芸人の確定申告

以前、会計事務所で働いていた記憶を掘り起こしつつ、浪曲師になってからの確定申告について備忘録的に書いておきます。

※ここに書いてあることは、必ずしも全員に当てはまるとは限りませんので申告前に必ず専門家にご相談ください、もし間違ってるところがあればそっと教えてください。


ざっくり言うと所得税は、儲かってる人はたくさん税金納めてね、全然儲かってない人は納めなくていいよという仕組みになっているため、人によって違う税額を自分で計算して申告するか、税理士に代わりに申告してもらうことになります。

私のような貧乏芸人は基本的に納める必要はありません。でも場合によっては確定申告をしなかったら必要のない税金を納めることになったり、知識として知ってるかどうかだけでも随分違います。

世の中には、義務教育で教えてくれなかったのに知らないと損することが多くあるなぁと思います。社会に出てからそういう情報を自分の力でキャッチして生かすための基本が義務教育ということなのでしょうか。

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まず芸人(フリーランス・個人事業主)で確定申告をする必要があるのは

1年間(●年1月1日~同年12月31日まで)でそれぞれ足して計算した

売上-経費=儲け(所得)

この所得からさらに、所得控除(基礎控除、払った健康保険、払った年金など)を引いた額がプラスになる人です。(ちなみにこれは芸人としての仕事しかしていない場合で、他でアルバイト等の仕事をしてる場合ももちろん収入として併せて申告する必要があります。)

例えば、1年間で50万の売上から経費20万円を引いて、30万の利益が出ても、そこから基礎控除額(令和1年の場合は38万円)を引いたらマイナスになるので確定申告をしなくてもよいわけです。

ですが、この場合でも法人から依頼されて出演するときには通常、出演料が「報酬」ということになり、出演料から税金が引かれた分をもらうことになります。これは「所得税の源泉徴収」といって自分が納めるべき税金を、仕事を依頼した法人(雇用する側)が本人(雇用された側)に代わって先に納めるというものです。

この例であればマイナスなので所得税は納める必要がないのですが、確定申告をして「売上がこれで、経費がこれ、差し引いた所得から控除額を引くとマイナスです」ということを申告すれば、先に納めた税金を返してもらうこと(還付)ができるわけです。

また、今回コロナウィルスの影響で仕事が減った個人事業主やフリーランスが持続化給付金を申請するには、基本的に収受印のある確定申告書が必要になります。

持続化給付金は売上をベースに計算できますので、もし所得がマイナスでも、去年は売上があって今年はコロナのせいで売上が減ったということなら確定申告をすれば申請できる可能性が高いです。

そしてここからが本題ですが、

申告時は白色申告青色申告の二種類があります。

基本的に儲けが少なく、赤字(売上より経費が多い)でもないという場合は白色申告という簡単な帳簿でOKの申告方法を選択した方が楽です。それを元に収支内訳書確定申告書を作ります。そして、翌年の3月15日までに税務署に提出します。(ちなみに青色申告にすると赤字分を3年間繰り越すことができます。)

この場合の簡単な帳簿を作るには

■ 売上は毎回仕事の日にちと金額と相手先を書きとめる

■ 経費はレシートやカードの明細をとっておく(日にち、金額、買った場所、品物を書く)

お小遣い帳のように、収入と支出を書き出して、残りはいくらというのを書けばいいのです。(経費に関しては、交通費なのか、文具など消耗品なのか、会場を借りた賃借料なのか等、分類する必要があります。)

そこでわかりやすいのが、仕事とプライベートのお金を完全に分けることです。

その一例ですが、まず仕事用の口座を新しく1つ作り、その口座のデビットカードを作ります。(デビットカードはクレジットカードと違ってその日にすぐ引き落とされ、また残高がないと引き落としできないという特徴があります。)

そして、売上は全部仕事用の口座に振り込まれるようにして、現金でもらった分も都度そのまま入金する、経費も基本デビットカードで決済するようにする、生活費は必要な分おろす、そうすると現状も把握しやすいし、経費の計上漏れ対策にもなります。

特に仕事で使うものをネットで注文したり、クレジットカードを使って支払っていたものを仕事用口座のデビットカードに代えるだけで、明細にプライベートの買い物と仕事用の物がごちゃごちゃ混ざらなくて便利です。


ちなみに、仕事用の口座を開設するにあたり「屋号+本名」の口座をつくることもできます、例えばお客様から振り込みをしてもらうときの受取人名を、本名でなく芸名(屋号)にできるということです。(基本は屋号+本名の登録になりますが、開設時に振込時の受取人名を略称で登録できる場合があります、その場合に略称を屋号のみで登録します。)

また、最近個人の口座はアプリなどを使って振り込みや振り替え、明細照会が簡単にできます。

私が確認したところ、UFJ銀行では屋号付き名義の口座では、通常のアプリ(個人名義の口座で使えるもの)は使えずブラウザでログインする必要があり、残高照会は無料でできるが明細は有料プランでしか見ることができないということでした。

三井住友銀行では、屋号付き名義の口座でも通常のアプリ(個人名義の口座で使えるもの)は使えるが、デビットカードは作れないとのことでした。

そういうわけで今回は同じアプリで簡単に振り替えできた方が個人的には便利だと思ったので、結局屋号付きにはせず、UFJ 銀行の個人名義の口座をもう一つ仕事用に作り、その口座のデビットカードも作ることにしました。(補足:同一名義の口座は複数作れない場合もあるようです。個人用と事業用に分けたいなどの理由を窓口で相談する必要があります。)

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初舞台は去年の1月なのですが、今年改めてきちんと開業届を出し青色申告申請書も併せて提出しました。

去年は始めたばかりで着物や草履など必要なものを揃えるのに経費も掛かりましたが、今年は買い足すものも少なく、コロナによる自粛期間中は家にこもっていたため寄席に手伝いにいくときの交通費(経費)もかかっていません。ですが持続化給付金をもらえるとしたらその分も課税対象になります。(一律給付の10万円は非課税)つまり収入はあるが経費がとても少ないということです。なので複式簿記での記帳をし、白色よりも控除額の多い青色申告に挑戦することにしました。残念ながら仕事が少なく仕訳も少ないのであんまり難しくないはずです。

この青色申告申請書ですが、本来はその年の3月15日までに提出しないと認められませんが、今(令和2年6月3日現在)はコロナウィルスの影響で申請期間が延長されています。確定申告期限も延長されているので、もしまだ令和1年分を提出していなければ今から作っても間に合うかもしれません。

また、節税のためにお金を使おうというのは儲かっている人や法人ならよくあることですが、私のような個人事業主は多少税金がかかっても経費を抑えて利益を少しでも多く出した方が良いだろうと考えています。

会計ソフトは基本有料なので、そこまでケチるべきかはもう少し悩もうと思います。

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