偉大なる小説家一覧(4)

高橋たか子

夫高橋和巳の死後本格的に作家活動に入り、『空の果てまで』『誘惑者』などを発表。愛憎を超えた不可解な「心理の深層」を描き続けた。

主な受賞作品

『空の果てまで』__田村俊子賞

『ロンリー・ウーマン』__女流文学賞

『怒りの子』__読売文学賞

『きれいな人』で__毎日芸術賞

他の代表作

三原山での女子大学生の投身自殺を描いた『誘惑者』__泉鏡花文学賞受賞

2013年(平成25年)7月12日、茅ヶ崎市の老人ホームで心不全のため死去。喪主を務めた鈴木喜久男(翻訳家の鈴木晶)はたか子の40年来の弟子で、たか子の生前から高橋家の鎌倉の自邸(黒川紀章設計)に妻子と暮らし、和巳・たか子両名の著作権代理人を務めた。高橋夫妻の著作権はたか子の没後、日本近代文学館に遺贈された。

現代を駆使する偉大なる「最果タヒ」

スマートフォンで詩を書き、現代の感情を繊細かつ鋭く表現する。

最果タヒの壮大な宇宙までも感じさせるメッセージ

言葉は、常に運動をしている。何億人もの人がその言葉を用い、それでいて、それぞれが少しずつ違った意味や印象を、言葉の向こうに見出している。だからこそ言葉は、刻々と変化し、運動を続けている。
わたし一人が、言葉を一方的に、道具として用いることなどできず、常に、言葉が抱える無数の意味や価値の渦に巻き込まれていく。そのコントロールのできなさ、言葉に振り回される瞬間に、わたしは「言葉に書かされている」と感じます。それは時に、わたしよりも深く「わたし」を捉える言葉となる、わたしを飛び越えた、別の何かへと変貌する言葉となる、それこそが、わたしにとっての「書く喜び」です。言葉がわたしの代弁者として、世界へ出ることなどありません。わたしはいつも置き去りにされ、そこが痛快であるのです。
知らない自分に、言葉で会うこと。それは、自分の底さえ突き破り、その向こうの、自分ですらないものへと、繋がることだ。だからこそ言葉は、書かれ、他の誰かに読まれることをじっとじっと待っている。

詩の展示。
言葉が、わたしを飛び越える。
それは、「読む」瞬間もきっと同じです。読むことは、与えられた言葉を受動的に読むのではなく、その言葉を自分だけの言葉へと変容させていく行為だと思う。そのとき、言葉の変化は、読むその人の予想を、そしてその人自身を、時に追い越していくだろう。それは「書かれた言葉」のスピードであると、読み手は思うのかもしれない。けれど、あなたも加速している、あなたの言葉が、加速している。そのスピードを、肌で、気配で、空間として、感じられる場所を、私は「詩の展示」と呼んでいます。

われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。あなたしか立つことのできない確かな星から、どうか、言葉を見に来てください。



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