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『Asgard's Wrath』から考えるモダンなVRゲームに必要なポイント

今月10日に発売した大作VRゲーム『Asgard's Wrath』を早速プレイ。神様となって冒険するのが新鮮な一方、先日参加し記事にした「Oculus Connect 6 報告会」における有識者の方々の「大作タイトルは長年作っていたから仕方なく出すだけ」といったネガティブな発言を改めて思い出すものでもありました。

今回は『Asgard's Wrath』の感想を通して、2019年に発売されるVRゲームに必要なポイントを考えてみたいと思います。


大作タイトル『Asgard's Wrath』

『Asgard's Wrath』はPC用VRデバイスOculus Rift/Oculus Rift S向けに発売された、北欧神話世界を舞台にしたVRアクションアドベンチャーゲーム。販売元はOculus直々ということもあり9月の「Oculus connect 6」でも大々的にとりあげられ、中でもそのプレイ時間は30時間程度、ゲーム容量は120GBバイト以上と、VRゲームとしては破格のボリュームが注目されていました。


テンション上がるお膳立てと神様プレイ

2時間も要するダウンロード&インストールにプレイ前から大作の風格を見せつけられ、いざプレイ開始。オープニングステージでは巨大な神として荒れ狂う海で巨大タコとバトル。続いて雪原に放り出され目の前に佇むドアを開けるとファンタジー映画/ゲームによくある荒くれどもの酒場! ここまでで既にテンションマックス。いやがうえにも期待が高まります。(同じくテンション上がった方がこのパートの写真をツイートしているので参考までに転載)

そしてこの酒場を出てからが本番スタート。プレイヤーは神様として、ある島に流れ着いた女性主人公に憑依しながら冒険に繰り出します。右手で剣をふるい、左手の盾で防御、というプレイスタイルはVRゲームとしてはオーソドックスなものですが、身体を動かしてモンスターと戦うのはそれだけで楽しいもの。

特徴的なのは主人公から離脱して神様視点になれること。神様視点モードではミニチュアサイズになった島を俯瞰しながら、オブジェクトの配置を変更して障害を排除するちょっとしたパズルや、島に住む動物をつまみ上げて神エネルギーを注入することで主人公の仲間にすることができます。

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最初の仲間はなぜかサメ。顔超こわいですが一緒に冒険していくうちに愛着が湧いてきます。こういうセンスに触れられるのが洋ゲーの良いところ。


テンション下がる単調さとVR酔い

そんな神様プレイがアクセントにはなっているのですが、指示に従いながら歩き回って、パズルを解いて、剣をふるって敵を倒して、という繰り返しで進むゲームスタイルは極めて単調です。

そして襲い掛かるVR酔い。VRゲームでは一般的に左スティックを傾けた方向に移動する移動方式(酔いレベル:高)か、指定した場所に一瞬で移動するテレポート方式(酔いレベル:低)が採用されていますが、本作が採用したのは左スティック移動。細かいアクションに向いているとはいえ三半規管への負荷が大きいため長時間プレイには向いていません。実際、2時間も続けていると軽く酔ってしまいました。

単調さはまだ序盤しか触れていないからかもしれませんが、このまま30時間もあると思うと、飽きずに酔いに耐えながらクリアすることができるのか、不安なところです。


現代のVRゲームに求められているポイントとは

『Asgard's Wrath』のような1人用の長時間VRゲームは否定すべきとは思いませんし、本来好きなジャンルなのでVRゲーム黎明期の2015年~2016年であれば大いに歓迎したでしょう。あるいはVR酔いが将来解消すれば、再び脚光を浴びるはずです。ですが『BEAT SABER』が大ヒットしている現在、肌感としてはトレンドから乖離している気がしてなりません。そこで2018年のSteam VR 上位売り上げタイトル12作を見てみました。

・『JOB SIMULATOR』(短時間で遊べる)(動画映え)
・『BEAT SABER』(短時間で遊べる)(動画映え)
・『Fallout 4』(ヒット作のVR版)
・『Hot Dogs, Horseshoes & Hand Grenades』(短時間で遊べる)(マルチプレイ)
・『SUPERHOT VR』(短時間で遊べる)(動画映え)
・『Orbus VR Reborn』(マルチプレイ)
・『ARIZONA SUNSHINE』(短時間で遊べる)(マルチプレイ)
・『ONWARD』(短時間で遊べる)(マルチプレイ)
・『VRカノジョ』(短時間で遊べる)(セクシー)(動画映え)
・『SKYRIM VR』(ヒット作のVR版)
・『PAVLOV VR Shooter』(短時間で遊べる)(マルチプレイ)
・『GORN』(短時間で遊べる)

これらを見る限り「短時間で遊べる」「動画映え」「マルチプレイ」「ヒット作のVR版」「セクシー」に大別できます。そして『Asgard's Wrath』はトレンドを真っ向から全否定しています。なんとすべてのトレンド要素を含んでいません。「Oculus Connect 6 報告会」でのgumi会長 國光氏の発言「大作タイトルは長年作っていたから仕方なく出」したというのを裏付けるかのようです。

もちろんトレンドが全てとは思いませんし、そんな風潮をねじ伏せるタイトルが次の大ヒット作になるというのがゲーム業界の歴史でした。ですから本作もあるいはそんな力を持ったタイトルかも、という希望をもって購入したのですが……。

とはいえオープニングの大海原と雪原の酒場というパンチのあるビジュアルに感じた高揚感は本物でした。ですのでこれから発売が予定されている『STORMLAND』、『Medal of Honor: Above and Beyond』という大作2本も懲りずに期待してみたいと思います。


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