【にじと葉っぱの世界】Vol.2「ANOUで遊ぶ」
風は強いけど、良く晴れている。
小牧市にある『美食の杜 ANOU』に向かう。
ANOUは、自然農法で野菜や果物などを育てている会員制のシェア農園。
畑の一部を貸してもらえたり、ANOUで収穫された作物をシェアし合える『ANOUEN CLUB』という仕組みもある。
母であるにじと葉っぱちゃんも、その会員のひとり。
「今日はここを掃除するんだ」
入口のすぐ近くにある、木製の白い小屋。
オーナーの伸治さんが建てたまま、使われてこなかった。
「今までさ、あんまりここに来れてなかったんだよね。月に1回も来てないくらいでさ」
「でも、この前伸治さんが、与えてもらったことは150%で返すと良いって話してて。すごく反省したんだよね」
「ANOUブレンドっていうハーブティー、せっかく作ってほしいって頼まれたのに、そこまでの気持ちになれてなかったかも。80%以上ANOUのものでって言われてたのに、全然使えてなかった」
「だからまずは、ANOUのハーブを手入れすることにしたんだよね。とにかくここに関わらせてもらおうって気持ちで。そしたら伸治さんが、そんなに頻繁に来るなら居場所があったほうがいいでしょうって、小屋を貸してくれることになったの」
話しながら、床を丁寧に水ぶきする。
ここはどういう場所にするの?
「ラボにする。ハーブラボ」
ハーブラボ?
「色んな植物を探求する場所。この植物はどういう効能があるのかなとか、どういう使い方があるのかなとか。本だけ見ててもわからないじゃん?」
「ANOUにはありがたいことに無農薬の植物がいっぱい。土にもきっと微生物がたくさんいるんだよね。だから、森羅万象というか、森の循環を学びながら、楽しく遊ぶって感じかな」
水ぶきのあとはワックスがけ。
3畳ほどの小さな小屋はあっという間に拭き終わる。
「よし、じゃあワックスが乾くまでちょっと遊ぼうか。」
「その辺の木でリースでも作ろう。なにか良い感じの枝、落ちてないかな」
少し探索してキウイのつるを見つけると、器用に楕円の形にして、ローズマリーやオリーブの葉を差し込む。
「もうさ、これだけで可愛くない?」
「ここにピーカンナッツの黒色が入ると映えるかな」
木を見上げると、黒色の葉っぱのようなものがついていて、中に実がなっている。
「中の実は食べられるよ。ほらほら、こういうの」
雫みたいな形の茶色い実を割って、ナッツを食べる。
獲りたてのナッツは苦みもなく美味しい。
近くにあったみかんも獲ってきてくれる。
いつの間にか豪華なおやつタイム。
自然の恵みに感謝しながらみかんの皮をむく。
「種はその辺に捨てて、土に返そう」
それじゃあ、と口から種を飛ばしてみる。
「あ、見てみて。あんなところまで行った(笑)」
汚いよって笑いながら、どっちが遠くまで飛ばせるかのゲームが始まる。
「食べ終わったみかんの皮は陳皮にするから取っておいてね」
陳皮?
「うん、みかんの皮を乾燥させたもののこと。漢方になるんだよ。血行が良くなったりとか」
「そろそろ小屋、乾いたかな」
外に出しておいた家具を中に入れて、配置を考える。
この小屋はみんなに見てもらう場所にするんだよね?
「うん、勝手に入っていいような場所にする。それでこの小屋が欲しいっていう人が現れてくれたら、すごくない?」
にじと葉っぱちゃんも、ANOUにある小屋を見て、自分の庭にアトリエとして小屋を建てることを決めた。
同じように小屋の購入を考えている人が、実際に使うイメージの湧くような空間にしたい。
小屋の中をどうしていくか、もう決めてるの?
「ううん、まだ。ちょっとずつここで取れたハーブを瓶に詰めていこうかなと思うけど。これから1つずつ、考えていこうかな」
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