本日は更新なし

 毎週金曜の夜に短編小説を投稿すると決めていた古地行生は、2月11日の投稿を諦めなければならなかった。彼は二日前の夕方からずっと寝込んでいる。疲労のたまりすぎか運動不足か、ぎっくり腰に襲われてしまったのだ。もう書くどころか立つことも座ることもできない。腕を動かすだけで腰に息ができない程の激痛が走るのでじっとしているしかない。


 今回の彼のぎっくり腰は痛みの強烈な急性期が長引いている。何故か。


「ミャオウ、オウオウオウ」


「ゆ、ゆるしてくれ……」


 閉じた襖の向こうから聞こえてくる猫の鳴き声、ガリガリと爪でこする音。やがて、


 ガタタッ、ガタガタッ!


「ひいっ」


 襖が少しずつしかし確実に開いていく。一緒に暮らしている猫が部屋に入ってこようとしているのだ。愛らしいものだ。ぎっくり腰でなければ。この猫は誰に教わるでもなく、別の部屋にいる家人に会いたい一心でいつの間にか襖・スライド式ドアを開けることができるようになっていた。賢く可愛いキジトラ娘だ。


 襖がきしむ音がやんだ。それはつまり猫が通れるだけの隙間ができたのを意味している。


「やめてくれっ。頼む!」


「ニャ~♪」


 懇願は受け入れられなかった。彼がくるまっている掛け布団の上めがけ、いつもと同じように跳躍する獣の体重、約5kg。

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