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「ラブ・アクチュアリー」とVHS

映画「ラブ・アクチュアリー」を見るのは久しぶり。
入り組んだ群像劇だから主人公が誰か決めづらいけれど、当時のプロモーションではヒュー・グラントが推されていたように記憶しています。
監督が「ノッティング・ヒルの恋人」の脚本家ということもあったかも。

キーラ・ナイトレイ(輝きがすごい!)の結婚式を録画したものが、VHSのビデオテープだったことに驚きました。ビデオテープ?
そういえばマーティン・フリーマンが青年って感じで若いし、コリン・ファースには中年の魅力と悲哀が備わっておらず、でもリーアム・ニーソンはあまり変わってないように見えて、そんなに前の映画だったかな・・・と。

調べてみると2003年。
当時のぼくは単館上映されるような映画ばかり見ていたから、この映画がそんなに気に入らなかったことや、エンディングで流れる「God Only Knows」の記憶が薄いのも当然。
まだブライアン・ウィルソンの伝記的映画はつくられておらず、「シングルマン」も現代版「シャーロック・ホームズ」のドラマもなかったから。

2003年ならVHSなのも納得。
そこでWikipediaで、VHSが普及してからデジタルに淘汰されていく歴史について調べてみました。水平解像度が240本しかなく当時のテレビ放送の330本以下で、ラミレス(もちろん選手だった!)のホームラン判定にも使えなかったとか、画質の悪さがデジタル化を推進した要因だったとのこと。
さらにβ(ベータ)とのシェア争いにおいて、パナソニックを取り込んで連合軍となったことや、画質よりも長時間録画を重視し、開発には苦労したものの製造プロセスが簡略化できる構造を採用したことが勝因だったとあります。
ぼくはβを愛用していて、でもしょっちゅうテープが絡んだり、ヘッドの摩耗による画質劣化に悩まされ、ついにはビクターのVHSデッキを買ったのを思い出しました。
その頃の友だちが、月1万円24回ローンで高級ビデオデッキを買ったら、7ヶ月払ったところでそのデッキが8万円に値下げされて売られていて、「これから払うお金のほうが高いなんて・・・」と嘆いてました。急激にコストダウンが進んでいた時期で、そのスピードと広がりこそがVHS最大の勝因なのかも。
でもソニーはVHSで欠かせない特許を持っていたらしく、VHSが普及していくことで得られたライセンス収入は少なくなかったとか。
このWikipediaの記述は、歴史小説を読んでいるみたいな面白さがありました。アディダスVSプーマの兄弟による争いのドキュメンタリー以来。

映画のなかでリーアム・ニーソンは作家の役で、原稿をタイプライターで書いています。これは2003年としても懐古主義というか、もうその時代の作家ならパソコンを使っていても不思議ないはず。
村上春樹さんは「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」のころは手書きで、だから家を空けると火事や盗難が怖くて仕方なく、のちにワープロ、さらにはマックへと変わったことで、長くて複雑な構造の物語が楽になったとインタビューで語っています。「スプートニクの恋人」(1999年)でも、フロッピーディスクが大切な役割を果たしていました。

2003年だと携帯電話はどのスタイルだったろう?
iPhoneの登場が2007年で、ということはまだ二つ折りが人気だった頃? さすがにアンテナを伸ばして使うタイプはなくなっていただろうけれど、着メロは自分で入力しなきゃいけなかったのでは? 
でもiモードのサービスは始まっていたはず。
ラブコメディにメールが出てくると、急にいろんなことが複雑になり、すれ違いの妙は損なわれるため、排されたのかも。

映画にカメラが出てくるといいな。
それだったらどのカメラが選ばれるだろう?
・・・と楽しみにしていたけれど、出てこなかったです。
ちなみにこの年のカメラグランプリはキヤノンEOS-1Dが受賞。デジタルカメラとしては二機種目とありました。

この映画は、当時はVHSでリリースされたのだろうけれど、じきにDVD化され、いまそれをAmazon Primeで見ているのは不思議な感じがします。
17年のあいだに、力を失ったものもあれば、むしろ魅力的に見えるものもあります。ジョニ・ミッチェルとビーチボーイズの曲は時代を超えて心に響きました。

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