どうして急に有料小説を投稿したのか

これは、先日投稿した短編小説「新春」についてのお話ですが、本編を読んだ方も、読んでいない方もぜひ。





◆なぜ急に有料?

「新春」は2024年3月に公開しました。
僕にとって初めての有料の小説です。

その前の投稿は2023年11月。日常についての呟きでした。

「新春」の前に小説を投稿したのは2020年12月。3年以上前です。

なぜ「新春」は、2024年3月、急に、有料で投稿したのか、お話していきたいと思います。




◆5年後作家

僕がnoteに初めて投稿したのは今から5年前、2019年の3月でした。
新しい職場に就いて1年程経ち、仕事に慣れてきた頃。春が近付き、何か新しいことに挑戦したい気持ちが湧き上がっていました。
それ以前から登録していた小説投稿サイトでコンテストが開催されたため短編小説を書きました。それと同時期に、好きな有名人がnoteを始めたため、何となくnoteでもアカウントを作って短編小説を投稿しました。


その時に設定したアカウント名が、「幸野つみ[5年後作家]」でした。
5年後作家。
ちょっと「イタい」ですかね。


簡単に言えば、アカウント名の段階で自分をわかりやすく説明した方がいいなという考えがありました。
誰かの通知欄やコメント欄に自分の名前が表示された時に、ぱっとイメージできて、興味を持ってもらえて、興味を持った人にはプロフィールに飛んでもらえる。
そのための「肩書き」だった訳です。

ただ「作家」と書くのは違和感がありました。「作品を作っているならその時点で作家だ」と考える人もいるかもしれませんが、「商業出版を目指しています!」と言いながら「作家」を名乗るのもちょっと変かなと思いました。
「小説家志望」「文筆家見習い」……色々な表現があると思いますが、たぶん、文字数やオリジナリティ、インパクトなどを考えて[5年後作家]にしたんだと思います。


もちろん「ビッグになってやるぞ!」という決意表明でもありました。
1人で考えるだけではなく、誰かに伝えることでやるしかない状況を作り、自分にプレッシャーを掛ける。
言葉にすることで叶う。言霊を信じる。
そういう意味合いがありました。

そして目標は具体的にした方がいい、と考えていました。

すぐには文芸賞に送れるような文量は書けないだろう。果てしなくて挫折してしまうかもしれない。
だからまず最初の1年、まずは短編に挑戦する。短くていいから書き上げて提出することが大事。話をまとめる練習にもなる。また、取っつきやすい短編をポートフォリオに蓄えられたら、多くの人との出会いにも繋がるかもしれない。果てしない作業が苦にならないような仲間を見付けられるかもしれない。

次の年は連作短編に挑戦する。
そして更に次の1年を掛けて長編を書き上げる。
1度ではダメかもしれないが、5年後には出版社から作家デビューするぞ。
大雑把ながらもそんな計画を立てていました。




「5年後作家」を名乗った2019年。
色々と予想外なことはあったものの、いくつか短編小説を書き、たくさんの出会いがあり、目標を達成したと言ってもいいと思います。

ただ、2020年以降は私生活がバタバタとしてしまい……ほとんど創作活動はできなくなりました。
「5年後作家」という言葉は、noteを始めてから1年が経った2020年の春にアカウント名から削除しました。




◆考え方の変化

以前は「商業出版」が目標の中心にありました。
今もそれが大きな目標であることには変わりないのですが……2019年以降、徐々に「個人で作家を仕事にする」「作家を副業とする」「例えばインターネット上で作品を販売する」という方向に進むことを考えるようになりました。

明確な1つのきっかけがあった訳ではないです。
様々な出来事に影響を与えられて、考えがまとまっていきました。

noteを始めた当初は「出版への道」みたいな記事を書いたりしていて。
「自費出版にはいくら必要なのか?」といったことを調べてまとめていました。
その際に、Kindleで電子書籍として出版する、オンデマンド出版することなどを改めて具体的に知りました。

また、自分の人生についてよく考えました。
作家になりたいけれど、じゃあ今の仕事を辞めて創作活動に専念するのか、と。
ありがたいことに、結婚して、こどもが生まれて。この幸せを手放すなんて嫌だと思いました。家族に不安定な生活をさせたくはないと思いました。
たぶん自分の性格的にも、その基盤があってこそ安心して創作活動に打ち込めるんじゃないかと思いました。

自分の人生の持ち時間に実感が湧いてきたのも大きいかもしれません。
(現状では仕事と家事育児をこなすのに精一杯で、隙間時間ができても疲労とストレスでダラダラ過ごしてしまう日々を送っているので、「人生の持ち時間」を語るなんて偉そうなんですが……)
こどもが生まれて、妻が体調を崩して、自分の時間が大幅に減って。
本当にやりたいことって何だろうと考えるようになりました。
それまでは「死ぬまでにやりたいこと100」とか考えていたんです。半ば無理矢理に。47都道府県全部回る、とか。いや、今でも回りたいことは回りたいですけど。自分の人生の残りの持ち時間を考えると、もうやりたいこと100個もいらないな、と思うようになりました。
「もし時間ができたら何がしたい?」と考えた時、「小説を読む」でもなく「旅に出る」でもなく、「創作活動がしたい」と思いました。
これはもう本物だろうと。この状況になってもなお、癒やしを求めるでもなく作家になりたいと望むのなら、それは本物だろうと思いました。本物ならばその願望を大切にしなければ、と、そう思いました。
30歳を過ぎて、今更ですが、ようやく自分のやりたいことに自信を持てたのです。

身の回りの出来事も大きいでしょう。
妻は体を壊し、妻の母が亡くなり。自分の父親は60代ながら怪我をきっかけに足腰を悪くしたので、例えば旅行に行ったりすることが難しくなりました。
「老後に第2の人生を楽しめばいいか」なんて思っていましたが、やはりやりたいことがあるなら、そして挑戦できる状況ならば、早く行動に移すべきだと思いました。

自分の人生の残り時間だけでなく、自分の人生の残りの出費がより具体的になってきたことも大きいです。
夫婦で話し合い、2人目のこどもは望まないことを決めました。世知辛い話、こども1人育てるのに数千万円必要だと言われていますから、2人育てるか1人なのかでは大きく違います。
土地を買って家を建てて、生涯の「家賃」が見えてきました。
ざっくりとした試算しかできませんが、必要なお金がわかってきたことは重要でした。

身近な人のワークスタイルも参考になりました。
大学を卒業した時は大学の同期が「いっせーのーで」で就職して、自分もよくわからないけどそれに付いていかなくちゃ、という感じでした。
しかし、時間が経つにつれて、同期にも様々な働き方をする人がでてきました。
そして、自分の今の職場にも様々な生き方をしている人がいます。趣味を満喫している人、副業をしている人など。自由な雰囲気があります。

時代の変化もあるでしょう。
やりたいことを大切にする空気感が出てきて、様々な副業をすることが特殊なことではなくなってきて、インターネット上で副収入を得ることが珍しくなくなってきたように思います。

そして何より、noteでの出会いが僕に大きな影響を与えました。
noteには多種多様な人がいました。年齢が下の人も上の人もいて。十人十色の「こんな人生を送りたい」「こんな人生でした」という話が溢れていて。
テレビの中の知らない誰かの話ではなく、親しくしていた方々の中から、電子書籍で出版する方、お店を始める方、ライターの仕事を始めた方が出たりして。
自分もやってみたい、自分は自分の生き方をしようと思うようになりました。


自費出版してイベントで販売したり、電子書籍を販売したり、noteで有料記事を販売したり。
様々なことにチャレンジしている人がいるnoteにおいては、「何を今更」「簡単なんだから考える前に早くやればいいのに」という感じかもしれませんが、自分の中では大きな変化でした。




◆5年後作家の5年間

自分の中で具体的に方向性が固まってきたのは2022年の春頃。
新居のあれこれが少しずつ落ち着いてきたタイミングでした。

今の仕事を続けつつ、やや抑えて、その分、副業として作家業をしたいと考えました。
仕事を辞める訳ではなく、転職する訳でもなく、今の仕事を続ける。ただし、今までが例えば120%の仕事をしていたとしたら、それを100%まで抑える。
しかし、その分収入は減ることになります。
なので、創作活動は趣味として取り組むのではなく、きちんと副業として取り組む。

以前から妻には会話の中で自分がやりたいことを話してはいましたが、改めて説明したのは2022年の夏頃。

考える時間を置いて、妻から了承をもらい、次に、2022年の秋頃に職場に相談しました。
円満に進めていきたかったので十分に相談の期間を設け、また、十分に準備の時間を設け、2023年秋頃から働き方を変えることになりました。



2022年の春頃の段階ですでに「ぴったりだ」と思っていました。

仕事を抑えたあと半年くらい作家業の準備期間に当てるとしたら、2024年春頃から本格的に始められるんじゃないか。

それってまさに「5年後」じゃないか。

思い描いていたストーリーとは違うものの、noteで「5年後作家」を名乗ったその5年後に、作家になろうと思いました。



結局のところ。
2023年秋に働き方を変えてからも一筋縄ではいきませんでした。
家のことをして、こどものことをして、ペットのことをして、自分のことをして、クリスマスがあって、お正月があって、息子の誕生日があって、謎の発熱があって、母の古希をお祝いして、息子がコロナに感染して、続け様に溶連菌に感染して、春休みがあって……ほとんど作家業の準備はできないままに3月を迎えてしまいました。
本当はある程度ストックを作ったりするつもりだったんですが……。

それでも何とか、3月中に有料小説を投稿できてよかったです。




◆ちなみに……

今後有料小説しか出さないという訳ではありません。
今まで同様に無料の小説も投稿するつもりです。
無料のエッセイも書きたいし、有料のエッセイも書きたいし、日々のこと、趣味についてなども投稿していきたいと思います。
ただ、時間が限られているのでどんな配分になるかはわかりませんが……。


副業ということで、お金を稼がねばなりません。
本業があるとはいえ収入が減っていますからね。
有料記事やサポートがあったらとても嬉しいことは間違いありません。

でもですね、正直、お金をいただくことに申し訳ないなーって気持ちが今でもあります……。
今まで仲良くしていた方がこれで離れていったら嫌だなーって。
そんなこと言ってちゃ作家なんてやっていけないのかもしれませんが、でも、無理なくお付き合いいただけたらありがたいと思います。
「買ってくれなきゃ仲良くしない!」みたいなことはありませんからね(笑)
買いたいと思ったら買って下さい。
あとは、「申し訳ない」と感じないくらいの作品ができるように努力します。





長々書いてきましたが、そんな訳で。
5年前に掲げた「5年後作家」という夢を、形を変えてではありますが、叶えます。
短編小説「新春」は、自分にとって一種の「作家デビュー」となる節目の作品になります。

ぜひ読んで下さい!

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