_k/edit?usp=sharing

「重要度」とは

今回取り扱う「重要度」とは、その製品・サービスの「総合評価」に対して、音質や機能などの各要素がどれだけ強く影響しているかを数値で表現したものになります。
例えば今回のワイヤレスイヤホンの場合、多機能であることよりも音質の良さを重要視する顧客が多い場合、機能よりも音質の重要度のほうが高くなる、ということになります。

「重要度」の求め方

この「重要度」、アンケートで得られた総合評価と、各要素との「相関」を計算することで得られます。
「相関」とは、2つの項目がどれだけ密接に関係しているかを示した数値のことです。

「相関」を調べるには、「相関係数」という指標を使います。
以下、シンプルな例を用いて、具体的に見ていきましょう。

「相関係数」について

以下の図は、最も極端な例を用いて相関係数を計算してみた表になります。
(上記で紹介した Google Spread Sheet に、「相関係数」というシートを作っておきました。)

総関係数1

Google Spread Sheet や Excel で相関係数を計算する場合は、CORREL 関数を使用します。

相関関係その1: 正の相関

では、この相関係数が表現している関係について詳しく見ていきましょう。

今回のような、顧客アンケートを使ったポートフォリオ分析で最もよく見られるのが「正の相関」です。
「正の相関」とは、2つの要素について、片方が増えるともう片方もそれにつれて増えるような関係のことです。

総関係数2

上記の例では、「価格」と「総合評価」の結果が完全に一致しています。
価格に1点という低評価をつけた人は総合評価も1点、価格に10点をつけた人は総合評価も10点です。
この場合、価格と総合評価との間には強い結びつきがあると考えて良いと思います。

このように、2つの要素が最高に強い正の相関を持つ場合、相関係数は「1」になります。
ポートフォリオ分析では、この相関係数を「重要度」として取り扱います。

相関関係その2: 負の相関

次の例は、2つの要素が全く逆の関係を持っている場合です。
このアンケートでは、なぜか、音質に高い点数をつけた人は総合評価の点数が低く、音質に低い点数をつけた人は総合評価の点数が高くなっています。
(まあ、実際にはこんなことはないでしょうが)

総関係数3

このように、2つの要素が全く逆の関係を持っていることを「負の相関を持つ」と言います。
今回のように、完全に逆の関係を持っている場合、相関係数は「-1」になります。

相関関係その3: 無相関

最後は、2つの要素が全く関係をもっていない場合。
この例では、デザインの点数と総合評価の間には、まったく関係が見られません。

総関係数4

このような関係を「無相関」と呼びます。
完全な無相関の場合、CORREL 関数はゼロ除算のエラー(#DIV/0!)を返します。
このような例も、実際のアンケートではまず発生しないと思います。

ポートフォリオ分析では正の相関(0から1の間)であることが普通

以上、相関関係の3つのパターンについて見てきましたが、実際のポートフォリオ分析では、重要度は正の相関になることが普通です。

重要度分析

今回の例では、だいたい0.4〜0.8くらいの数値になっているようです。
これらの結果から見ると、価格(重要度0.78)や音質(重要度0.75)に対する評価が、特にその製品全体の総合評価に大きな影響を与えていることがわかるかと思います。

特に、価格に対しては満足度が 3.7 と低い状況です。次のモデルでは何とかコストダウンして価格を下げる努力をする必要がありそうです。

まとめ。

(1) 「重要度」とは、その製品・サービスの「総合評価」に対して、その製品・サービスの各要素がどれだけ強く影響しているかを数値で表現したものになります。

(2) 重要度を数値で表すために、「相関係数」という指標を使います。「相関係数」は CORREL 関数を使うことで計算できます。

(3) 普通のポートフォリオ分析では、相関係数は、正の相関を持った 0〜1 の間の数値になります。この数値の大きい要素が、顧客にとって製品・サービス全体の評価に大きな影響を与える要素であると判断することができます。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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