毒親からの解放ストーリー (24)

名 前を美貴子というその子の実家は、代々内科医院をしていて、お父さんはその家の三代目だった。やっと出来た子供が女の子だったので、父親はがっかりしていたが、小学校に上がると、成績は常にクラスで一番を維持しつつ、運動会では足が早くてリレーのアンカーとして活躍していた。

 そんな心身ともに優秀な娘を、四代目の医者にしようと両親は思った。高校もその地区で一番の進学校に合格し、親の期待を一身に受けていた。
その学校では美貴子の運動能力の評判を聞いて陸上部に勧誘をした。

 陸上部の顧問の先生も彼女の走りにとても期待していた。何しろ彼女の走りはとても美しかったのだ。
運動会のリレーでアンカーとして、カモシカのような細くて長い脚と力強い腕の振りで、前を走っている選手が彼女の存在に気付いた時には、あっという間に、追い抜いた。

 ところが陸上部の顧問は四十代の男の先生で、美貴子の走りが中距離走に向いていると思ったのか、それともその女生徒が自分の好みのタイプだったのか、それともその両方だったのか、彼女が入部すると、他の生徒の指導はそっちのけで、中距離走の指導を付きっきりで始めた。彼女のそばにはいつも顧問がべったりと並走していた。その甲斐あってか、八百メートル走でその年の県大会では大会新記録で優勝したのだった。学校始まって以来の快挙に高校側も、美貴子もその家族も喜んで、顧問の先生に対して大いなる信頼を寄せたものだった。

 さらに全国大会を目指して二人三脚で練習に熱を入れて二人で毎日のように練習をしていた。その他の学生達の指導は放り投げて美貴子だけを指導していた。全国大会の時には、当然顧問が学生たちを引率するし、泊りがけの試合もあった。そのうちに二人があまりにも親密に見えてきて、陸上部の生徒たちの間で、あの二人は単なる先生と生徒の関係だけではないのではと、噂になってしまった。

 その噂はどんどん大きくなって、顧問の先生の奥さんの耳にもそれが届いてしまった。
はじめのうちはそんな噂を無視していた奥さんだったが、三年生の夏休みに、二人きりで他県の試合に泊りがけで出かけていたのがばれてしまい、それまで静観していた顧問の奥さんが美貴子の家に怒鳴り込んでいった。

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