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〜だっせん〜14 父の絵日記を紐解く“少年の昭和史”③ -みまさかぞく#030


父の夏休み絵日記シリーズ第3弾。昭和33年、小学2年生のK少年(父)は夏休みを絶賛謳歌中!

1.7月30日(水)曜日 天気(はれ)


《原文》


夕方、かみのにんぎょうをもって、おみやへ行きました。いったら、かやで、まあるいわを、つくっていました。それを四ほん、とって、にいちゃんも四ほんとりました。かえりがけ、さかなので、ものすごくはしったので田んぼにおちそうになりました。

《解説コーナー》

神の人形(形代)を持って行った先は、鷺神社。現在のような石段になったのは、昭和35年。この絵日記の昭和33年頃は、滑りやすい坂道でした。(美作町史より)

この下には田んぼが広がる


さらに町史を調べると、鷺神社の主祭神は「大己貴命(おおなむちのみこと)・少彦名神(すくなびこなのかみ)で、この二神は出雲系のお湯の神様です。

鷺神社の本殿


平安時代、ここ鷺神社に白鷺が住み着き、怪我をした白鷺が湯郷の出湯で傷を治したという伝説から、湯郷温泉は別の名を鷺温泉と言います。この温泉を発見したのは、円仁法師。

円仁法師と白鷺


鷺神社の祭礼行事に、7月末の輪くぐり祭があります。

自身の穢れや厄を移した形代を、本殿へ納め、お焚き上げをしてもらいます。輪くぐりで使われる茅(かや)は古来から身についた厄を払う力があるとされてきました。

私は輪くぐりの茅を抜いたことはないけど、K少年たちは4本取ったようです。

↓以下の写真は、町史に載っていた別の地域の写真です。

茅でこれだけの輪を作るのは重労働



2.7月29日(火)曜日 天気(はれ)


《原文》

きょうは、こうじんさまでなつぎとうがあって、おとうちゃんらといきました。ぼくとにいちゃんもいきました。よっちゃんが「こもこも出てこい、こもこも出てこい」といったのでなんかとおもうと、ありじごくのことでした。


《解説コーナー》

今でも毎年、荒神様で行われている夏祈祷。現在は地区の人が集まって、祈祷をした後、みんなでうどんを食べます。うどんは健康祈願の食べ物とされています。

荒神様


私の暮らす地域は、丘陵地のため昔から水(灌漑用水の確保)に苦労しました。このことから、今でも雨の神様の慈雨を求めるこのお祭りは続いています。

「こもこも出てこいといったのでなんかとおもうと、ありじごくのことでした」を解説します。同じ段落に書かれているから、私は「これは祝詞の文言?」と思ったけど、そうではなく、遊んでいる時によっちゃんが言っていた言葉です。

「こもこも」を私は知りません。調べると、捉え方は地域によって違をうようで、よっちゃんは「蟻地獄」、私の母は「ダンゴムシみたいな土の中にいる虫」だと言っていました。

土の中にいる虫を「出てこい出てこい」と棒で突いてる情景が目に浮かびます。

余談ですが、これ↓なんだと思いますか?

荒神様の近くに立っているこの柱。実はこの上に最近まで釣鐘がありました。火事の時に鳴らすみたいだけど、私は鐘の音を聞いたことがありません。

3.昭和30年代の美作を回想する③


昭和30年代〜を生きた人へのインタビューをしました。「初めて食べて感動した食べ物は何ですか?」

昭和26年生まれ(父)…「粉末のオレンジジュース、給食で出た鯨の竜田揚げ

昭和28年生まれ(母)…「友だちの家で飲ませてもらったコーヒー牛乳、この世にこんな美味しいものがあったんじゃと感動したんじゃけん」

昭和30年生まれ(職場の先輩)…「お祭りで母親が買ってくれたバクダンキャンディもう美味しくて楽しみだった!」

昭和34年生まれ(同上)…「こんな美味しいお菓子初めて食べた!かっぱえびせんプラッシー

昭和36年生まれ(同上)…「給食で食べた冷凍みかんワシは家でも食べとうて作り方を聞いたんじゃけん。ゆきこさん作り方教えちゃろうか?」

昭和36年生まれ(同上)…「母親が作ってくれたコロッケうまかったわ。魚はザバばかり食べていたけどブリを食べた時は感動したなぁ」

みなさんにインタビューした時、驚いたのがみなさん悩むことなくスッと出てくるんです。そして、当時の情景とともに盛り上がりました。

父は「渡辺のジュースの素ですもういっぱい♫」と歌い、職場の先輩方は「母親のコロッケは美味いなーと感動したのを覚えとるわー」「そうそう、津山ではコロッケは10円でよく買って食べながら帰りょったわ」「お祭りの時のバクダンキャンディは楽しみで、兄弟みんなで並んでチューチュー吸いよったー」「またプラッシー飲みたいなぁ」…と話が止まらない!!

みなさんは、子どもの頃「美味しい!」と感動した食べ物はありますか?

ちなみに私は「遠足の日、友だちとお弁当の中身交換した時もらった冷凍ミニグラタン」。

これこれ!


今では、保存技術も発達し、季節も問わず、ネットでも簡単に、美味しいものが手に入って嬉しいけど、昭和の話をされるみなさんの表情はとっても素敵で「特別な日の食べ物」「気持ちのこもった食べ物」って良いなぁと感動しました。


読んでいただきありがとうございます♫

次回は、夏休みK少年のカワイイ失敗談もあります。

また次回、お会いしましょう。

参考文献
『津山美作真庭の昭和』樹林舎 2020
『津山美作今昔写真集』樹林舎 2013
『美作町史 写真編』美作町 平成15 
『美作町史 地区誌編』美作町 平成16

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