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〜だっせん〜ももたろうを追いかけたい ⑤ 桃太郎絵本読み比べ #051

みなさんこんにちは。
「岡山在住きびだんごと桃太郎に夢中」の藤小雪庵です。前回まではきびだんごについて調べてきました。

きびだんごの歴史【前編】
きびだんごの歴史【後編】

岡山のきびだんごと言えば「桃太郎」。今回は「桃太郎」のお話ついて考えてみたいと思います。

1.人気No.1「桃太郎」


桃太郎のお話をご存知の方は多いと思います。
バンダイ こどもアンケートvol.200「お子様に語り継ぎたい童話や昔話は何ですか?」の結果を見ても「桃太郎」は性別.年齢別共に1位。

2.みなさんが知ってる「桃太郎」は?


まず私の知っている「桃太郎」を簡単にお話してみます。みなさんの知っている「桃太郎」と同じですか?


「昔々、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に。おばあさんが川で洗濯をしていたら、どんぶらこと大きな桃が流れて来ました。家に帰って切ろうとすると、中から男の子が生まれ“桃太郎”と名付けられました。ある日、きびだんごを持って、犬猿雉をおともに鬼退治へ。降参した鬼から宝物をもらって幸せに暮らしましたとさ」


私はこれを信じて疑わなかったし、それ以上知ろうともしなかったのですが、「桃太郎の絵本はたくさんあるけど、話は全部同じ?」と疑問になりました。

3.「桃太郎」絵本を読み比べ

「桃太郎の読み比べしてみよう!」と思いつき、2つの図書館で借りられるだけ借りてみました。

(津山美作の子どもたちごめん!すぐ返すからね!)

私の読んだ「桃太郎」は15冊+数冊。現在「桃太郎」絵本は50冊以上あるそうです。

読んでみると、内容が全く違い、驚きの連続。6つの項目に分けて分析してみます。


①【桃が流れる音】

私の覚え…「どんぶらこ どんぶらこ」

ぷいこぷいこ
ドンブリ カッシリ スッパイポー
どんぶらこっこ ざんぶらこ
かんぷか つんぷか かんぷか つっこんこ
つんぶら つんぶら
どんぶり かっしり つっこんご
…etc。

※桃の流れる擬音語は本の数だけあります。本によって大きな桃ver.、小さな桃ver.がありますが、楽しい音やリズムになるように考えられているのだと思いました。


②【おばあさんは桃を??】

私の覚え…大きな桃を抱えて帰りました。


①大きな桃が流れてきて、抱えて持って帰る。
②小さな桃が流れてくるとおばあさんは食べてしまい、「じいさんにあげるからもう一つ流れてこい」と言う。
③おばあさんは桃に「苦い桃ならあっちへ行け、甘い桃ならこっちへ来い」と言う。

※いずれにしても、桃はおばあさんの方へ流れて来て、おばあさんはおじいさんのために持って帰るのでした。

③【桃太郎誕生の瞬間】

私の覚え…おじいさんが桃を切ろうとしたら元気な男の子が誕生。

(おじいさんがorおばあさんが)、(包丁でor刀でor斧で)桃を切ろうとしたら…

①勝手にパカっと割れて、元気な男の子が飛び出した。
②じゃくっと割れて、男の子が生まれた。
③振り上げるとゴソゴソ動いてポーン!
④おばあさんが桃を戸棚にしまっていたが戸が開かない。おじいさんが斧で叩き割ったら、戸棚の桃から男の子が生まれてた。

※桃太郎誕生の瞬間も色々。大きい桃からの誕生はダイナミック!戸棚ver.は戸棚を叩き割る激しいシーンの後、戸棚の中を見ると……小さな桃から、小さな男の子が、すでに生まれてた…という動静があります。


④【桃太郎の日常生活】

私の覚え…元気に育ってお手伝いする男の子

怠け者の桃太郎(この話が多い。三年寝太郎と似ている印象)。

①寝てばかり、叱られても言い訳ばかり。でも、ある日しぶしぶ山へ出かけ、大きな木を根こそぎ担いで、その木を川へ投げ捨てる。その大きな音を聞いた殿様に「鬼退治に行ってくれ」と頼まれる。
②一日中寝てばかりだが、ある日山へ行きカラスから「鬼が娘をさらって行った」と聞いて、鬼退治に行くことを決める。

元気で優しい桃太郎
③村で鬼が大暴れ。それを見て「オラ鬼退治に行く」と言う。
④村の娘や子どもがさらわれ、村人が悲しむ様子を見て鬼退治を決める。

※「鬼退治に行く」と言う桃太郎に「危険だから行かせられん」反対するおじいさんおばあさんver.、おじいさんが「行ってくれ」と頼むver.も。


⑤【犬猿雉にきびだんごを?】

私の覚え…「ひとつあげよう」

①「ついてくるなら、ひとつやろう」
②「ひとつじゃ足らん、ふたつあげよう」
③「ひとつはならん、半分やろうぞ」
④「ひとつ食えば美味いもの、ふたつ食えば舌が溶けるor苦いもの」

③の話が多い(私は知りませんでした!)

私は「半分だけ?桃太郎はケチ?」と思ってモヤモヤ…。実はこれには理由があるようです。

「五穀(米麦粟稗黍)の中で最小の黍は五穀の長(小さいが高栄養)なので黍の団子は呪力がある食べ物」と考えられており、「ひとつ食べると呪力が強すぎる」のだそうです。なるほど!これは④にも通じるのかな。


⑥【フィナーレ】

私の覚え…鬼の宝物を持って帰り、みんな幸せに暮らしましたとさ。

①宝物をどっさり持って家に帰った。
②米.塩.金銀.珊瑚.娘.子どもを乗せて帰り、1番のお気に入り娘を嫁にもらう。
③鬼「宝物を差し上げます」桃太郎「宝物はいらん娘を返せ」→連れて帰り嫁にもらう。
④鬼退治の後、鬼が泣き止まないので、桃太郎はきびだんごをあげる。鬼は宝物を返し村は平和になった。
⑤鬼は桃太郎の家来になり、やがて漁師になる。桃太郎は殿様になる。

※本の数だけフィナーレがあります。「桃太郎のように好き嫌い言わないで、どっさり食べて大きくならねばならん」と教育的要素のあるものも。

出逢う絵本で桃太郎のイメージ変わりますね。


4.衝撃を受けた「桃太郎」2冊

今回、私が読んだものは上記の絵本ですが、他にも、おもしろい2冊に出逢ったので紹介します。

『空からのぞいた桃太郎』
影山徹著 岩崎書店 2017

「鬼だから殺してもいい?あなたはどう思いますか?」

書店でこの帯を見た時、ハッとしました。絵本は私の知っている話ですが、付属に付いている冊子が重要!「桃太郎」にツッコミを入れまくっています。例えば…

①おじいさんおばあさんは何者か?
②犬猿雉は、桃太郎の鬼退治に賛同したわけではなく、報酬(安いきびだんご)で雇われた傭兵。戦争にかり出されるほど生活に困窮していたのか?
③桃太郎は怪我ひとつせず、鬼は土下座して謝るが怪我をしたり死んだ鬼はどうしたのか?
④桃太郎は宝物を持ち帰るが、それは許されるのか?
などなど…

「桃太郎を盗人」と言った福沢諭吉「鬼は桃太郎にどういう無礼をしたのか?」と言った芥川龍之介など桃太郎に言及している作家についても書かれています。

私の心にピリッと刺すものがありました。


『それからのおにがしま』
川崎洋著 岩崎書店 2004

ももたろうにやっつけられた鬼ヶ島の鬼たちの話から始まります。

「まず、島に傷を手当てする小屋がたてられたそうな」

それでそれで??とワクワクしながら読み進めました。ももたろうじいさんも登場。最後は切なくて切なくて…涙が止まらないお話です。


5.感想と次回のお話

桃太郎絵本の読み比べと分析をしてみました。正直な感想は「楽しさと複雑さが半分こ」。

明治時代。“鬼征伐した桃太郎”のきびだんごは、日清戦争の凱旋兵のお土産として大人気でした。

一方、現代では「正義」「戦争」を話し合う教材として「桃太郎」を扱うこともあるようです。

「桃太郎」は、時代によって、読者によって、また扱う視点によって、捉え方が変化するお話なのかもしれません。昔話は単純なことが良いと思っていたから複雑な気持ちになりました。

でも、これからも色んな作家さんが描かれる「桃太郎」を楽しみにもできますね。

とても勉強になりました。

次回は、日本全国に伝わる桃太郎、岡山県内の数ある桃太郎などを読み比べしたい…と計画していたのですが、変更して、リラックスタイム。

岡山県内にある“桃太郎像やイラストなど”を色々紹介したいと思います。(恥ずかしかったズッコケ話も)

気軽に見ていただけたら幸いです。

6.おまけのおやつ

おかやまロール 305円

岡山の素材が詰まったロールケーキです。

吉備団子、清水白桃、ジャージー乳、作州黒甘納豆。作州黒は美作の特産品でもあります。

岡山を味わえる一品です。
私も大好き♡



読んでくださりありがとうございます。また次回もよろしくお願いします。



【参考文献】
バンダイ こどもアンケートvol.200

『それからのおにがしま』川崎洋著 岩崎書店 2004
『空からのぞいた桃太郎』影山徹著 岩崎書店 2017

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