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#086 まさか自分が50代になる日が来るとは思わなかった

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こんにちは。中小企業診断士の多田と申します。

本日2020年10月12日、めでたく50歳の誕生日を迎えることができました。

まさか自分が50代になる日が来るとは、ちょっと前まで想像もできませんでした。
30歳超えてからの人生の速度は尋常じゃないくらい速いです。
やりたいことは早いタイミングでやっておいた方がいいです。

残念ながら世の中の風当たりは強い

さて、この50代、世の中的には「働かないおじさん」として非常に風当たりが強いようです。

終身雇用崩壊でシニア社員の賃金が狙われる構造的理由:日経ビジネス電子版
https://business.nikkei.com/atcl/forum/19/00030/012100002/?P=1

当事者としては否定したいところですが、確かに納得できる部分もあります。
それは、個人個人の能力ややる気の問題と言うより、現在の日本の多くの会社が抱えている
・年功序列の賃金カーブが時代に合わなくなってきている
・マネージメントのポストが足りずモチベーションが保ちにくい

といった組織の仕組みに起因するところが大きいように思います。

ラジアー理論とは

ラジアー理論

上の図は、上記の日経ビジネスの記事から引用させて頂きました。
アメリカの経済学者、エドワード・ラジアーという方が提唱したことから、「ラジアーカーブ」と呼ばれています。

このラジアーカーブ、横軸が「年齢」、縦軸が「賃金」となっており、2つのグラフは賃金カーブと生産性を表しています。
若い頃は生産性よりも賃金が低く抑えられていますが、年齢が上がるにつれて賃金カーブは上がり、あるタイミングで賃金が生産性を上回るようになります。
一度賃金が生産性を上回った状態になると、その社員が会社を辞めて転職すると、一般的にその生産性に見合った賃金しかもらえないため、会社を辞めるのが難しくなります。
(この状態を、「ホステージ(囚われの状況)」と呼ぶそうです。)

いつまでもこうした状況を放置していては、若い優秀な社員を獲得するのが難しくなるなどの不都合が生じてしまいます。生産性と賃金のギャップを埋めていくような施策が必要です。
日本企業でも徐々に終身雇用からジョブ型による雇用形態への移行が進み始めていますが、とはいえ、こうしたサラリーマンの既得権益を無くすのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

ポストが無い中での成果主義の限界

加えて、収益のトップラインが大きくならない、成長していない会社では、会社の規模も大きくならないため、組織のポストの数も増えません。
ある程度年齢が上の社員の場合、その評価は、個人のアウトプットだけでは不十分で、いかに組織をマネジメントしてその組織のアウトプットを最大化したかが問われます。
しかし、そもそも組織をマネジメントするポストに就かないことには、評価の土俵にすら上がれません。
結果、ポストに空きが無い状況では、いくら努力しても現状より高い評価がされることも無いので、どうしてもモチベーションがあがらなくなってしまいます。

会社の評価によらないモチベーションの保ち方

しかし、この状況、当事者になってみると悪いところばかりではないように思います。

変化の無い安定したポジションで仕事できる状況になると、評価を上げるために忖度する必要がなくなるので、上司を喜ばせるだけの本質的では無い仕事はさっさと終わらせて、本当に役に立つ仕事に自然とフォーカスするようになります。
ここで、本当に役に立つ仕事、とは、
・お客さんの為になることであったり、
・若い社員の為になることであったり、
・組織を継続的に成長させていくことであったり
します。

こうした、ややもすると誰の手からもこぼれ落ちる、中長期的に必要な仕事を上手に拾っていくのも、この世代に求められている役割のように感じています。
仕事の目的を、会社からの評価からちょっとずらしてみることで、別のモチベーションの保ち方が出てくるように思います。

経営コンサルタントの視点で50代を考える

社員のモチベーションを上げる方法は様々です。
中小企業診断士の試験科目の1つ「運営管理」では、以下のような理論を学びます。

・マズローの要求段階説
          高次の欲求を満たすためにはまず低次の要求を満たさないといけない。
・アージリスの未成熟=成熟理論
          個人の人格は成熟に向かおうとする。職務拡大の重要性。
・マグレガーのX理論・Y理論
          Y理論の人間観は自己実現の欲求を必要としている。MBOの根拠。
・ハーズバーグの動機づけ=衛生理論
          衛生要因を排除した上で、動機づけ要因を改善することで高次の欲求を満たす。職務充実の重要性。
・ブルームの期待理論
          努力が報酬に結びつく道筋を明確にし、期待を連鎖させる。

これら以外にも、モチベーションの向上に関しては様々な研究・理論がありますが、概ね共通しているのは、単純に報酬を与えるだけではなかなか人は動かない、と言うところでしょうか。

特に、日本企業のシニア社員に対しては、上で述べたとおり効果的な成果主義の枠組を用意することが難しく、何か特別な考え方が必要そうです。

The Purpose-Driven Career (目的に導かれたキャリア)

ここで取り上げてみたいのが、「The Purpose-Driven Career (目的に導かれたキャリア)」という考え方です。
企業が与えてくれる目的やミッションを受け身で待っているだけではなく、自分がどんな仕事をして何を達成したいのかを、ある一企業の社員という立場よりも、もっと広い視野で考えていきます。
(詳細は以下の参考文献を参照して下さい。)

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・自分は何をすることが好きか?
・自分は何に対して情熱を感じるか?
・自分は仕事の何に意味と目的を見出すか?
・自分は何が得意か?

これらの質問に自分で答えを出すことで、これからの自分の時間を何に使っていくかが決まってきます。
そして、この答えですが、以下のように、年齢とともに右上にシフトしていくように感じています。

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報酬よりも、自分の好きなこと、社会に必要とされていること、に徐々にシフトしていくのが、自然な姿のように思えます。

自分の強みの棚卸しをする

上記の図で重要になってくるのが、左の「得意なこと」。
しかし、年をとっても変わらない、自分の得意なことをきちんと自覚するのは、なかなか難しいようです。
特に、1つの会社でずっと仕事をしていると、会社の外に出た時に自分は本当は何が得意なのか分からなくなってしまうことが多い。

そんなときにやっておくべきなのが、「自分の強みの棚卸しを行う」こと。
以下のような内容をシートに書き出し、これまでの自分の人生を客観的に振り返ることで、自分は一体何の専門家なのかを改めて考えてみることができるそうです。
(具体的なやり方は、以下の参考文献などを参考にして下さい)

・仕事(過去の仕事を含む)
          - 業種、職種、顧客、人脈、資格、スキル
・仕事以外
          - 趣味、関心があること、挑戦したいこと
・その他(人間関係など)
          - 家業、人脈、地縁、その他人から感謝された経験など

50歳はこうした振り返りを行うのにちょうど良いタイミング

50歳は「知命(ちめい)」と言われます。
論語の「五十にして天命(天に与えられた使命)を知る」から来ているそうです。

会社の中で与えられた役割からちょっと離れて、自分自身の強みの棚卸しを行い、報酬に縛られない「使命」が何か、今一度考えるタイミングなのではないか、などと感じています。

参考文献

・ロッシェル・カップ
          「日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?」
          https://amzn.to/36SYwSg
・藤井孝一
          「大人の週末起業」
          https://amzn.to/30X5SQT

まとめ。

(1) 本日2020年10月12日に50歳の誕生日を迎えました。つい最近まで、自分が50代になることなんてまったくイメージできませんでした。時間のたつのは本当に早いです。

(2) 日本企業において、50代のシニア社員の評判はあまり芳しくないようです。この年代の社員のモチベーションを如何に上げるかという点に関しては、どの企業も苦労していることが多いように感じています。

(3) 今現在所属している会社から与えられたミッションだけで自分のキャリアを考えるのではなく、「The Purpose-Driven Career (目的に導かれたキャリア)」のフレームワークにあてはめて、これから自分が本当にやりたいことを棚卸しすることが、自分のモチベーションを高めることにつながると思います。

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(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

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